第5話 (後編)アフリカへ行く彼から学んだこと【少し不思議な力を持った双子の姉妹が、600ドルとアメリカまでの片道切符だけを持って、"人生をかけた実験の旅"に出たおはなし】
あの時人生で初めて感じた、あの衝動といっていいのか、衝撃なのか、とにかくあの変な感覚は本物だったと思う。
彼らと出会った2010年の夏から、私の人生が大きく変化し始めた。
(少し変わった出会いのきっかけはこちら。)
その年の夏は、忘れられない夏になった。
”夏”はものすごく短かった。
みんなとのあの出会いが7月の後半だったので、もう一日たりとも無駄にしまいと毎日を楽しみ尽くした。
次の約束は三日後の恵比寿の夏祭り。
お祭りの熱気と冷えた缶ビール、涼しい夏の夜風がとっても心地よかった。
お祭りが終わっても居酒屋で朝まで色んな話をした。その後六畳しかない私のアパートでみんなで雑魚寝。
その次は九州へキャンプ。
みんなでコテージに泊まって、川で泳いだり、夜はみんなでカレーを作る。
ぶさいくに切った野菜がとってもおいしかった。
夜は満点の星空から落ちる流星群の下で、寝袋にくるまって眠った。こんなの忘れられない。
毎日が新鮮で、非日常で、夢みたいに最高だった。
私たちはあと少ししかない夏を、やっと会えたことを埋めるように超特急の駆け足で過ごした。
そして最高に楽しかった短い夏も、あっと言う間に終わってしまう。
またいつも通り、淡々と日常がやってきた。
夏が終わると
夏が終わると、由紀夫はプロのダンサーとして新潟へ行く事になり、
けんちゃんは、アフリカの短期ボランティアへ、
私はいつも通り、服の専門学校へ通う"普通"の日々に戻って行った。
でも、いつもの日常だけど見えてる世界はすこし"日常"ではなくなっていた。
相変わらず学校は忙しいし、まだまだゴールも見えない。
だけど何かが変わったように思えた。狭かった視界がほんの少し明るく広がった感じがした。
まだ、よくは分からないけど。
最高の日常がやってくる合図
秋になると、アフリカからけんちゃんが帰国する時期になった。
けんちゃんからは出発する前に空港に迎えに来て欲しいと言われていたけど、その約束がまたヒドかった!
※アフリカ出発前日
アフリカから戻ってくるから、空港おっとってやー!
それだけ残してけんちゃんは旅立ってしまった。
どこの空港かも、何の航空会社かも、詳しい時間も知らせずに.....おいおい。
多分成田だろうということで、とりあえず空港に向かった。
向かったものの、成田空港はとても広い。国際線は外国人のスタッフばかりだった。
英語だから聞けないしなぁ、それより一ヶ月も前の口約束をちゃんと覚えてるんだろうか....うーん。
周囲が飛行機から降りる大事な人との出会いを喜んでいる中、途方に暮れてトボトボ歩いてると、何やら黒い物体が目にとびこんできた。
背が高く、黒々と丸焦げた肌、民族のタイコをかかえた姿は妙にいさましい。
そうそれはお察しの通り現地人と化したけんちゃんだった。
もはや彼は日本人の風貌ではなかった!
いつもの最高の笑顔と、やたらと目立つ白い歯を輝かせ、彼はニカッと笑った。
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