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全国の多くの学校で採用が進む「男女共用セパレーツ水着」の開発ストーリー。きっかけは一本の電話から

著者: フットマーク株式会社


学校教育事業部 木村元気(もとき)



フットマーク株式会社は、初代社長の磯部徳三がゴム布製品製造卸として1946年に創業。当初は赤ちゃんのおむつカバーやぞうり袋、リュックサックなどの学童用品を製造していました。1969年にスクール水泳帽子を開発し、全国に展開、1977年にはダッシュ型水泳帽子を発売し、日本の水泳帽子の代名詞と言えるほどのロング・大ヒットとなりました。


1978年に当社として最初のスクール水着を企画製造販売を始めて以来、社員のアイデアとお客様のお声を集め、市場にはなかった商品を次々に開発してきました。


このストーリーでは、2022年度にテスト販売を開始し2023年度に多くの学校で採用が始まった「男女共用セパレーツ水着」の開発の経緯について、学校教育事業部の木村元気(もとき)が振り返ってお伝えします。


当社は、「1/1の視点のものづくり」(※)という考えを大切にしており、お客様1人の声を謙虚に聞き、ものづくりをするという弊社ならではの体制を取り、それが強みであると考えています。今回の商品も、担当者の木村が「1/1の視点のものづくり」をする意志を持っていたことから生まれたものです。ぜひ、一読いただければ幸いです。


※「1/1(いちぶんのいち)の視点」: 何千人のデータからではなく、たった一人の言葉を丁寧に謙虚に聞くことから始まるものづくりの考え。1人困っている人がいれば、その裏には同じような気持ちの人が100人はいるという思いのもと、開発を行う。


「ジェンダー問題で困っている生徒が着ることのできる水着は、ありますか?」 という一本の電話がきっかけ


最初のきっかけは一本のお問い合わせ電話でした。その内容は、「ジェンダー問題で困っている生徒が着ることのできる水着は、ありますか?」 というもの。


当時の私には「男女共用水着」という発想がなかったため、「通常の水着を着てから、上半身はシャインガード(ラッシュガード)を着用していただき、下はサーフパンツを重ね履きして体型を隠してください」とお伝えしました。


その電話を切った時には、何も感じなかったのですが、全く同じ内容の電話を毎年必ず受けるようになり、それは年を追うごとに増えていき、私の考えも変わっていきました。




「同じ問題で困っている子どもたちがたくさんいるのではないか」


電話をかけてきたのは直接の顧客である販売店さんです。そこを通じて私は学校現場の声を聴いていたのでした。


「これは、同じ問題で困っている生徒たちが、自分が考えているよりも沢山いるのではないか」、という思いが年々強くなりました。わざわざメーカーに電話で問い合わせてくれる人がいるということは、電話をかけてくれる人の後ろには、同じく困っている生徒が沢山いるに違いないと考えるようになったのです。


当社には「1/1(いちぶんのいち)の視点」という理念があり、ひとりのお客様の声を大事にして商品開発をしてきました。私が受けた問い合わせ電話の向こうに、まさに1/1(いちぶんのいち)のお客様がいました。私は「男女共用セパレーツ水着」の開発について、会社に提言しました。


しかし、すぐに商品の開発、発売に至ったというわけではありません。


「ジェンダーレス化」など市場の動向を見極め、開発に着手


今までにない商品、今までにないコンセプトを持った商品なので、発売する時期を図っていました。早すぎても、市場に受け入れられません。遅すぎては他社に先を越されてしまいます。私の所属している学校教育事業部は、学生たちが学校で使う商品を扱っていますので、常に学校の動向を見ています。


その中で、近年の学校制服の「ジェンダーレス化」の流れが大きな潮流になってきました。学校現場においてはLGBTQへの理解や関心が高まる中、制服も自由に選べるようになるなど新しい取り組みが始まりました。一方のスクール水着においては、昭和から平成、令和へと男女それぞれ形の変化はあるものの、男女別のデザインが根強く、性差による違いが露わになるようなものが多いのが現状でした。


このタイミングで開発を開始すべきだと部内で判断しました。

受け入れられるかどうか不安な気持ちがある一方で、これまでのスクール水着業界には無かったコンセプトの「男女共用セパレーツ水着」を、自分たちが最初に出したいという気持ちもありました。それはスクール水着を日本一販売しているメーカーとしての一種の使命のようにも感じていました。



2022年よりテスト販売を開始。半数の生徒が「男女共用」を選んだ学校も


2022年よりテスト販売を開始いたしました。テスト販売では、東京都と兵庫県の公立中学校の計3校が、従来の水着と選択できる形で導入、1学年の約半数の生徒が「男女共用」を選んだ学校もありました。2023年度はすでに200校以上の学校が導入を検討しています。「ジェンダーレス対応」や「肌を見せたくない」という声に応えるだけでなく、「肌の疾患が気になる」「手術跡を見せたくない」「日焼けしたくない」など様々な悩みを解決する水着として、幅広く受け入れられる水着として提案しています。


体型を気にせず着用ができ、自分らしく水泳に参加できるデザイン


男女共用セパレーツ水着は、男女の体型に関係なく着用できるよう設計されており、生徒たちは授業や自分らしく過ごすことができます。この水着を使用したジェンダーに関する悩みを抱えた生徒さんが実際問題なく水泳授業を受けられた」というお声を聞いたときは本当に嬉しかったです。



簡単に商品の説明をします。

シルエットは、体型が目立たないようにゆったり目になっています。パンツ部分をサーフパンツ型にしたことにより、ヒップの形が気になる生徒でも安心してプール授業に参加できます。水泳授業で着用するために、フルジップ仕様や空気の抜け穴、撥水加工などの工夫がされています。また、上着の部分にはループが縫い付けられており、上着がめくり上がる不安を解消することができます。


めくれ防止ループ




男女共に身体的な違いが表れる部位(胸、腰、お尻など)はゆったりしたシルエットになるよう素材を変え、パターンを微調整。体型の違いが目立たないデザインにしました。上着は一枚で着て泳げます。またロック機能式のファスナーと引き手部分にはガードを付け、不意に開かない工夫をしています。上下ともに撥水加工を施しているため、濡れても軽く快適な着心地です。


多くの学校で採用が進み、採用校からは高い評価


男女共用セパレーツ水着は、公立中学校を中心に多くの学校で採用が始まり、採用校からは高い評価が得られています。2023年6月現在、300校以上で採用されており(弊社出荷数ベースによる推測含む)、ますます多くの学校で採用されると予想されます。


男女共用セパレーツ水着の採用することにより、水泳授業の参加率をあげられるのではないか?という期待の声も学校からはいただきます。学校水泳はいざというとき命を守ることにもつながるため、もし水着が障壁のひとつであるならば私たちはメーカーなので「モノ(水着)」で解決していきたいです。


「男女共用セパレーツ水着」という名前にした理由

最後に、商品名についてお伝えしたいです。一般的には「ジェンダーレス水着」と呼ばれることも多いのですが、私たちは敢えてその名前にはしませんでした。

もちろん候補にはありましたが、その名前を付けてしまうと逆に手に取りにくくなるのではという懸念もあったからです。


ちなみに「共用」については「共用品」という言葉をヒントにしました。共用品とは障害のあるなし、年齢の高低、言語の違いなどに関わらず、共に使える製品やサービスのことを指します。

男女共用セパレーツ水着にも「より多くの人が使える」水着になってほしいという願いを込めています。


商品概要


品 番:132200

商品名:男女共用セパレーツ水着

価 格(税込小売希望価格)

120cm、130cm、140cm、150cm/6,710円

S、M、L、LL/6,930円

3L、4L/7,150円


サイズ:120cm、130cm、140cm、150cm、S、M、L、LL、3L、4L

カラー:コン

素 材:トップス、インナーパンツ(撥水加工):ナイロン85%、ポリウレタン15%

パンツ(撥水加工):ポリエステル94%、ポリウレタン6%

仕 様

・前面総裏地がついています

・パッドは付いておりません。140cm以上は差し込みタイプのパッドが収納できる仕様です

・上着の裾めくれ防止のためのループが付いています

・セット販売のため上下別々の購入はできません


個人購入先

フットマークオンラインショップ楽天店 https://item.rakuten.co.jp/ukiukiya/132200/

フットマーク直営オンラインショップ https://www.ukiuki.jp/SHOP/132200.html


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2023年4月19日のプレスリリース


付録 フットマークとスクール水着の歴史

1960年代 学校用水着としての市場性がなかった時代

この時代までは、学校用水着としては、浮き輪や熊手、ジョーロ、サンダルなどの海水用品雑貨を作っているメーカーが、カタログの片隅に男子用の水着を載せていました。女子用は、女性向けファッション水着メーカーが、カタログの隅に、海水浴に行く時の子供水着として掲載していました。学校用水着としての市場性はまだなかった時代と言えます。

1978年 フットマーク最初のスクール水着の誕生

フットマークは当時、水泳帽子を主力商品としていました。水着を手掛けるだけの資金力はありませんでした。しかし、お客様を担当している社員から「水泳のメイン商品は水着、水泳帽子は付属品だから水着をやりたい」という声が大きくなり、社長が社員の声に動かされる形で、開発を決断。ただフットマークには水着のノウハウがなかったため、当初は大手商社に生産を依頼していました。こうしてスクール水着の企画製造販売を始めたものの、販売には苦戦。先行する商社が、学生服メーカー、体操着メーカーに販路を持っていて、主導権を持って圧倒的シェアを占めていました。フットマークは、社員のアイデアとお客様の声により、市場にはなかった商品をつくることで対抗しようとしました。


1978年 ダブルトリコット水着

1982年 ネームライン水着発売

ネームラインのアイデアは社内のアイデアが発端でした。水泳帽子に名前を書きたいというご要望が先にあったので、スクール水着にも応用できないかと考えました。社内で生まれたアイデアをカタチにし、お客様に見せたところ、「いいね」と言っていただいたので商品化することにしました。それは他社にはない商品になりました。多くのお客様の声を聴けるようになったフットマークは、独自に開発する商品を増やし、水着市場でのシェアを拡大していきます。


1982年 ネームライン水着

1986年 カタログの表記が「学校水泳用品」→「スクール水着」に変わる

1988年 ツーウェイ水着発売

それまでの水着は少しだぶっとして着るという感覚でした。フットマークはスクール水着については後発でしたが、「スクール水着はぴったりと着るものだ」という触れ込みをしながら営業してゆきます。縦と横に伸びる生地を採用したツーウェイ素材は、その後のスクール水着では主流となりました。


1983年 ツーウェイ水着

1993年 アクアライン水着発売

ユニチカさんの機能素材を独占的に使用できることから、企画が始まります。スイミングクラブで反応が良かったものを学校水泳にも取り入れてみるという発想で、アクアライン水着を発売。アクアラインの切り替えのデザインは他社にはありませんでした。蛍光色を採用し視認性、安全性を一番に追求しました。


1993年 アクアラインスイムスーツ

オールインワン水着の発売

ダイエットやアンチエイジング目的でフィットネスクラブに入会する人たちが増えた時代である2000年に、オールインワン水着が発売されました。動きやすい水着を求める声から生まれたオールインワン水着は、学校水泳授業にもフィットネスの動きがあってもいいのではないかと考えられ、スクール水着のラインアップのひとつとして企画されました。


2000年 スクールフィットネス

上下が分かれた「セパレーツ水着」の発売

2004年、上下が分かれた「セパレーツ水着」を発売。それまで当たり前のように使われていたブルマーが減少傾向にあった時代に、着替えがしやすく、露出控えめで上下サイズが別々に選べるセパレーツ水着は好評を得ました。



すまいるスイムシリーズの発売

2010年には、高機能スクール水着「すまいるスイムシリーズ」を発売。この水着は、撥水生地や紫外線盗撮防止、大人水着のようなパッドなど、他社にはない機能を備えていました。


シャインガードの発売

2004年には、日焼け止め問題を考慮した「シャインガード」が発売されました。その販売枚数は年々増加しています。発売当初は「紫外線対策」が主な理由でしたが、着用の目的は多様化しています。


「男女共用セパレーツ水着」の発売

2023年に本格販売を開始した「男女共用セパレーツ水着」は、上下が分かれたセパレーツ型で、長袖の上着はできるだけ露出を軽減し紫外線対策にも有効です。またボトムスはハーフパンツを採用しており、体のラインが出にくい形状になっています。男女同じ仕様にすることで性別などを気にせず水泳の授業に参加できるよう開発しました。





会社概要

会社名 : フットマーク株式会社

所在地 : 東京都墨田区緑2-7-12

設 立 : 1950年4月28日(創業1946年)

代表者 : 代表取締役社長 三瓶 芳

資本金 : 8,500万円

事業内容: 水泳用品・介護用品・健康スポーツインナーの企画、製造、販売

URL :https://www.footmark.co.jp/




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