クラファン達成率は2000%超!輸入業の素人が、国際詐欺を乗り越え老舗のイタリア高級バターを販売するまで
「創業資金で借りた500万円を一瞬で400万溶かしました。国際詐欺でしたね」。
そう語るのは、バターの輸入業を行う株式会社テイゲンの石川 昇さん。創業3年目となる同社の主力商品は、イタリア最古の乳製品企業BRAZZALE(ブラッツァーレ)が手掛けるプレミアムバター「SUPERIORE Fratelli Brazzale」。ひとつ3500円する高級バターだが、クラウドファンディングで2000%超の調達を達成するなど、大きな注目を集めている。そんな同社だが、販売に至るまでには紆余曲折があった。その創業ストーリーを、石川さん本人が語る。
"バター人生"の始まりは、たまたま旅行していたモンゴル
バターはたまたまだったんです。いま33歳なのですが、30歳で会社を辞めて3年間はなんでもやってみる期間として、産業廃棄物の会社を手伝ったり、保育園の園長先生をやったりと、いろいろなことをしていました。ある時、たまたまモンゴル旅行をしているなかで、とても美味しいバターが安価で売られていることを知ったんです。
関税という点で、海外バターを輸入すると価格がとても高くなることは知っていましたが、モンゴルのような物価の安い国から輸入することができたら、おいしいバターを安く提供できるのではないかと考えました。それに、モンゴルの国土は日本の4倍ほどなのですが、人口は300万人しかおらず、対して牛が1000万頭ほどいて、これはかなりポテンシャルがあるのではないかと。
それでツアー会社を通じてモンゴルの乳製品会社にコンタクトを取りました。フリーランスだったので、個人のままでは交渉の席にも上がれないと思い、急いで会社を作りました。それがテイゲンですね。モンゴル側の感触はよく、「ぜひ日本へ拡げてもらいたい」と交渉が進み、当時は勢いでしたがここから私のバター人生が始まりました。
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関税、コロナ、国際詐欺...次々ぶちあたる壁
会社員時代は人材会社に勤めていたので、輸入業については全くの素人でした。あらためて輸入するための関税などを調べたのですが…驚きましたね。あまりにも関税が高く、どうあがいても厳しい未来しか見えませんでした。とはいえ、せっかくのご縁だからやってみようと思ったんです。それで取引を進めていたのですが、コロナが流行ってしまい、飛行機が飛ばないという事態になってストップしてしまったんです。
いきなり壁に衝突してしまったのですが、もう心はバター屋だったので、バターの輸入という事業の軸は変えず、世界中のバターについて調べ始めました。それでブランド力のある高級バターに目をつけました。日本ではあまり馴染みのない高級バターですが、バターの消費量が世界一のフランスでは数多くの製品が販売されています。スーパーを訪れてみると、クラフトビールのように、職人の手作りバターという形でいろいろなバターが売られているんです。日本人が知らないバターが世界にはたくさんあるんですね。そういった高級バターであれば、高い値段で販売することができるので、関税の問題はクリアできると踏みました。
それで良さそうなバターを見つけてサンプルの手配していたのですが、その過程で、創業資金で借りた500万円を、一瞬で400万円溶かしてしまったんです。国際詐欺でしたね。南アフリカの会社なのですが、「サンプルが通関で引っかかったからお金を立て替えてほしい」と言われ、約10万円を何回かに分けて振り込みました。時期にスウェーデンの会社からも同じようなことを言われ、輸入に関しては素人だったので、そんなものなのかと思い、言われるがままに振り込んでしまい…それがいつのまにか400万円に膨れ上がってしまいました。もう過呼吸になりましたね。ですがこれでやめたら、400万円をドブに捨てることになるし、400万円くらいじゃまだ死ねないな、と。
模索する中でたどり着いたのが、イタリアの乳製品企業BRAZZALEが手掛けるバター「SUPERIORE Fratelli Brazzale」でした。創業230年を超えるイタリアの老舗で、フランスの乳製品コンテンストにも入賞しているプレミアムバターです。バターのミルク感やコクが素晴らしいのに、くどくなくて、本当においしい。バターについて詳しくない人でも、間違いなくこれはおいしいと感じると思います。ついに出会えたと思ったのですが、はじめは契約することが叶わなかったんです。
BRAZZALEとコンタクトを取ることはできたのですが、輸入実績もなければ、調べても出てこない謎の会社と取引をしてもらえるわけがないですよね。それなら予約注文ならどうかと提案しました。お客さんを確保した状態で取引をするのであればOKと返事をいただき、それでクラウドファウンディングをはじめました。反響は予想以上でした。目標金額の30万円に対し、670万円ほど集まったんです。毎朝支援の通知が来て、興奮がおさまりませんでしたね。特に広告的な施策を打ったわけでもなく、本当に、高級バターの情報と会社のストーリーを掲載しただけだったので、口コミ的に拡がったんだと思います。美味しいものを一度試したいと思うグルメ層に刺さったような形ですね。
BRAZZALEもその結果には驚いて、「すごいですね!」ということで約1年間の取引を行う契約を結ぶことができたんです。実際に購入してくれたお客さんからも、ありがたいことに、「人生で一番おいしいバターでした」「贅沢に高級食パンと楽しみます」などとメッセージをいただき、反応も上々でした。ひとつ実績が作れたので、以前断られたところとも取引がスタートしたり、ようやくバターの輸入業をやっていますと言えるようになりました。
ただ、輸入業の素人がいきなり4000個ものバターを扱うとなるとかなり大変でした。まず倉庫の問題。冷凍倉庫を借りたくても、実績もないので断られることが当たり前で、足元を見られて高い金額を提示されることもありました。それにコロナ禍でECの需要が伸びて、そもそも倉庫の空きがないなど、販売にいたるまではしんどいことも多かったですね。ただ詐欺に比べたら、心情的には大分楽でした(笑)。私自身、ある意味ゲーム感覚なところはあって。達成や実現した瞬間が好きなので、そのためならどんなにしんどくても結構受け入れられちゃう部分はあるんです。サウナ的な感覚ですね(笑)。モンゴルでの失敗から約半年で、イタリアの老舗大手と契約を結ぶことができたことは、いい仕事ができたなという達成感がありました。
「SUPERIORE Fratelli Brazzale」は、私たちが立ち上げたバター専門のネットショップ「CRAZY BUTTER LOVER」で購入することができます。ほかにも、私自身が心の底からおすすめできる商品しか取り扱っていないので、ぜひ皆さんにおいしいバターを楽しんでほしいですね。
世界中からまだ見ぬいいものを、日本に拡げていく
次に目をつけているのはヴィーガンバターです。アメリカにあるバターのスタートアップが取り扱っている製品で、ちゃんとバターの味がするのですが、乳製品ではないんです。植物性の油脂の塊で、もともと同じような製品がヨーロッパにあったのですが、とても不味かったんです。でも今回、コンタクトを取ったヴィーガンバターは本当においしくて。これは絶対に取り扱いたいと思っています。円安の影響でスタートのタイミングは見計らっているんですけど、きっとバターの概念を変える新しいバター、いわばバター2.0として受け入れられるのではないかと思っています。
ちなみに最初にお話したモンゴルのバターですが、実はコロナが少し落ち着いてから、輸入して販売することができたんです。ただ、品質的な問題などがあって、結局ストップしてしまいました。ですが、取引していた会社だけでなく、モンゴルの他の会社からもいろいろな提案をいただけるようになって。ヤギのチーズはどうか、犬用の商品はどうか、など。自分の人生にモンゴルというパイプができたことは大きかったです。いずれはバターだけでなく、世界中からまだ見ぬいいものを仕入れて、日本に拡げていけたらと思っています。
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