加計学園による獣医学部設立は適切か

安倍総理のお友達である加計氏が経営する岡山理科大学が50年ぶりに獣医学部を設立すると聞いた時に、その大学ってどんな大学?と思った人も多いだろう。加計氏は他にも複数の大学、専門学校を経営。それが加計学園だ。この加計学園が運営する大学の内容を見ると、獣医学部の設立を認めて大丈夫なのとの疑問が湧いてくる。

大学としては今回話題となっている岡山理科大学の他に、倉敷芸術科学大学と千葉理科大学を運営している。

まず倉敷芸術科学大学だが、芸術学部、生命科学部、危機管理学部からなり、学部の入学定員は440名。昨年は908名の受験者に対して739名が合格。競争率は1.2倍だ。

ところが実際に入学したのは375名。所謂、定員割れの状態だ。

偏差値も旺文社で35~37.5。偏差値だけで大学の評価が決まるわけではないが、優秀な学生を沢山集めるのに成功しているとは言えないだろう。

この点だけでも加計学園の大学運営力に疑問を抱かざるを得ない。


千葉科学大学は2004年に開設された薬学部、危機管理学部、看護学部からなり、学部の入学定員は540名。競争率は1~1.1倍。実際に入学したのは379名だからこちらも大幅な定員割れ。

偏差値は35~37.5。薬学部でも37.5である。

更に問題なのは売りにしている薬剤師の国家資格。

同校のホームページでも開学以来の累積合格率を92.5%と謳っているが、これには裏がある。

厚生労働省は薬剤師国家試験の大学別現役、既卒者別の合格者数を発表している。

これによると昨年は現役で受験者28名に対して合格者24名で合格率86%、ところが既卒者は受験者78名に対して合格者29名で合格率は37%。

薬学部の入学定員は160名。この内、薬学科は120名だが今年は103名が入学。

現役の受験者との差75名はどこへ行ってしまったのか?

実は国家試験の出願者数は46名。18名は出願したものの受験はしていない。おそらく卒業試験に落ちた人達だろう。それでもあと50名近くの差がある。

同校が発表している情報にその答えがあった。

昨年の数字だが1年次での留年生が37名。2・3・4・5・6年次の留年生がそれぞれ47名、15名、5名、0名、42名となっている。

一定の成績を取れない生徒を留年させるのは仕方がないが、これだけ多くなると本当に入学させるべき学生を入学させたのか疑問になる。

そしてこのことにより大学にはメリットが生まれている。

入学定員充足率は70%なのだが定員充足率が80%に上昇する。

つまり留年生のお陰で授業料収入が増加することになる。

薬学部と獣医学部と内容は違うが同じ国家試験を目指す学部として、同じ運営がなされないかも懸念の一つだ。

ちなみに本学は元旧自治省の官僚であり、その後岡山副知事に転じた野平銚子市長が市長選に出場する際の公約が発端。岡山副知事時代に加計学園と関係を築いていた。

そして地元銚子市は敷地9.8ヘクタールを無償貸与、92.5億円の巨額補助金供与(その後、77.5億円に減額)を行なったが、これがその後の市財政の悪化の原因となった。

こちらも今治市に同じことが起こらないとは言えない。


そして今回の岡山理科大学。

1964年に設立された加計学園として初の大学。

理学部、工学部、総合情報学部、生物地球学部、教育学部、経営学部の6学部からなる。

学部定員1,802名。合格率は概ね2~3倍程度。入学者は1,653名と定員割れであることに変わりはないが他の二校に比べるとましな状況だ。偏差値は35~47.5。

岡山で理系学部にある大学が少ないという事情もあるようですが。

生物地球学部など特色を出そうと懸命でそれなりに学生も集めているようですが、半世紀の歴史がある割には下位大学に留まっている感は否めません。


と言うことで加計学園が運営している大学を見る限り、優秀な学生を集めるには至らずと言うか定員を満たすことができていない。国家試験を目標とする学部では留年と受験制限を行なっているものの近年では合格率も低迷している。

果たしてこのような加計学園に既存の大学にない新規の分野を含んだ獣医教育が出来るのであろうか。

文部科学省の審議会での議論の結果が待たれる。



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