最愛のビッチな妻が死んだ 第15章
交際26日目 3月14日
夜になり、通夜が終わった。離婚していたが親戚扱いとして受付を任された。共通の友人や仕事関係の人が何人もきた。会社からは花も出ていた。明日は火葬だ。
「いま、前の家に着いて、打ち合わせしたら帰るよ」
「了解」
「また連絡するね」
「はーい」
2人とも極力陽気を装った。
「太一さんもおる?」
「まだおるよ」
「了解。帰ります」
「待ってます」
僕が帰る場所は何が起こっても変わらない。あげはの待つとこしかないよ。
「今日も明日も明後日も1ヶ月後も1年後も10年後も、待ってます」
「ありがとう」
「幸せが溢れた時も
熱を帯びた時も
思い出した時も
機嫌を損ねた時も
混乱した時も
穏やかじゃない時も
健やかなる時も
病める時も
喜びの時も
悲しみの時も
富める時も
貧しい時も
ずっと一緒だよ」
「ありがと」
僕はあげはの待つ家の近くまできた。
「いつもありがと」
「もうすぐ、ただいまする」
「鍵空いてるよ」
「お腹空いたよ」
空腹はウソだったが、そう言った方があげはが喜ぶと思った。
「一緒に食べよう」
「今日も明日も、」
「死ぬまで、食べよう」
「何万年後のお話かな」
そう、僕たちを死が分かつのは、一体何年後になるのか? そんな絶望は考えたこともなく、考えるだけでもおぞましかった。
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