田中角栄が自民党幹事長の時代、離党する河野洋平に一言だけ助言した。「毎日必ず、みんなで一緒に飯を食え!」

これは政治の話というわけではありません。


田中角栄氏ほど毀誉褒貶のはげしい政治家はいないと思います。雪深い新潟で育ち、学歴は高等小学校のみ。それが39歳で郵政大臣として入閣し、その後内閣や党の重要ポストを歴任した後に、47歳の若さで自由民主党の幹事長となりました。


のちに金脈問題やロッキード事件、そして最後は病気で政治生命は絶たれます。政治家としての評価は分かれるのでしょうが、その豊かな人間性が多くの人を魅了したことは事実だと思います、


田中幹事長の時代、河野洋平氏が5人の同志とともに自民党を離党し、新自由クラブを結成しました。党内で若きプリンスと早くから持てはやされ、次の時代を担う若きリーダーと期待されていた河野氏。その彼が離党の挨拶に幹事長室を訪ねたとき、田中氏はこう言ったそうです。


「離党は承知した。ひとつだけ助言をしよう。
いいか、毎日必ず、みんなで一緒に飯を食え!」


理念や政策の一致は、政治党派にとってもちろん大切なことです。しかしそれ以上に、日常的な意思疎通、それも飯を共にしながらの何気ない世間話が、権謀術数が渦巻く永田町のなかでどんなに重要か。それを説いたのだと思います。


何事かをチームで実現しようとする時、目標達成に向けたロジカルな思考能力も必要です。心理学などを応用したコミュニケーション・スキルも大切でしょう。しかし、毎日顔を合わせるなかで微妙な表情の変化に気付いたり、言葉にならない感情のゆれを察知することが、対人関係能力の基盤にあることを忘れないようにしたいと思います。


大きな自戒をこめて。


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