大嫌いだった父が亡くなった日 第2回

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父を家に連れて帰る


検死が終わった後、遺体を引き取りに行かなければならないかった。

母は家が狭くお棺の出し入れが難しいから家に連れて帰れないのではないかと心配していた。


私は葬儀社の人がどんな家でも家族の希望に応えてくれることを知っていた。

大急ぎで問い合わせたら、やはり努力すると言って下さる。

母と葬儀社の人たちとで、警察へ父を迎えに行った。

糊のきいた新品の浴衣を着せてもらっていた。


葬儀社の人はふたりがかりで父を抱えて家に運んで下さった。


私はどうしても父を家に連れて帰ってやりたかった。

お通夜までの時間を自宅でない場所で過ごさせることだけは どうしても嫌だった。



葬儀社の人とお通夜お葬式の相談をする。


父が入るお棺 お棺の中の布団 霊柩車 祭壇の形式 花・・・ひとつひとつに

ランクがあって選んでゆく。最初は最後くらい良い物をと思って選ぶが、最終的に

何百万円という金額になる。それが妥当なのかそうでないのかすら分からない。

けれどお金はお通夜お葬式だけでなく必要になってくるから、削れるものは削ろうと

一旦決めたものを変えて良いか尋ねると、葬儀社の人の顔色が変わる。


結局こちらの希望通りにして下さったのだが、それでも大変な金額が動くのだ。



5歳違いの弟が川崎にいて、このバタバタの合間に留守電に連絡を入れておいた。

弟はこちらへ向かう車の中から電話をかけてきた。

話が話だけに信じられない様子でこちらの話を言葉少なに聞いていた。



葬儀社の人との打ち合わせや契約が終わり、母とふたりになった。






その時 インターフォンが鳴った。

モニターをのぞくと強風に飛ばされそうになりながら、いとこのお姉ちゃんが立っていた。



その日の午後から台風が接近していた。

風はどんどん強くなり雨も降り始めていたが、母も私もそれどころではなかった。


いとこのお姉ちゃんが、台風の中来てくれた!


母も私も元気を取り戻した。

父に祖母が作ってくれた着物を母とふたりで着せる。

早くしないと死後硬直で着替えがしにくいからと、母を急かして浴衣を脱がせ着物に着替えた。



看護師になって10年以上働いてきた。

初めてこの仕事をしてきたことが役に立ったと思った。


母は父に何かしてやれることが嬉しそうだった。


私は家に連れて帰ってやれたこと、こうして自分の仕事の経験や技術が役に立ったことで

胸がいっぱいだった。






本当に嫌いだった


私は長女で父と母にとって、初めてのこどもだった。

私のアルバムに父の字で

”かおりちゃん 早く大きくなってお父さんと散歩に行こうね”とある。

父に抱っこされた私 肩車 一緒にお昼寝・・・小さい頃はお父さんが大好きだった。



いつからだろう?

小学校高学年頃からだろうか?

仕事から帰ってくるとお酒を飲み、お説教が始まる父がたまらなく嫌になったのは。



お山の大将キャラの父は常に

ワシは正しい。おまえらは間違っている。

このスタンスでもって毎日酔っ払ってはお説教をするのだ。

怒りっぽくなり同じことを繰り返し、本当に嫌だった。



まぁそんな調子だからよく喧嘩をした。

父にしたら女の子はかわいかったのだろうが ちっとも言うこと聞かない私に

オマエはホンマに可愛げないなぁ〜


父の期待に沿えない私だった。

早く家を出たくてひとり暮らしをしたくて、20代の後半私は家を出た。



晩年 1日座ったまんまでテレビを見ながら

新聞。
お茶いれて。
あ、それ取って。

母を使って動こうとしない父。

そんな父が煩わしく、私の足は実家に向かなかった。





お通夜とお葬式


お通夜の朝、弟夫婦が夜遅く着いて父の横に寝たという。

まだ誰もが父の遺体を前にしながらも、父が亡くなった実感がなかったと思う。


続々と親戚が到着、近所の人や知り合いが来られたり、電話が鳴る。

欠点は多かったが、親戚や地域、職場では頼りにされる人だったのだ

お通夜のために葬儀社の人が来て準備が始まる。


お金の準備や死体検案書の受け取り、葬儀社の人に教えてもらいながら

ひとつひとつこなしてゆく。

弟が帰ってきてくれたので、随分心強くなる。


・・・こんなに母は頼りなかっただろうか?



父はこれから三途の川を渡り長い旅路に出るからと白装束に着替えさせてもらう。


葬儀社の人
さすがですね〜きれいに着せてはりますね。


寝たきりの人や亡くなった人の着替えは本当に大変なのだ。

ある意味普段は葬儀社と看護師は連携プレーでのお付き合いだが

こうして身内が亡くなって初めてそのご苦労が分かる。


いよいよ父がお棺に入る。






お通夜もお葬式も私達の予想を上回るたくさんの方が来て下さった。

出席できない方からの電報や花が次々に届く。



父はこんなに愛されていたのだろうか?



もしかしてとても”いいひと”だったのだろうか?



不思議な気持ちだったがこの大きなイベントを回すので精一杯だった私は

ゆっくり考えたり自分の気持ちを見つめたりするヒマはなかった。






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