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【連載】カタリスト・データ・パートナーズが目指す未来(2)

著者: 株式会社Catalyst・Data・Partners

■第2回:

株式会社フライウィール 代表取締役CEO

横山 直人(よこやま なおと)様



2021年7月に『データシェアリングで「社会の発展」や「個人の幸せ」を実現する』をビジョンに掲げ、誕生した(株)Catalyst・Data・Partners(以下、カタリスト)。このビジョンのもと、パートナーと共に目指す未来とは?様々なパートナー企業との対談を連載でお届けします。

第二回目となる今回は、カタリストの 協業パートナーである(株)フライウィール(以下、フライウィール)代表取締役 横山直人様にご登場いただきます。


(左)カタリスト・データ・パートナーズ 髙橋 誉則/(右)フライウィール 横山 直人様


■情報の偏在をなくす

髙橋:

横山さんには、今回、フライウィールには需要予測のパートナーとしてプロジェクトに参加頂いています。

主には、現在カタリストが取り組んでいる出版業界におけるオープンデータを活用した需要予測においてカギとなるデータの整備とそのデータを活用するAI開発の部分を担っていただいています。


横山さんがフライウィールを立ち上げたのは2018年ですよね。どのような思いがあって起業されたのですか?


横山:

起業のキッカケとなったのは、Facebookに勤めていたころ、自社の持つデータを自社の発展に活用している企業と、自社でデータを保有していないために競争力を落としてしまった企業の両方を目の当たりにしたことでした。


「いち企業が持つデータを、他の企業にも使ってもらえたらみんなが幸せになるのに。」


そう考えましたが、Facebookでそれを実現するのは難しく、だったら自分でやろう、と。


それまでも、NTTドコモやGoogleでモバイルインターネットに携わったことで、オープンプラットフォームには大きな可能性を感じていました。オープンであることで、1社だけではなく、みんなで新しい産業を創っていくということに魅力を感じていたこともあり、日本の企業にとって、「データを価値に変える」ことを実現したい、という想いで、当時、Microsoftに勤め、同じ課題を感じていた現フライウィール CTOの波村と共にフライウィールを起業しました。


髙橋:

私はそれを、「情報の偏在をなくす」ことだと考えていて、それこそがカタリストで実現したい社会でもあります。


私は新卒でCCCに入社し、店舗勤務を経験したのち、31歳で人事部長に就きました。

その時、人事部をコスト部門ではなく、収益部門にしたいと考え、人事部を会社化し、「CCCキャスティング」という会社を立ち上げました。いわゆる社内起業ですね。


ここでやりたかったのも、「人材と人のキャリアの偏在をなくす」ことでした。

当時、グループ会社の個社の中で採用や退職案件が閉じられていたのを、求人と応募を会社の垣根を越えて応募ができる「人材流動化」の仕組みをCCCキャスティングがグループ内エージェントなり実施しました。結果として、人と仕事の機会のマッチングにより、社員ないしはグループ全体の成長に貢献することができました。


今回のカタリストで、2回目の社内起業となりますが、根底にある想いは同じです。

ビッグデータを持つ大企業がデータを抱え込み、自社の成長のためだけに使うのではなく、適法な範囲でデータを開放し、シェアすることで「個人の生き方」「企業の意思決定」「社会の持続性」を支援したいと考えています。


初めて横山さんとお会いしたときにも、ビッグデータが開放されている時代がくる、という話でアツくなりましたね。


横山:

正直に言うと、外部から見るとCCCグループは、「データを囲っている」という印象がとても強かったので、髙橋さんからカタリストで実現しようとしている「データシェアリング」の思想を伺い、しかも本気でやろうとしていることに衝撃を受けましたし、とてもワクワクしました。


フライウィールが考える「データの価値」とは何かというと、データを通じてどのように「事業にインパクトを出せるか」ということです。


そのために必要なデータを1社の中だけで利活用していても、企業としての成長が止まってしまうし、もはやそんな時代でもありません。


データを開放して、みんなで産業を創っていく。これが重要なポイントだと考えています。


■データを活用して解決したい課題。その焦点を明確に。


髙橋:

世界的に見てもデータのオープン化の潮流は感じられますか?


横山:

世界的なトレンドとしては、やはり局所的にデータが集まるということは成長を鈍化させる可能性がある、という観点は出てきています。


髙橋:

一方で、データをオープン化し、なるべく多くの企業に使ってもらうという発想で踏み出している企業は少ないのでしょうか?


横山:

「取り組みたい」と言ってはいますが、ほとんどの企業で実現できていないのが現状です。

ひとつはプライバシーポリシーの問題がありますが、私がより課題と感じているのはデータを使って自分たちの既存事業や新規事業でどのようにマネタイズするのか、が固まっていない企業が多いことです。


髙橋:

確かに、多くの企業は「とりあえずAIを使ってデータを回してみよう」など、AIを使うことがゴールになってしまっている企業が多いという印象はありますね。


横山:

AIありきで考えるのではなく、事業の価値を高めるために本質的に何をやるべきなのか、産業構造における課題のどのポイントを改善すれば全体が成長するのか、という焦点が明確であることが重要です。


なので、いまカタリストとともに取り組んでいる「出版業界における返本率」は産業構造としての課題が明確なので、その改善に向けて突き進むことができています。


年間約9000億円にものぼる返本を削減することは、SDGsの観点でも社会的価値があると思います。


髙橋:

その課題解決に向けて、現在出版業界におけるキーワードは「需要予測」ですね。

これをAIでやる、となると「AIの判断って本当に正しいの?」という疑念の声が多く聞こえてきます。AIを擬人化して捉えてしまうことにも問題はあるような気がしますが(笑)


横山:

たしかにそうですね(笑)。

AIは万能の神ではないですし、「需要予測」はAIを導入すればすべてを解決してくれるという感覚もありません。

返本率が高くなる明確な要因は“ダブり発注”など、発注における課題です。バラバラになったデータを統合し、”ダブリ発注の改善”や”発注ロジックの高度化”を実現することで、間違いなく返本率は下がります。そのために、書誌データや販売データ、在庫データなどバラバラに存在するデータをつなぎ合わせることでより精度高く、効率的な発注をするための指標を作り、AIも活用して人間の判断をサポートするものが、フライウィールとして取り組んでいることです。


髙橋:

最後は人間の判断、というのが大事ですよね。

需要予測については、主に出版業界のステークホルダーに対して、「返本率削減」にフォーカスして引き続き取り組んでいきましょう。


■データやテクノロジーの進化が、未来の興味関心ごとを教えてくれる

髙橋:

一方で、生活者に「オープンデータ」がもたらす未来は、どのように考えていらっしゃいますか?


横山:

やはり大きいのは、自分自身ですら、興味があると気が付いていないような未来の興味関心ごとに出会える、発見できる可能性があることではないでしょうか。


その点では、これまでCCCグループが強みとしてきたカルチャ―や新しいライフスタイルの提案に加えて、データを使って、人間では測り切れない可能性や選択肢を提案できるようになると思いますし、CCCグループの提案力をデータドリブンに補足できると思います。


髙橋:

同感です。

自分がすでに分かっている範囲のことをオススメされたり、提案されても驚きはないですし、自分の範囲内の情報網から得られる情報は限定的です。


しかし、データやテクノロジーの進化によって、自分が一生かけても知りえなかったことが提示され、スッと寄り添ってくれるようになるはずです。


それに、情報化社会の現代において、世の中の情報に埋もれてしまう、マイノリティな領域がたくさんあります。これだけネットが発達していても、マイノリティ領域の情報は、本当に必要としている人に情報が届きづらい。


そういった領域にもデータとテクノロジーの力で光をあてることで、情報の偏在をなくしたい。それがカタリストで実現したい社会ですし、フライウィールの力を借りたいところです。


そして、現在取り組んでいる出版の領域においては、売れる本や、ある程度の部数が発行される本をどう効率よく売るか、という効率面と、自分にとって出会うべき本や、効率的な観点だけでは排除されてしまうような本が、必要な人のところに届くような提案面。

この両方をデータの力で実現したいですね。


横山:

デジタルの技術をリアルの世界にどう生かすのか、繋げられるのか。

これを考え、実践していく時代になりました。

私たちはデータテクノロジーカンパニーとして、カタリストとともに、オープンデータの価値を追求していきたいです。




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