社会起業家とパンマニアのエンジニアが創業した、パンのフードロス削減通販プラットフォーム「rebake(リベイク)」 〜全国のパン屋さんの10%(約1,100店舗)の登録に至るまで〜
合同会社クアッガは、代表である斉藤がビジネスの糸口を見つけるために、農業系のベンチャー企業で働いている時に出会ったエンジニアの鶴見と2人で、2018年に設立しました。クアッガの事業の柱は、日本最大級のパンの通信販売プラットフォーム「rebake(リベイク)」。パン屋さんで売れ残った、まだ食べられるパン=「ロスパン」を、会員である消費者に予約販売するサービスです。現在、全国のパン屋さん約1100店と約16.4万人の消費者が会員登録しています。(2022年12月末時点)
2023年3月には、「rebake(リベイク)」のロスパン販売によるロス削減量が、700tを突破いたしました。
※左:鶴見和俊、右:斉藤優也
消費者の判断を促すことでフードロスを削減したい
食品ロスとは一般的に、「まだ食べられるにもかかわらず、なんらかの理由で廃棄される食品」のことを指しています。食べ物を捨ててしまうのは、もったいないだけでなく、地球環境にも悪影響を及ぼします。昨今、これからの未来に向けて、食品ロスを減らすためのさまざまな取り組みやサービスが誕生しています。日本の食品ロスは経済の発展とともに増加し、2020年には522万トンが廃棄されたと言われております。フードロスというのは、作り手側ばかりの責任ではなく、購入者側の都合に合わせた結果という部分もあります。我々は、作り手側ばかりに責任をおわせるのではなく、消費者が正しい知識を持ち「もったいない」、「まだ捨てるべきではない」と自ら商品を評価・判断していくこと、そして作り手が胸を張って食を販売できるような仕組みを、整えていくことが必要だと考えています。
社会起業家とエンジニアの2名で、合同会社クアッガを創業
2018年創業した合同会社クアッガの代表を務める斉藤優也と鶴見和俊の2人は、前職である農業ベンチャーで出会いました。実家が農家、大学院で農業を研究した後に入社した斉藤と、制作会社のエンジニアから転職してきた鶴見。まったく違う経歴、そして一回りほど年齢も違う彼らは、入社時期が近かったこともあり、よく2人で飲みにいくなど一緒に居る時間は長かったものの、その時は特に起業の話をすることはありませんでした。
鶴見は当時の彼女(現在の奥さん)の影響で、全国各地のパンを食べ歩くほどパンにハマっていました。もともとハマり症である鶴見は、これまでもいろんなモノにハマってきました。同様にパンにものめり込み、初めてのパン屋ではお店のパンを全種類購入したり、パンを食べるために全国各地に行くほどのパンマニアになっていました。今でも家の冷凍庫は、全国各地のパンでいっぱいです。鶴見より先にパンにハマっていた奥さんは、当時から沖縄の友人に東京の美味しいパン屋さんのパンを冷凍して送ったり、逆に沖縄のパンを冷凍で送ってもらったりしていました。それを見ていた鶴見は、なんとなくパンのビジネスができないかと考え始めます。訪問したパン屋さんのレポートをブログに書き溜め、パン好きな方が集まるメディアを作るなどしていました。しかし、ブログを書くという作業も手間と時間がかかります。本業の傍で継続する難しさもありました。そして子供ができたタイミングで会社をやめる決意をしました。
同じ頃、斉藤も起業を決意しており、お互いそんな話をする中で一緒に創業することになりました。全く経路の違う2人が、それぞれの強みを活かし事業化したのが、2018年10月に公開した、パンのフードロス削減通販プラットフォーム「rebake(リベイク)」です。
※最初の事務所は家賃3万円の6畳のアパートでした
「美味しいパンを気軽に買える世界を作りたい」
パン屋さんは飲食店とは違い、どのお店もパン1つあたりの単価はさほど変わりません。また巨大チェーンよりも、個店の力が強いところが魅力です。パンにハマり、パン好きな方と触れ合う中で、パンが好きな方の「パンに対する愛の強さ」が、他の食べ物と比較しても高いことを感じていました。日本では2014年以降、1世帯当たりの支出額に関して、パンが米を上回り続けています。これからもパン好きな人は増えてくるだろう。そう予測し、そんな人たちが美味しいパンを気軽に買える世界にしたいと思いました。
「作ったパンを捨てるのが忍びない」という職人気質に注目
rebakeを事業化する前に、パン屋さんへのヒアリングも実施しました。パン屋さんは、閉店間際まで商品を置いておく文化がある一方で、職人気質が強く、作ったものを捨てるのが忍びないと考える人が多くいました。規模が大きい店ほどロス率が高くなる傾向(10%ほど)があったり、個人店の中には、売り切れたら営業時間内でも早く閉店し、ロスを出さないように工夫するお店もありました。
また世の中では、2015年9月の国連サミットで、全会一致で採択されたSDGs (持続可能な開発目標)に関する報道が急激に増加しました。資源に関わる食品ロスの削減、食品リサイクルの推進は、環境省と農林水産省も力を入れており、後に食品ロス削減推進法が公布されるなど、社会的関心も益々高まっています。そんな社会的背景の中、rebakeは2018年10月にスタートしました。
パンのフードロス削減通販プラットフォーム「rebake(リベイク)」
rebakeは、日本最大級のパンの通信販売プラットフォームであり、「パンの廃棄削減によるフードロスの減少、持続可能な社会の実現」を目的に運営しています。パンの廃棄を減らすべく、廃棄になってしまいそうな“ロスパン”を積極的に扱っており、ユーザーは、日本全国のこだわりのパンを自宅で楽しめ、かつフードロスという社会問題の解決にも貢献でき、パン屋さんは、廃棄による心理的負荷を減らし、美味しいと言ってもらえる幸せと、売上を増やすことができます。
ロスパンは予約制で販売しています。売れ残りが発生次第、先着順に届けられる仕組みです。人気店になると、100人待ちを超えることも珍しくありません。登録店舗は4年間で1000店を超え、売り上げが2割もアップしたお店も出てきました。メディアにも定期的に取り上げて頂き、Yahoo!ニュースに掲載された際は、会員登録希望者が殺到してしまい、掲載しているパン屋さんの数がまだ少なかったこともあり、会員登録を約2年間に渡り制限(最大20万人待ち)してしまうほどの反響がありました。
受託開発から脱却し、路上販売からマーケティングを繰り返した
もちろん、最初から全てがうまくいっていたわけではありません。創業して1年半ほどは、本業ではないシステムの受託開発で資金繰りをしていたこともあります。斉藤が様々な会合へ参加するなどして顧客を開拓し、鶴見がシステムを作るという繰り返し。しかし納期がきつい案件などをこなしていくうちに、本業に割く時間がどんどん少なくなっていることに気づきました。「こんなことをやりたかったんじゃない」、2人はシステム開発をやめ、本業であるrebakeにコミットすることを決断しました。
創業当時は、とにかくいろんなことにチャレンジしました。rebakeの運営をしながら、パンを直接路上で販売したこともありました。目立つように自転車をカスタマイズしたり、毎週同じ時間に同じ場所で販売するなど、様々な工夫をしながら多い日には1日300個も販売していました。購入してくださるお客様の層や、場所・時間による変化など、リアルな現場でのマーケティングにも取り組みました。その間も手持ちの資金は減る一方。やっと私たちの給料が売り上げから出せるようになったのは、rebakeをスタートしてから、約1年半経った頃でした。
共感・賛同する方々が増え、少しづつ売上を増やしていった
サービス開始の初期に登録していただいたパン屋さんは、「ロスを減らす」という私たちのサービスコンセプトに共感していただいた方がほとんどでした。しかし一方で、登録に至らなかったパン屋さんからは「安く売るのは常連のお客様に失礼だ」、「ロスがあるというと、売れてないお店と思われる」といった声がありました。そういったパン屋さんに対しては、ロスを減らすことの重要性や、職人さんがこだわりを持って作ったパンを無駄にしたくないという想いを伝え、徐々に賛同してもらえるようになりました。また世間にフードロスという社会問題が認知されたり、消費者の間でも冷凍パンは美味しいというクチコミが拡がるなど、この事業を評価する方々や、食品ロスの現状について「どうにかしたい」と課題感を持っている方々の参加も増え、現在では毎月コンスタントに全国各地から掲載の依頼がある状態にあります。2022年12月末時点で、日本全国の約10%(約1100店舗)のパン屋さんが、rebakeに登録して頂いております。
rebakeのこだわり
rebakeはパンの通信販売プラットフォームです。そうある以上、パンに特化し美味しいパンをユーザーに届けることは忘れてはいけないと思っています。もちろん、購入することで、フードロス削減に貢献できるという社会的意義がある事業だと自負していますが、それをユーザーに押し付けることはしたくないと思っています。継続して利用いただくためには、大前提に「美味しいパンをお届けすること」が重要だと考えています。パン屋さん側に対しても、安すぎる価格設定にしないようにお願いしています。売れ残ったから安く売るというのではなく、職人さんがこだわって作ったパンの価値を、しっかり打ち出すこともrebakeの役目だと思っています。
日本の食品ロスの1%を削減する企業を目指して
rebakeは現在も順調に成長を続けています。2022年は2019年と比較し、店舗掲載件数が約6.8倍、登録者数も7倍以上と、右肩上がりで推移しております。そしてロスパンの販売による、パン廃棄の削減量は、2023年3月に700トンを突破いたしました。これからも、持続可能な未来を作るサービスとなるよう、またユーザーの方々に愛されるよう一層改善に努めつつ、まずは年間1,200トン(月間100トン以上)のロス削減を目標とし、2028年までには日本の食品ロスの1%(※)を削減する企業を目指します。
※2020年度食品ロス総量:522万トン
”個別最適”の仕組みをつくりたい
rebakeを始めてから、最初の半年の売上げは累計で5万円ほどでした。「社会の役に立たないとしょうがないから、売上を全部寄付しよう!」という思い切った決断をし、半年の売り上げを全額、自然環境を保護する活動をしている団体に寄付しました。このことをきっかけに、創業以来、収益の一部を自然環境を保護する団体に寄付しているのですが、そういう部分への投資は今後もできる限りしていきたいと考えています。
食べ物が最後まで循環して、それによって喜ぶ人が増える世の中にしたい、そのために微力ながら貢献していきたいと思います。斉藤は、小さな範囲でも小さな問題を解決できるような「個別最適」の仕組みを作っていきたいと考えています。「パン屋」というジャンルに特化しているrebakeも、今後はパン屋さんやユーザーの方々と協力し、カーボンフットプリントや、地産地消の取り組みなどにも積極的に関わっていきたいと考えています。そして、rebakeに関わってくださっているパン屋さん、消費者の方々、当社のスタッフ、みんなの幸福度を上げていきたい。経済的合理性よりも、誰かが喜ぶことを一番に考えたい。みんなが幸せになれば、最終的には世の中がよくなっていく。そんな仕組みをrebakeを通じて作りたいと考えてます。
持続可能な社会の実現に向けて
rebakeは、エシカルな消費を促進することを目指し、SDGsの各目標の実現に取り組んでいます。ロスになりそうなパンを販売することで国連の持続可能な開発目標(SDGs)の12.3に明記されている”2030年までに食品廃棄物を半減させる”という目標の達成に取り組み、また、目標の13~15に明記されている陸や海の保全に関して、当該の問題に取り組む団体の支援も含め、rebake上で様々な活動を行い取り組んでいきたいと考えています。
・参考URL:https://rebake.me/blogs/news/12
・サステイナビリティページ:https://rebake.me/sustainability
会社概要
会社名 :合同会社クアッガ
事業内容:パン廃棄の削減サービスrebake、グルテンフリーの定期便、食に関するコンサルティング事業
代表 :斉藤優也、鶴見和俊
所在地 :東京都墨田区八広1-2-10
設立 :2018年8月
URL :https://quagga.life/
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ