第4話(前編)アフリカへ行く彼から学んだ"生きる"こと【少し不思議な力を持った双子の姉妹が、600ドルとアメリカまでの片道切符だけを持って、"人生をかけた実験の旅"に出たおはなし】
その日は朝からなんだか変な日だった。
まずその日の始まりは何となく立ち寄った新宿の電気屋さんからだった。
その時は七月の終わり。東京の街はコンクリートからの照り返しでとても蒸し暑く、あまりの暑さから逃げるようにして近くの電気屋さんに入った。
店内はクーラーがきいていて、とても涼しい。暑かった身体も10分も経てばすぐ冷えてしまうくらい。だから汗がひいたらすぐに帰るつもりのはずだった。
パソコン買わない?!やたら元気な宮川大輔。
しかし、なぜかパソコン売り場のひょうきんなお兄さんにしつこく営業をかけられてしまったのだ。
しかも宮川大輔にそっくり。
最後のは丁寧にお断りして、人生で初めてその場でパソコンを衝動買いしてしまったのだ。
たまたま涼みに入っただけの電気屋さんで。
箱の隅からはお兄さんのアドレスが書いた紙もちらついているけど。
自分でも少しわけの分からないまま、買うはずもなかったパソコンを片手にお店を出ると、今日は自転車で来ていたことを思い出した。
どうやって帰ろう。というか、買ってしまった.....。
色々な不安を残したまま、結局パソコンを手に持ち、よたよたと恵比寿まで自転車を漕ぐことになった。
人生の角度を大きく変えた出会い。
当時は専門学校の近くの恵比寿のボロアパートを借りていた。
パソコンを抱えながらの真夏の自転車走行は大分きつい。
新宿から恵比寿はなかなか距離もある。段々手もしびれてきた。
後五分で家に着くというところの恵比寿の交差点で、とうとう自転車ごとこけてしまった。
と、その時、通行人が痛い目で見ながら横切って行く中、後ろから声がした。
声は若い男性の声だった。
恥ずかしくなって、後ろも振り向かずに
とだけ言ってまた自転車に手をかける。
するとまたバランスを崩してこけてしまった。
顔をあげるとタンクトップに真っ黒に日焼けした2人の男の子が立っていた。
駆け寄って自転車を起こしてくれたのだ。
____ あ。
この時、本当にうまく言えないけど、私は生まれて初めての不思議な感覚になっていた。
____ やっと会えた。
2人をみたときの最初に出てきた言葉が、これだった。
しかもよくある勘違いの程度ではなく、今でもあれは何だったんだろう?
って思うぐらい印象的で鮮明な感覚。その感覚は後にも先にもこの出会いだけだった。
今初めて会ったのに、とても懐かしくてたまらなかったのだ。
まるでよく知っている遠くにいた大好きな友人に、ようやく会えた、という感じのワクワクした気分だった。
そう感じたのは私だけだったのか、みんなもそうだったのか、それはよく分からないけれど、3人とも出会えた事にとてもテンションが高かった。
結局パソコンを運んでもらうことになり、家に着く五分もかからない道をみんなでワイワイ話しながら歩いた。
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