最もクリエイティブな職場であるために。コロナ禍で見えた“居場所”という課題と可能性
2021年6月4日より全国劇場公開中の映画『シドニアの騎士 あいつむぐほし』や『パシフィック・リム: 暗黒の大陸』(Netflixにて配信中)などの作品を手掛けるポリゴン・ピクチュアズ(以下、PPI)は、1983年設立の国内最大手のデジタルアニメーションスタジオだ。
PPIは新型コロナという未曽有の危機に直面した際、第1回目の緊急事態宣言の翌日(2020年4月8日)に全スタッフのリモートワーク化を実施。その背景には、日本だけでなく海外の動向も注視し、緊急事態宣言の発出前にフルリモート体制への移行を決断するという経営陣の迅速な判断があった。
また、役員を含む男性スタッフの育休取得率が高く、先日は新型コロナワクチン休暇の導入を発表するなど、「クリエイティブ」を追求しながらも業界に先んじて働き方改革を推進している。この意味を、代表取締役の塩田周三に聞いた。
新型コロナへの対応で見えた課題と可能性
― PPIでは緊急事態宣言とほぼ同時にフルリモート体制に移行し、コロナへの積極的な対策を取ってきましたが、それにより見えた課題はありますか?
塩田:課題というか、チャンスとも思っていますが…、さまざまな可能性が見えてきました。まず、想定以上にリモートワークでも物事が進むという気づき。我々のようにデータトラフィックが激しい会社では、アーティストとワークステーション、そしてデータを格納するサーバーは同一場所、近距離になければいけないという思い込みがあったのですが、データ転送技術の進化によりアーティストは同じ場所にいなくても仕事ができるということが判明しました。これは画期的で、アーティストとスタジオの関係に新たな可能性が生まれます。今よりさらに働きやすく、よりクリエイティブな環境の実現に向けた展望が開けたのです。例えば、今は南麻布のスタジオに300人近いアーティストが集まっていますが、四国、九州、北海道、海外とばらばらな場所でもPPIのメンバーとして働くことができます。
東京都港区南麻布のスタジオは、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置下では
以前の15%以下、解除時でも30%程度の出社率となっている。
今だからこそ問われる、会社という居場所の意味
―確かにリモートワークは働き方に多様性をもたらしますね。しかし、同時に多くの会社でコミュニケーション不足が課題となっています。
塩田:そうですね。我々のバリューは、個人が「創意」を発揮し、それを「行動」に移す。その「行動」が個々の能力以上の「集団力」に繋がる、というものです。さまざまな働き方の選択肢がある中で、どのように個々の「創意」を促すか、「行動」しやすくするか、そして我々のような大規模スタジオのアドバンテージである「集団力」をどうやって発揮するのかは、大きなテーマです。しかし、これはコロナ以前からの課題であり、今回の経験でその解決への選択肢が増えたと思っています。働き方に多様性が生まれることで課題は増えますが、より良い方向に向かう可能性のある良い課題なんです。
我々は、リモートワーク下にあっても「会社が自分の居場所である」とスタッフが感じられるよう、多様化した「場所」や「居る」と言う概念と向き合い、「会社」とは何かをメインテーマとして問い、それに対する解を見つけていかなければならない。それは課題ですが、大きく飛躍するためのポテンシャルでもあります。これを解決していくことで、より良い作品づくりや、スタッフのやりがいにも繋がると考えています。
個人の「創意」が「行動」により「集団力」に転化する様を「祭」の象徴である巴紋で
表わしたPPIのバリュー
最もクリエイティブな職場であるために
―最後に、新型コロナワクチン休暇制度導入の経緯についても聞かせてください。
塩田:先に接種を開始した海外では、接種後の副作用が多数報告されていました。さらに日本では予約が困難だったり、週末に集中することも予想できる。なので、まずはスタッフが接種しやすい環境をつくることが大事だと思いました。また、最初の緊急事態宣言が発出されてから1年を超え、終わりの見えない不安の中、精神的な疲労を感じているスタッフもいる。ワクチンに複雑な想いを抱く人もいるだろうが、多くの人にとってはワクチン接種をすることでコロナとの戦いに一つの区切りができます。それを実感してもらえれば、精神的疲弊という意味でもプラスになるのでは、という想いがありました。もちろん接種は強制ではないので、スタッフが各々の判断で制度を利用してもらえればと思っています。
今回お話したことに限りませんが、我々は「最もクリエイティブな職場」を目指しています。それが、我々がリモートワークへの切り替え、ワクチン休暇制度の導入と、どこよりも先んじて施策を取ってきた理由なのです。
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