担当者の知見を室内ドア商品に活かしてリニューアル「famitto」発売までの道のり
“YKK APは窓の会社”。そうイメージされている方、正解です。しかし私たちは窓以外にも、エクステリアやインテリアをはじめとした住宅用商品や、カーテンウォールなどのビル用商品を製造・販売しています。
今回はインテリアドアシリーズ(※1)「famitto(ファミット)」のリニューアルについて、商品企画担当の清野と開発担当の小石より、これまで他商品で培ってきたスキルを活かしてリニューアルに取り組んだ軌跡をお話いたします。
※1 インテリアドアシリーズ:室内ドアや引戸などの室内建具のシリーズのこと。
インテリアドアシリーズ「famitto」のスタイリング例
(左)famitto/R 突板タイプ(右)famitto/Gガラスタイプ
”スリム枠”という特長はそのままに、新たな価値提案を
「famitto」リニューアル商品企画担当 清野 真二
意匠性の高い扉と空間に馴染む“スリム枠”を特長とした「famitto」が発売されたのは2017年。当初は好きな壁紙を貼って自由にデザインできるクロスタイプを発売し、翌年にはインテリア空間全体に開放感と上質な表情を与えるガラスタイプを追加しました。
発売当初は社内でも話題になった商品で、期待値も高かったのですが、なかなか販売数には伸び悩んでいました。その背景には、標準的な木質の枠と比較した際、本商品の特長であるスリムなアルミ枠ゆえに施工の難易度が高く、プロユーザーから敬遠されやすいことが一つ挙げられていました。
加えて、インテリアに開放感や光の演出を与え、スタイリッシュな表情をつくるガラスタイプが人気だったのですが、引戸しかないことも原因の一つでした。よりさまざまな間取りに対応した開口部商品が求められるようになり、引戸だけではなく、ドアも商品展開する必要があったのです。「famitto」のスリム枠という特長はそのままに、これまでの課題を克服することができれば、新たな価値を提供できるようになる、そう考えて企画をスタートさせました。
人手不足に対応し、一人でも施工できる商品へ
「famitto」リニューアル商品開発担当 小石 恵
商品開発において、特に苦労したのが、スリム枠を施工しやすくする工夫です。建設業界では人手不足という課題があり、今回のリニューアルでは作業者が一人でも枠施工できるようにすることをテーマとして掲げていました。現場のリアルな声をお取引先にヒアリングした結果を反映した試作品を用いて、YKK APの価値検証センターという施設にて、プロユーザーの皆さんとともに実施工検証を行い、改良を重ねました。
YKK AP価値検証センターでのプロユーザーとの施工検証の様子
プロユーザーとの検証の結果、一人でも大きな開口部の枠を設置しやすいよう、枠を1部材ずつ躯体に取り付ける方法としました。しかしスリム枠ゆえに四方の枠を縦・横・奥行と、三次元的にイメージしながら位置を合わせることが非常に難儀だとプロユーザーからの声が多数挙がりました。
そこで新たに開発したのが縦枠と横枠の接合部がずれないようにするための機構です。開口部が大きければ大きいほど、枠の片側を持つともう一方がたわみ、ずれやすくなるのですが、この機構によって、現場ではそれぞれの枠を素早く正確に、さらに一人で取り付けられるようになりました。
上枠に取り付けられた部品によって、縦枠と横枠の位置がずれにくいように。
現場での一人施工に貢献できる機構です。
ガラスならではの透明感を活かせる特許技術(出願中)
もともと「famitto」にはガラスデザインの引戸タイプがあったのですが、今回のリニューアルにあたり、同じガラスデザインのドアタイプも投入することに。でも、そこにはドアという開閉形態ならではの開発の難しさがありました。
通常、玄関ドアも室内ドアもドア扉側面に付いている三角形状のラッチという機能によって、閉じた状態を保持しています。ハンドルを押し下げたときにラッチが引っ込む仕組みで、見える部分は三角形状の小さなパーツですが、ドア内部では存在感のあるつくりになっています。
しかし、ガラスデザインとなれば、ガラスの透明感が重視されるため、通常のラッチをドア内部に埋め込むことでデザインを阻害してしまいます。そこで考案したのが、マグネットキャッチという特許技術(出願中)です。扉の戸先部材内部にマグネットを仕込むことで、意匠性を損なわずに閉じた状態を保持できるようになりました。
(左)通常の室内ドアに付いているラッチ / (右)マグネットキャッチ
浴室ドア開発の経験を活かして完成したマグネットキャッチ
マグネットキャッチによってガラスのデザインを活かした開閉機構を付与できたのですが、ここでも課題が…。三角形状のラッチだと、物理的に枠と扉を引っかけているため、ハンドルを押し下げない限り、ドアが開閉することはありません。しかしマグネットキャッチの場合、マグネットの吸着力だけで枠と扉を引き合わせているため、吸着力が強すぎると開けにくくなる一方で、弱すぎると、例えば、玄関ドアを開けたときに生じる室内の負圧(※2)にマグネットが負けて、室内ドアが勝手に開いてしまう可能性があります。
負圧によるドアの開閉課題については、以前の浴室出入口商品開発の経験から課題として捉えることができました。浴室ドアでは、換気扇の負圧によって扉が開いてしまう現象が起きないよう、ラッチの設計を行っていました。今回もマグネットキャッチにすることで、同様の事象が起きてしまうのでは…と考えたのです。
そこで、玄関ドアとマグネットキャッチを付けた「famitto」試作品を試験設備に設置し、玄関ドアを開閉する負圧に負けない、最適なラッチ力を探りました。自宅でも玄関ドアを開けた際、どれくらいの負圧が室内ドアにかかるのか、圧力計を使って計測もしました。 そんな試行錯誤を経て、今回の「famitto」リニューアルを実現することができました。
※2 負圧:密閉された室内で、玄関ドアを開けたときなどに、室内側の空気が引っ張られる現象のこと。
玄関ドアを実際に開閉させ「famitto」が負圧によって開いてしまわないか、
試験している様子
インテリア商品開発に携わる者として、心地よい空間づくりに寄与できる商品を作りたいと思い「famitto」の開発を進めてきました。また、住まう人の快適を実現するためには、施工のしやすい商品でもあるべきだと考えています。ドアの開閉力の考察・検証や、プロユーザーの皆さんの意見を取り入れながら邁進してきましたが、そういった意味では住まう人にも施工する人にも価値ある商品にできたと自負しています。これからもそのこだわりを持ち続けた商品開発を進めていきたいです。
<商品情報>
インテリアドアシリーズ「famitto」
https://www.ykkap.co.jp/consumer/products/interior/series/famitto
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