毎年約2万トン以上のコスメが捨てられる時代に私たちができること | COLOR Again開発秘話
昨年より株式会社モーンガータと株式会社エフアイシーシーで共同事業として推進している[COLOR Again]プロジェクトですが、初年度はプロジェクトの大義に共感してくださった企業とのコラボが実現し、少しずつ夢の実現に向けて前進しています。
一方で、プロジェクトの背景にもある化粧品業界の実態が独自調査によって少しずつ判明し、大量生産大量廃棄の実態、鉱物原料の不法労働と原料枯渇、転売促進と肌トラブル問題などアパレル業界と同様それ以上の社会問題が起きていることが見えてきました。今回はプロジェクトの発起人の一人である私田中寿典が、開発の裏側と今後の展開についてお話したいと思います。
(左より株式会社エフアイシーシー 伊藤真愛美、株式会社モーンガータ 田中寿典)
▼COLOR Again立ち上げのきっかけ
私が研究職として勤務していた際、大量のコスメが廃棄されているのを目の当たりにしました。勿体無い精神から、有効利用しつつコスメ本来の色味や光輝感を活かしたままモノやコトへと転化できないか思案した際に、コスメの色材化を思いつき2019年に研究職から独立し、SminkArtを開発しました。
弊社が2021年に独自で行なった5,000人調査で、コスメを使い切れずに捨てるユーザーが86.3%いることが判明。また、後に生産過程などで化粧品メーカーから出る化粧品の中身(バルク)の廃棄量は、国内上位5社だけで年間約2万トンもあることが独自調査から浮き彫りになりました。メーカーや消費者だけでなく、店頭や小売での在庫やテスターも合わせるとさらに膨れ上がり、膨大な量のコスメが毎年廃棄されている計算になります。
そんな中、2020年に発起人である伊藤真愛美さんから一通のメールが届きました。当時、美容商材の担当をしておりコロナ禍で使い切れなかったコスメを廃棄する現実に、一生活者としての罪悪感を感じると共に、捨てるのではなく人々を魅了するアートに変えられないかと漠然と考えていたところ、弊社の記事を見つけ問い合わせをしてくださいました。私が感じてきたことや今抱いている社会の課題感と類似しており、すごく共感できる内容が記載されていました。
伊藤さんからぜひ一緒にプロジェクトを起こそうとオファーがあり、二言で返事をしました。立ち上げをしてすぐに、April Dreamの応募があり、私たちの本格的な活動はApril Dreamと共に始まりました。
▼COLOR Again初年度の研究/活動内容
<コスメ業界とアパレル業界の構造は瓜二つ>
プロジェクトの背景にもある化粧品業界の実態について、流行のサイクルが短いアパレル業界と同様の問題が起きていることが独自調査により判明しました。この問題を1社で解決することは困難であり、業界全体の構造や考えの見直しが必要です。
▼資源の枯渇問題と労働問題
国内の化粧品企業上位5社だけでも毎年約2万トン以上のコスメが廃棄され、さらに個人や店頭などで廃棄される量を加算すると膨大な量となる。また、それら鉱物資源の採掘のために児童労働搾取をしている国もある。一方で、化粧品原料であるセリサイトなどの鉱物資源は良質で安定的に採掘できる鉱山が残り少ないと危惧されている。
▼容器のリサイクルの限界
各化粧品メーカーの企業努力により、コスメの空き容器回収の仕組みが構築されてきているが、その実情は非常に厳しい。コスメ容器は、加飾のために色味が混ぜられ、多種の硬質なプラスチック素材や金属で構成されたものが多く散見される。その素材の複雑性から、回収後の分別や再利用素材への資源化が困難となり、再利用率の低下を招いている。
<外見的な装いよりも内面的な彩りへの着目>
業界の問題を考慮しながらプロジェクトの基盤となる構造段階にエフアイシーシーの皆さんと時間を十分に割き、私たちが心から信じているものが完成しました。特にコスメの存在意義は、コロナ禍だからこそ見つめ直す大きなテーマです。
その中で私たちが出会った答えが、コスメによる外装的な彩りはもちろんですが、その外面的彩り自身がヒトの内面的な彩りや自信をもたらすことこそが本来のコスメの魅力なのではないだろうかという視点です。
コロナ禍でメイクをする機会が減っても、私たちの生活を豊かにするコスメの存在はなくならない。外見ではなく内面にこそ、人の豊かさが現れる。だからこそCOLOR Againは、コスメのアップサイクルに留まらず、一人ひとりの中にある固定観念や画一性よりも、自分にとっての豊かさに出会い、生活に取り入れていくことを軸とした活動を様々な企業や個人の方と共創していくことを目指します。
<COLOR Againに込めた2つの想い>
"ときめきや自信、創造性を刺激する”という本来の使命が全うされず廃棄されるコスメを、色材として生まれ変わらせることで、生活者が表現する手段として本来の使命を果たす。
"COLOR”という言葉を指定色で表現できないように、人も一色ではなく、無限にあるはず。社会によって色あせてしまった色を取り戻す。
公式サイトも先日完成しました。キービジュアルも、全て販売されいたコスメの中身をSminkArtの技術でペイントへと転換し使用。サスペンスガールさんにより制作が手掛けられ、多種多様なコスメの色味でヒトが持っている個性の多様性と可能性を大切にしている世界を表現しました。
▼公式サイト
立ち上げ1年目は、基盤となる仲間や企業を募ることに注力しました。企業としての参画が難しくとも、個人で何かできることがあればと、手を挙げてくださった方々の応援もありました。そんな中、企業として関わって下さった、SHE株式会社の小池様とTUMUGUの小林様には感謝しきれません。2社とはプロジェクトの大義に共感をしていただくことで実現しましたが、心からの信じているものが一緒だとこんなにも素晴らしい企画が生まれることを実感しました。
▼コスメに宿る可能性と人への影響
私は、化粧品企業の研究職として従事する中、あらゆる経験を経て、「シンプル化してから大事な要素を足す」という考え方が何をする上でも大事であるということに行きつきました。一見何でもない簡単な事柄に思えますが、実践しようと思うと非常に難しいことです。この考え方は、使い切れないコスメの存在にも反映されており、「コスメをコスメとしてではない別の方法で楽しみながら消費できる仕組みを作りたい」という、SminkArtの理念にもつながっています。
SminkArtによるコスメのアップサイクルにとどまらず、内面的彩りにも言及したCOLOR Againプロジェクトをエフアイシーシーと立ち上げたことで、機能だけでなく大義に沿った可能性や化粧品業界以外と協働できるアイデアも見出せ、弊社としても提供の幅を広げられると強く実感しています。
とはいえ、最初は美容に関連する企業かつ大義に共感してくださる企業との取り組みをしたい想いがあり、エフアイシーシーからご紹介いただいたSHE株式会社と一緒に、それぞれの想いや資源を掛け合わせた企画を考えました。しかし、アートに馴染みのない中で何を描こうか悩む人、絵に対する得手不得手を自分の中で決めてしまい躊躇してしまう人が多いのではないか、それらを払拭する1ステップが重要だと皆気づいていたのです。
(左より株式会社エフアイシーシー 伊藤真愛美、SHE株式会社 小池彩加、株式会社モーンガータ 田中寿典)
そこで、サウンドバスという特殊な楽器を奏でながら瞑想し、自己内省する時間を過ごした後にSminkArtを用いてコスメから絵の具へとアップサイクルし、絵として表現するという案で満場一致となり、イベントを実施しました。体験後のアンケートでは、「何かを成し遂げようとするときに、思い入れが強いあまり肩肘を張ってしまうことが多いのですが、頑張る自分を抱きしめてあげたい気持ちになりました。」また、「自身のコスメと違った形で再会し、沢山のコスメの色に触れることで心がときめき、豊かになると思いました。」など多くの反響を頂戴し、参加者の想いに私自身感動が溢れる1日となりました。
(1枚目サウンドセラピストHIKO KONAMIさん、2枚目イベントの様子)
自身と向き合い、自分が愛着を持って使用していたコスメで自己表現することは、コスメの消費に対する課題感をもたらすだけでなく、ありのままの自分を見つめ、愛し、画一性に囚われない価値観を育んでいくことに繋がるのではないでしょうか。ここでもまた、複雑に自身に絡みついていた糸をほどき、自分の中の大切な数本を見出して紡いでいくように、「シンプル化してから大事な要素を足す」ことが大事であると感じています。
矛盾した気持ちを抱え生きる苦しみを知っている人が、俯瞰的な目線を持ちながら、自分に素直な気持ちや考えを持つことができたとき、そしてそういった人が増えたとき、もっともっとこの世界は、多様性や差異性を認知し尊重し合える、彩りのある世界になるとCOLOR Againは強く信じています。
▼COLOR Againの今後の展開
何気なく過ごすうちにおざなりになっていた自分の気持ちや、世の中の縛りや画一性などに辟易としつつも気付かないふりをしてやり過ごしてきた自分の本音と向き合うこと。そして、自分が最後まで使い切れていないモノを無駄のない形で活用し、自己表現するための手段へと落とし込むこと。この両者をうまく融合することで、カタチあるものとないもの、つまり物理的なことと精神的なことの両面で価値観をアップデートすることができるのではないかと感じています。
消費社会に寄り添いながらもサステナブルな社会を目指さなければならない、次の時代への遷移期にある現在、消費者の消費への意識だけでなく、これまでの画一性や常識に囚われない心を醸成していくきっかけ作りもまた、今後の世界においては重要になってくるとCOLOR Againとして考えています。
<具体的な今後の展開>
化粧品企業との取り組みはもちろん、美大生やアーティストとの制作にも力を入れていきます。また、コスメのアップサイクル を拡張する技術テストも進行しており、例えばコスメのインキ化や本格的な塗装が可能となれば、空間の演出としてコスメが活用される未来が現実的なものとなります。
コスメの中身は染色や火を使う加工以外には、色材として可能性を秘めており、私達も想像していない未来が待っているかもしれません。ぜひアイデアをお持ちの方はご連絡ください。
▼お問い合わせ
こちらのフォームよりお問い合わせください。後日担当者よりご連絡いたします。
https://color-again.com/contact/
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