今までにないお饅頭をつくりたい! 果肉ごろっと饅頭シリーズを作った京菓子店の開発ストーリー
昭和20年代に京都で創業した「京菓子處鼓月」は、現在も変わらずご好評いただいている【千寿せんべい】など、昭和の時代には珍しいバターなどを使用した新しい京菓子を生み出してきました。そして今もそのチャレンジ精神は変わらず私たちに引き継がれています。
今回はそんな京菓子處鼓月にて昨年2020年のコロナ禍に新発売し、京菓子處鼓月の饅頭の販売シェア1位になった"果肉ごろっと饅頭"シリーズ・第一弾【檸檬饅頭爽々】の発案から改良を重ね販売に至るまでの裏側を、担当の松田稔秀さんに伺いました。
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▲商品企画部 主任 松田稔秀(まつだとしひで)
2014年入社後、百貨店インショップでの店長を経て、2018年より本社・商品企画部にてお菓子の企画やディスプレイの考案を担当。
- 開発のきっかけは「今までにないお饅頭を作りたい!」
ーなぜこの "果肉ごろっと饅頭シリーズ" を開発することになったのですか?
第一弾の【檸檬饅頭爽々】は、見た目も味も「まるでレモン果実のよう」にこだわった焼き饅頭です。一般的に「お饅頭」というと、小豆餡を生地で包むという形態が一般的で、京菓子處鼓月でも紅白饅頭などそのようなお饅頭を多く販売してきました。しかし餡を使った昔ながらの和菓子の消費量は年々減少傾向にあり、特に若年層のお客様は洋菓子のほうが親しみがあるという方も多くなってきています。
そこで、より広いお客様にお饅頭の魅力を知っていただくため、昭和の時代からチャレンジを続けてきた京菓子處鼓月らしい「今までにない、お饅頭のイメージを覆すお饅頭を作ろう」という想いから企画がスタートしました。
企画スタート時に洋菓子業界でトレンドとなっていたのがレモンケーキなど、レモンの風味をふんだんに味わえるお菓子でした。「今までにないお饅頭を作るということは、今まで和菓子であまり使われていない洋菓子のトレンド素材を使ってみて良いのではないか?」と考え、レモンを使ったお饅頭を開発することとなりました。
- 開発スタートから発売まで約2年、見た目も味も「まるでレモン」に
ー今までにないお饅頭、商品開発に苦労されたのでは?
はい、開発スタートから2020年の販売開始までおよそ2年かかりました。これまで発売した商品と比べても2倍以上の時間がかかった商品です。見た目・味ともに「まるでレモン」を実現するのは非常に苦労しました。
開発スタート当初から約1年間は、白餡にレモンピューレを混ぜたレモン餡を使い、何度も試作を繰り返していました。しかし、そのレシピではいくら試作を繰り返しても普通のお饅頭にレモン風味が加わっただけで「今までにないお饅頭」とは言えませんでした。
そこで開発担当の職人が発想の転換から生み出した斬新なアイデアが、レモンのインパクトを出すためにレモンピールを使い、餡はあくまでもレモンピールのつなぎとして使うという方法でした。はじめはレモンピールのゴリゴリとした食感がありましたが、ジューシーさと柔らかさを出すためにレモンピールをリキュールに漬けこんでみたところ食感が改善。しっとり柔らかく、まるでレモン果実をまるごと食べているような餡が完成しました。
見た目も、お饅頭には珍しく天面にツヤを出すことでレモンらしさを再現。たいていのお饅頭は茶色でマットな質感ですが、ツヤ感を出すことによってしずる感を出し、より「まるでレモン」になるよう工夫しました。かぼちゃの種をレモンの葉っぱに見立てるというさりげないこだわりにも注目していただきたいです。
▲商品の研究開発を行う【鼓月研究所】で日々お菓子が開発・改良される。
▲お饅頭には珍しいツヤのある天面とレモンの葉に見立てたカボチャの種
- パッケージも「今までの和菓子にない」を追求
ー パッケージも他の商品と比べてモダンな印象ですよね?
開発スタートから発売まで2年と申し上げましたが、実はその期間の中でパッケージ開発に費やした時間も非常に長いのです。
中身の檸檬饅頭爽々はみんなが納得できるぐらい「今までにない饅頭」と言えるものができたのですが、今までにない商品がゆえに最適なパッケージデザインには苦労しました。
普段和菓子をあまり買わないお客様にも選んでいただくために、これまで京菓子處鼓月では使うことがなかった艶のあるレモンイエローの紙を採用、手描きのレモンのイラストをあしらうなど、和風の要素を残しつつもモダンな印象に仕上げました。
- コロナ禍での新発売では店頭・EC・SNSを連動
ー 2020年春の新発売後の反響はいかがでしたか?
2年間の試行錯誤を重ねてようやく2020年3月に第一弾・檸檬饅頭爽々を発売した矢先、新型コロナウイルスの影響で最初の緊急事態宣言が発令されました。百貨店は休業、直営店も休業や時短営業となり、せっかく発売したにも店頭でお客様に見ていただくことが難しい状況となりました。
しかし報道などからの情報をもとに、6月ごろにはまた宣言が解除されるのではないかという予測のもと、緊急事態宣言下で準備を進め6月より店頭・オンラインショップ・SNSで檸檬饅頭爽々に特化した「レモン祭り」を開催しました。
新発売当初はスロースタートとなったものの、おうち時間への需要の高まりや、まるでレモンのような見た目と味が大変好評いただき、それまで京菓子處鼓月のメイン顧客層ではなかった30代~40代のお客様を中心にSNSで拡散されました。
▲2020年6月にオンラインショップにて開催したレモン祭りのキャンペーン画像
- SNSで30代のお客様を中心に拡散
ー その後9月には "果肉ごろっと饅頭"シリーズ第二弾が発売され大変人気でしたね。
檸檬饅頭爽々は2020年6月に定番の焼き饅頭の168%の売上を獲得しました。その後、同年9月に新発売した "果肉ごろっとシリーズ" 第二弾【紅りんご】は想定以上の人気となり、一時生産可能数を超えてしまい品切れになるほどの反響をいただきました。
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コロナ禍となった5月ごろから、京菓子處鼓月のインスタグラムアカウントでライブ配信を行っているのですが、この果肉ごろっと饅頭シリーズは他の商品と比較すると「かわいい」「買ってみて美味しかった」「食べてみたい」というリアルタイムでのコメントが圧倒的に多かったですね。
また、果肉ごろっとシリーズ発売前までは、SNSにあがっている鼓月の商品と言えばほとんど千寿せんべいでしたが、このシリーズが発売されて以降はTwitterやInstagramにアップされることが非常に多くなりました。
コロナ禍でのおうち時間の増加、見た目の可愛さ、食べたときの驚き、和菓子を食べたことがない方でも抵抗なくチャレンジできるという点が組み合わさり、SNSで拡散し普段和菓子を食べないお客様にも人気となったのではないかと思います。
▲2020年10月に開催したインスタライブの様子
- 今後も "意外性" のある和菓子を届けたい
ー 今後の展望や新商品の予定があれば教えてください。
「お饅頭」と聞くと古臭いイメージが先行しがちですが、今回のシリーズを開発したことで、工夫次第で和菓子に馴染みがない方にも選んでいただける今までにない和菓子ができるのだと学びました。今年中に同シリーズの新しい商品を発売できたらという想いで、いま商品企画を進めているところです。
昭和の創業当初からお客様に良い意味の "意外性" を提供してきた鼓月らしく、今後もより幅広い世代の方々に和菓子を楽しんでいただけるよう商品企画を進めていきたいと思います。
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