出荷製品の「梱包レス」に果敢に取り組むデジアイズ。 グループの理念「新しい常識の創造」を目指し、資源ごみゼロへ挑戦し続けています
寺岡精工の部品加工・組立工場として1944年にスタートしたデジアイズは、1972年に独立し、現在、岩手県奥州市にて研究開発と設計機能を備えたTERAOKAグループ最大の生産拠点として、国内をはじめ世界36か国に製品を送り出しています。2020年には包装機、POSレジなど、製造・出荷した製品は約200種類、台数にして延べ3万2400台に上ります。
サステナブルな社会づくりのため、岩手工場では環境への配慮とイノベーションの推進によって、持続可能な生産体制を確保する仕組みづくりを行っています。
その大きな柱となっているのはゼロ エミッション(排出ゼロ)。Direct Store Delivery(以下DSD:ダイレクト ストア デリバリー)やPallet Delivery(以下PD:パレットデリバリー)による包装材の削減、廃棄物計量管理システム「環境Navi」による分別排出の徹底と分析など、排出ゼロに向けた活動を推進しています。
その一環として2021年から本格的な実施を行っている「梱包レス」について、株式会社デジアイズ執行役員 部長の菊地淳が語ります。
出荷先に残された大量のごみの山
もともと工場のDSD導入は、2005年にまでさかのぼります。それ以来、納品現場での作業短縮とともに梱包材の削減に取り組んできました。2020年9月には資源ごみを減らすことを目的として、新たにPDによる「梱包レス」の試験的導入をスタートしました。
梱包が過剰になりすぎていることへの問題は以前から寺岡精工より聞いていましたが、デジアイズとしては製品の品質保全の観点から梱包レス化には葛藤がありました。通常、納品される製品は段ボールや発泡スチロールに梱包されています。精密機器ですので、製品を確実にお客様に納品するため、輸送での不良が出るたびに梱包が強化され、過剰になってきたという経緯がありました。
その意識が大きく変わったのは、沖縄の老舗スーパーでのレジの入れ替え作業時に出た大量のごみを見たときでした。納品時の作業では、寺岡精工の販売スタッフが現場に立ち合い、製品の開梱、組み立て、設置、ごみの撤去までの一連の業務を行います。この時、私も一緒に立ち会ったことで、現場の問題認識が実感として迫ってきたのです。開梱するだけで作業時間も排出ごみも膨大な量にかさんでいきました。真夏の沖縄での作業は、1日にシャツを10枚近く取り替えるほど過酷なもので、その場で出る資源ごみをお客様に廃棄してもらうことも、スタッフが持ち帰ることも、容易ではありません。一歩外へ出れば大自然の豊かな環境に、こんなにも大量のごみを残していって良いものなのかという疑問が沸き上がりました。こうした経緯から、デジアイズが「梱包レス」というミッションに本格的に挑むことになったのです。
寺岡精工とデジアイズ共同のプロジェクトチーム発足
とはいえ、寺岡精工から梱包レスの話を初めて聞いたときは、開梱時のごみがそこまで大きな問題になっているとは知る由もなく、そんなことが本当にできるのか!?大変なミッションが降ってきた!!というのが、われわれデジアイズの正直な感想でした。製品は守って当たり前、専用発泡剤にはめ込んで、しっかり箱に入れて出荷するというのが基本スタイルでしたので、梱包材なしの裸の状態で、製品を無傷でお客様にお届けするということが現実として可能なのか?という心配と不安が募りました。これまでの概念を根底から覆す、発想の転換が求められました。
両社共同のプロジェクトチームを作り、どういう形の梱包にすればよいか、どのように積み込めばよいか、といったことを議論し、検討を繰り返しました。
私が「梱包レス」と聞いたときに、最初にイメージしたのが、引っ越し業者などが使っている布製の梱包カバーを使って製品を保護することでした。
私どもの製品は大型のものに関してはもともと箱に入れること自体が難しいため、布製の梱包カバーで製品を包み、パレット(カゴ車)に固定するという形で出荷していましたので、それを小型製品に応用できないかという発想です。
本来、プリンターなどの小型製品や部品などは、宅配便で発送をしていましたが、宅配業者は梱包レスの製品は取り扱ってくれません。そこで、工場から大型製品を輸送する際に使っているトラックに一緒に積載できないかということを検討しました。
当初は、ロールボックスという「かご台車」のようなものを使うアイデアがあり、製品の転倒などを防ぐためにどのように固定すれば良いかを検討していきました。しかし、例えば岩手から東京までの宅配便の送料が1,000円で済むところを、かご台車を使うと5,000円かかってしまいます、というのでは注文する側は嬉しくありませんよね。ですので、これまで部品を入れる際に使用していたパーツボックスを活用し、そこに製品を入れ、布製の梱包カバーで固定して、大型製品の輸送トラックに混載するなど、極力輸送費用を抑える形を模索し、今では1台からの注文にも対応できる仕組みを作って稼働させています。
「梱包レス」対応の全製品に輸送テストを実施
しかし、そこまでの道のりも簡単ではありませんでした。製品は岩手工場から各地の営業所へ大型トラックで輸送されますが、トラックの振動で製品が擦れてキズになったり、転倒して破損したりということが起こります。そのためキズにならないような梱包材として設計された箱に入れていたわけです。しかし今回の梱包レスでは、小型製品を箱なしで積載するということですから、倒れたり、キズがついたりということをどうしたら回避できるのか、どのように製品を固定するかということが重要なポイントでした。また倒れないだろうと想定しても、実際運んでみなければわかりませんので、実際の納品とは別に、岩手から現地までの輸送テストを実施しました。現実的にはなかなかスムーズにはいかず、製品にキズがついてしまったり、ひどい場合は破損となってしまいました。たとえば塗装品などにキズがついてしまった場合、製品を回収して再度削り、塗装しなおすということで解決すればよいのですが、樹脂製品などは一度キズがついたり、へこんだりしてしまうと、削りなおすということができませんので廃棄処分となってしまうのです。資源ごみゼロを目指しているのに、逆にごみを出してしまうという本末転倒な事態も実は多くありました。
また輸送テストをクリアしても、実際の納品時にキズがついてしまったということもあります。不良品が届くわけですから、現場ではお客様からお叱りを受けながらも、梱包レスにご理解をいただき、さらなる改善方法を模索しなければなりません。弊社の技術者が何度も試行錯誤を繰り返して、改善を加えていきました。本当に根気のいる作業だったと思います。
梱包レス、ごみレスがもたらす作業効率
現在、弊社で製造している製品は約200種類ありますが、そのうちの約3割が大型製品で60種類ほどあります。これらはもともと梱包せず、裸の状態で出荷します。残りの140種類の製品中、今の時点では約10種類ほど梱包レスに変更しているというのが現状です。
2020年9月からプロジェクトがスタートしていますが、計量値付機DPS-5600という製品は2021年2月までに全出荷台数の13%を梱包レスで出荷しました。割合としては13%程度ですが、梱包材686㎏、CO2排出量換算402㎏の削減を実現しています。また、ラベルプリンターDP-560は全体出荷の3%にも届いていませんが、梱包レスにより、梱包材70㎏、CO2排出量換算52㎏を削減しました。そして2022年4月、これまで梱包レス対象製品の全体出荷量が、3%くらいで推移していたところ、ようやく10%を達成することができました。この10%というのをコンスタントに維持しつつ、さらに梱包レスでの出荷量を増やしていけるようにするのが現在の課題です。
岩手工場内で排出する資源ごみのリサイクル率は100%
デジアイズでは「地球環境の保全」を人類共通の課題と認識し、環境にやさしい、より良い企業活動を行うことに重きを置いています。
2000年にはISO14001(環境マネジメントシステム)認証(登録番号JQA-EM1220)を取得。同年には環境保全委員会を設置し、各課においても環境委員会を設置して、環境保全に取り組んできました。多岐に渡る活動の中でも、資源ごみの削減に注力し、現在では専門業者と協力して100%リサイクルを実現しています。
岩手工場では出荷の梱包レスの取り組みと同時に、仕入先から納品されてくる製品の段ボールごみの量に問題意識を持っていました。そこで廃棄するごみを種類ごとに細かく分別し、資源ごみの量をすべて把握しています。一昨年、年間で発生したリサイクル可能なごみの総量は約170,000㎏。そのうち120,000㎏が段ボールで一番多く、次いで廃プラスチックが27,000㎏でした。これらのごみすべてが段ボールは段ボールに、雑誌はチラシ原紙に、発泡スチロール類は再生原料のペレットに生まれ変わります。
工場内や仕入先との行き来には「通い箱」を活用
発生する資源ごみの中には、工場内で使われるものもあります。たとえば塗装部品を工場内でやり取りする際、以前はハトロン紙で包んでいました。しかし2019年から「通い箱」を推進することで、ハトロン紙の削減と、包む作業工程の削減につながりました。
2020年には21種類の部品で通い箱化を実施し、1100枚のハトロン紙(カット前の原紙)を削減しています。
これを応用したのが、仕入先との製品のやりとりです。われわれが通い箱を提供することに対し、お取引先様がどのような反応をされるか未知数でしたが、梱包せず通い箱に変更することは皆様とても好意的に受け入れてくださいました。弊社でハトロン紙や作業工程の大幅削減ができたのと同様に、お取引先でもコスト削減ができるためです。われわれも納品されたものを開梱して、ごみの仕分けをして、という手間が省けるわけですから、お互いwin-winの関係になれます。作業効率も上がるということで非常に喜ばれていますね。
やはり出荷先にとっても仕入先にとっても、作業が軽減されて良かった!と思っていただくことが嬉しいことですし、それがわれわれにとっても、地球環境にとっても良いことであれば、どんなに難しい側面があってもやっていく価値があると思います。
今後も梱包レスを拡大し、新しい常識に
現在、梱包レスということにチャレンジしているのは、業界内でもまだわれわれ寺岡精工とデジアイズの取り組みが先駆けと自負しています。他社がやっていないことをやるという強みがモチベーションにもなっています。最初は皆、半信半疑でした。世の中がやっていないことをするということには必ず抵抗があります。しかし一つできてしまえば、それが当たり前となっていくので、新しい常識に変わっていくわけです。今では、工場内でも、梱包レス対象製品ではないラインのスタッフから「うちの製品はいつ?」という問いかけも増えてきました。世の中は常に変化しており、その変化に柔軟に対応していけるかどうかが大きな分かれ道で、環境を考えるという視点は、避けては通れない道だと思います。
まだまだ梱包レス化はスタートしたばかりで、紆余曲折、課題も山積していますが、まずは今行っている製品の梱包レスの率を上げていき、さらに対象製品を増やしていくということが次の目標です。
梱包レスというのは、草の根的な活動ですが、社会が脱炭素化へ向かう今、必要な取り組みとであると考えています。実現できればできるほど、資源ごみの削減にもなり、併せて現場の手間が省け、作業効率が上がります。梱包レス化を今後もどんどん展開していくことで、その意識が社内外に浸透していったとき、梱包レスが当たり前であるという新しい常識が創造できるのだと信じています。
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