『英文 詳説世界史 WORLD HISTORY for High School』の出版ストーリー: 日本の世界史教科書が世界で評価される理由とは
高等学校で主に使われている山川出版社の『詳説世界史』は、正確かつ安定した記述に定評があり、地域・時代に偏りのない構成に信頼がおける教科書として、長年多くの学習者に読まれてきました。
2019年8月に刊行された『英文 詳説世界史 WORLD HISTORY for High School』は、『詳説世界史』が大事にしてきた世界史認識を、広く海外の人びとにも知ってもらいたいとの願いから生まれました。本文中に日本語は示していませんが、読みやすく分かりやすい英語を心がけ、教科書と対照しても理解できるような構成にしています。
また、グローバル化がすすみ、日本人が諸外国の人びとと国際情勢や歴史文化について意見を交わす機会が増えている今日、世界史に関わる事項が、英語でどのように表現されるのかを多くの方々に知っていただきたいという思いもありました。皆さんが世界と日本の歩みについて各国の人びとと語り合おうとするとき、本書が最良の手引きとなることを願っています。
『英文 詳説世界史 WORLD HISTORY for High School』
ISBN:978-4-634-64162-4
著者:橋場弦=監修 岸本美緒=監修 小松久男=監修 水島司=監修
刊行:2019年8月
仕様:A5 ・ 464ページ
監修者代表、橋場弦東大教授より
本書は、わが国の高校世界史教科書としてもっとも定評のある、山川出版社の『詳説世界史』を英訳したものです。日本の世界史教科書は、他国と比較しても、自国中心史観に偏らず、各地域・時代にバランスよく目配りした教科書であると評価されてきました。それは戦後、偏狭なナショナリズムを克服しようと努力してきたわが国の世界史教育の成果だと言えます。本書は、そのような日本の世界史認識を、広く海外の人びとにも知ってもらいたいとの願いから生まれました。また、グローバル化がすすむ今日、日本人が諸外国の人びとと国際情勢や歴史文化について意見を交わす機会は、飛躍的に増えています。しかしその際、私たちは世界史に関わる事項が、英語でどのように表現されるのかをまず知らなくてはいけません。本書はこうした場面でも最良の手引きとなることでしょう。みなさんが、世界と日本の歩みについて、各国の人びとと語り合おうとするとき、本書が役立つよう願っています。
監修者代表 東京大学教授 橋場 弦
『英文詳説世界史 WORLD HISTORY for High School』刊行の意義とは
これまでみなさんが学習した日本史と世界史の区分は学習上の便宜的な区分にすぎず、日本史も世界史の歴史の一部です。しかし、日本史と世界史では世界の見方がちがってきます。日本史では、主として日本と直接交流があったり、日本にさまざまな影響を与えてきた、東アジアの諸地域や欧米諸国の動向が取りあげられてきました。つまり、日本という窓からみえる世界を扱ってきたということです。
それに対して世界史では、世界の諸地域の主要な歴史の流れをそれ自体として広くみていきます。なかには、日本とあまり関係がないように思われる地域や時代も登場するでしょう。しかし、そうした地域や時代の歴史も、日本の歴史とどのような違いや共通点があるのか、また、違いや共通点はなぜ生じたのかを知るためには、欠かせないのです。世界史の学習をつうじて、私たちが当然だと思っていた事柄や考えが、地域や時代によってはけっしてそうではないこともわかるでしょうし、日本の歴史の特色もいっそう深く理解できるようになるはずです。
独自の文化的枠組みを持つ地域システムの形成の歴史として古代から中世を理解する
本書の第Ⅰ部・第Ⅱ部では、世界の諸地域間の交流がまだ限られていた古代から中世までの時期が扱われます。この時代に、それぞれの特有の自然環境や地理的条件のもとで、言語や宗教を共通の基盤として、社会・経済制度や生活様式などの独自の文化的枠組みをもつ地域世界が形成されました。こうした文化的枠組みは、地域世界が外部の新しい思想・技術・芸術、政治・経済制度などと接触した場合でも、そこからなにを取り入れるかを選択するフィルターとして機能したり、あるいは受け入れやすくする触媒のような役割をはたしてきました。こうした文化的枠組みも長い間には少しずつ変化しますが、その変化の速度は政治的変動や技術の進展などよりゆっくりとしたものなので、そこからそれぞれ特徴をもった社会が形づくられるのです。
(本書より)
近代以降の地域間の関係性により、地域の文化的枠組みは根底から変化した
近世以降を対象とする第Ⅲ部・第Ⅳ部では、各地域間の人・もの・情報の移動をとおした交流が密度を増し、諸地域世界が多様で複雑なネットワークで結ばれ、それぞれの地域の内部構造も変容をせまられる状況、つまり世界の一体化、それに続くグローバル化の過程を扱います。世界の一体化といっても、それはそれぞれの地域が対等に結ばれるということではありませんでした。とくに19世紀以降では、近代工業や科学技術の圧倒的な力を背景に、世界の一体化を推進した欧米先進国が、世界諸地域間の結びつきを支配・従属関係につくりかえて、地域間格差を強めるようになります。その結果、それまであった各地域社会の人々の生活も根底からゆるがされ、ときには文化的枠組み自体が破壊されることもありました。こうした過程を経て、現在の私たちの世界があるのです。
(本書より)
本書を通じて世界史を学ぶ意義
このように世界史では、世界の諸地域の文化的枠組みがどのように形成され、変化してきたのか、また世界の諸地域の関係が現在のようになったのはなぜか、という大きな問いを掲げながら、諸地域や時代の具体的な展開を学んでいきます。こうした世界史の学習をつうじて、私たちの生きている現代という時代が、前の時代とどのようにちがう特色をもっているのか、を理解できるようになるのです。
本書で最初に設けられている「世界史への扉」では、世界史を学ぶことの大切さ、面白さを知ってもらうための例が紹介されています。
また本書の各部には、冒頭に概観が、終わりにはまとめが設けられています。概観はその部を学習するにあたって、考えてほしい大切な視点や重要なテーマが示されています。まとめは、その部で学習した時代や地域の歴史的な特徴をもう一度確認し、次の部や巻末の主題学習への橋渡しとなるためのものです。
さらに各部の最後には、それまでの学習をふまえて、自分で資料を読んだり、年表などの補助資料をつくるうえで必要な技法と文献・資料の探し方を学び、それを実際に使ってみるための課題を例示した主題学習が設けられています。それらを活用して、各部の理解をいっそう深めてください。
みなさんが、世界の歴史を振り返り、そこに生きた人々の幸せ、喜び、悲しみ、怒りを思い浮かべながら、これから生きていく地球世界での課題を見出し、その解決の手がかりをつかみ、自信をもって未来に踏み出してください。
本書の目次より
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