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【コロナ禍の学校現場から】突然の一斉休校。NPOカタリバと福島の県立高校が挑戦したICT活用とは?

著者: 認定特定非営利活動法人カタリバ


認定NPOカタリバ(以下、カタリバ)は、すべての10代が未来を作り出す意欲と創造性を育める未来の実現を目指し、2001年から活動を始めた教育NPOです。東日本大震災後は「福島県の高校生に安心して学べる場所づくりを」という想いから、福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校(以下、ふたば未来学園)へ学校支援コーディネーターを配置し、放課後フリースペース「双葉みらいラボ」の立ち上げや、そこでの高校生に向けた安心安全な居場所づくり、放課後の個別学習サポート、また同校での地域課題解決型プロジェクト学習のサポートなどに取り組んできました。


今回の記事では、新型コロナ感染拡大による2度の臨時休校をきっかけに、カタリバとふたば未来学園が行った学校現場におけるICT活用の取り組みについて、カタリバ 広報チーム 本田がご紹介します。



カタリバ 広報チーム 本田詩織(ほんだ・しおり)

2018年、カタリバに入職。2020年9月まで福島県立ふたば未来学園高等学校併設の「コラボスクール・双葉みらいラボ」に勤務。施設運営や、同高校の探究型学習に学校支援コーディネーターとして携わる。現在は広報チームで、オウンドメディアやSNSを活用したPR業務を担当している。


■突然の臨時休校。「今度は絶対に学びを止めない。」という想いで踏み出したICT活用への一歩


2020年2月27日の夕方、新型コロナウィルス感染拡大に伴い、突然の臨時休校要請が通達され、カタリバスタッフが常駐するふたば未来学園の職員室には動揺が広がりました。


臨時休校を前に教員やカタリバスタッフからは、「休校中、教員が生徒と繋がりを保つためにどのような方法があるだろうか」「なんでもかんでも提供するのではなく、生徒が自立的に家庭学習を行う状態を目指したい」というような声が挙がりました。また、突然の環境変化による生徒の心身不調を心配する声もありました。


ふたば未来学園のICT化において中心的な役割を担った教員は、当時の想いをこのように振り返ります―――「2011年の震災では、また明日も会えると思ってさようならを言った生徒と、再び会えたのは1か月以上も先になってしまった。今度は絶対に学びを止めないという気持ちで、今回の取り組みに向き合っていました」。


もともとふたば未来学園では、オンラインでの一斉課題配信や授業配信はほとんど行われたことがありませんでしたが、「いかなる状況においても生徒の学びを保障し、進路実現等に不利益が生じないように準備を整えておく」ことを目指して、教員・カタリバスタッフが一体となってICT活用を促進していくこととなったのです。


■学校・カタリバ・生徒の声により学びの場はカタチを変え、全学年の遠隔授業を実現


休校要請が通達されてから休校開始までの5日間で、校内ではめまぐるしいスピードで様々な議論と意思決定がなされました。


まず実施が決定したのは、毎朝各クラスの担任中心で実施する「オンライン朝学活」や、教科ごとに実施する「オンライン課題進捗確認面談会」、カタリバスタッフが中心となって毎日運営する放課後コミュニティ「オンライン双葉みらいラボ」などの取り組みです。


オンライン朝学活は、連絡事項の伝達、生徒一人一人に対する健康観察や課題の進捗確認をしながら双方向のコミュニケーションを保ち、生徒からの不安・不明点を拾い、即座に解消していくことを目指しました。「オンライン双葉みらいラボ」ではオンライン学習ルーム・イベントなどを企画実施し、生徒同士の交流や学びをサポートすることを目指しました。


(オンライン双葉みらいラボの様子)


そして迎えた休校前最後の登校日には、担任だけではなく多数の教員・カタリバスタッフがサポートに駆けつけ、必要なICTツールの導入・使用方法に関するレクチャーを開催。生徒の疑問やつまずきを一人ずつ解消しました。その後休校期間に入ってからも、生徒の声を拾いながら柔軟に新たな施策を実施していきました。


(生徒のサポートに回る教員・カタリバスタッフ)


4月8日、福島県内の学校では登校が可能となりましたが、全国各地で新型コロナウイルス感染拡大が続いている状況から、再びの休校開始の可能性が濃厚になっていました。その状況を受け、校内に「家庭学習ICT活用支援ワーキンググループ」を設置。カタリバスタッフもこの一員として参画し、休校期間中に各教員やカタリバスタッフのもとで実践されてきた知見を集約、ICT活用法や課題を整理し、そのうえで学校全体で組織的に取り組んでいくための環境整備に取り組んでいきました。


その後、2度目の臨時休校期間中には、全学年で遠隔授業を実施。授業形式については教員間で議論を重ね、「同時双方向(リアルタイム)型」での遠隔授業に限らず、事前に動画や教材を配信する「オンデマンド型」、プリントや問題集による「課題提示型」など、その手法は各教科会や担当教員が授業の特性に合わせて選択する形としました。この他にも、全学年でのzoomを活用した朝学活の実施、オンライン双葉みらいラボの開館など、休校中の生徒の学びを1日を通して保障する環境を設計しました。


結果、ふたば未来学園では4月21日以降、本来であれば登校するはずであった18日間が臨時休校となりましたが、この期間にも毎日遠隔授業を実施することで、子どもたちにとっての学びの場を維持し続けることができました。また3月の臨時休校期間中から実施していた「オンライン双葉みらいラボ」は、のべ429人の生徒が利用し、休校中直接会うことのできない同級生やカタリバスタッフと語らったり、学習課題に取り組んだり、進路について相談したりなど、子どもたちが思い思いの時間を過ごす居場所として機能しました。


(中学1年生でのリアルタイム型の遠隔授業の様子。)


■新型コロナウィルスがもたらした副産物も。ニューノーマルな学びの場設計に向けた新たな挑戦


ふたば未来学園では、県内外からゲストを招いて探究学習の授業を行うことがありますが、ゲストを直接呼ぶことが難しい場合も、遠隔授業のノウハウを活かし、オンライン会議ツールを通じて授業に登壇いただくことができるようになりました。直接ゲストを招く場合に比べ、移動に伴う時間的・金銭的制約も少なく、生徒とゲストをつなぐ頻度をこれまで以上に高めていくきっかけにもなっており、新型コロナウイルスがもたらした副産物とも言えるかもしれません。また休校前に比べ、生徒と教員のオンラインコミュニケーションツール(ClassiやGoogle classroomなど)の活用頻度も大きく伸びています。


コロナ禍での臨時休校によって失われた学びの機会や経験は、少なからずありましたが、一連の取り組みで得た経験やノウハウは、休校が終わったから今も残り、進化し続けています。オフラインとオンラインの双方良いところを活かした学びの環境設計に向け、ふたば未来学園とカタリバは、また次の一歩を踏み出し始めています。


(休校明けに実施された「オンライン考査学習支援」の様子)


■NPOカタリバについて

どんな環境に生まれ育った10代も、未来を自らつくりだす意欲と創造性を育める社会を目指し、2001年から活動する教育NPOです。高校への出張授業プログラムから始まり、2011年の東日本大震災以降は子どもたちに学びの場と居場所を提供するなど、社会の変化に応じてさまざまな教育活動に取り組んでいます。


<団体概要>

設立 : 2001年11月1日

代表 : 代表理事 今村久美

本部所在地: 東京都杉並区高円寺南3-66-3 高円寺コモンズ2F

事業内容 : 高校生へのキャリア学習・プロジェクト学習プログラム提供(全国)/被災地の放課後学校の運営(宮城県女川町・岩手県大槌町・福島県広野町・熊本県益城町)/災害緊急支援(西日本豪雨、令和元年東日本台風、熊本豪雨)/地域に密着した教育支援(東京都文京区・島根県雲南市・島根県益田市)/困窮世帯の子どもに対する支援(東京都足立区)

URL :https://www.katariba.or.jp/




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