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【親族承継でもM&Aでもない従業員への承継の成功事例】 創業40年の東大阪ものづくり企業ユニックス社の”想いのバトン”

著者: フューチャーベンチャーキャピタル株式会社


経営者の高齢化や深刻な後継者不足等は年々深刻になってきます。2025年までに、70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万において後継者が決まっていません。さらに、この127万社の約半数60万社は黒字であり(*1)このままでは、価値ある中小企業の廃業に歯止めがかからず、地域における雇用や技術も失われるおそれがあります。


そこで、フューチャーベンチャーキャピタル株式会社(本社:京都市中京区、代表取締役社長:松本 直人、以下「FVC」)は、全国31都道府県を投資対象地域として『地方創生ファンド』を展開し、地域経済の担い手である価値ある中小企業・小規模事業者の「事業承継支援」の取り組みを進めています。特に、現経営者が後継者として「親族」の次に選びたい「役員・従業員への事業承継」に関する課題「株式買取り資金」などを解決できることが特徴となっています。そこで、『地方創生ファンド』を活用し、自社の役員への事業承継に成功された、東大阪の株式会社ユニックスの事例(*2)をご紹介します。

創業40年のユニックス社、リーマンショック・火災などの困難を乗り越え独自技術を開発

株式会社ユニックスは、1975年に「エジソンの様な発明者になりたい」と、大手家電メーカーから独立し苗村昭夫氏によって創業された、表面塗装処理を営む東大阪にある会社です。独自開発した表面加工技術を強みに国内外に展開し、大阪府より新技術・新製品開発功労賞を受賞しています。


創業40年を超える同社の道のりは平坦ではありませんでした。創業事業が上手くいかず事業転換。それが順調に事業拡大するも、リーマンショックで売上は半減。さらに、その後工場が火事に見舞われます。しかし、苗村氏は火災当日「明日からコーティングするぞ!」と宣言し、翌日仕事を再開しました。当時の話をご息女の苗村朋子氏は「資金繰りが厳しく外注できず、自社加工するしかありませんでした。しかし、それが功を奏し、技術力が上がり利益率も上がりました。『ユニックスはまだまだいける!』と思いました。」と語ります。ピンチをチャンスに変え、それから5年後、2015年頃には無事に火災から再建できました。


このように、幾度もの困難にあいながらも、苗村氏がリードする強い想いと磨かれた技術力によって、表面加工業としてニッチな立ち位置で高い業界シェアを誇るユニックス社でしたが、次の経営課題が浮上してきました。それは、70歳を超える年齢になった苗村氏の後継者問題です。

70歳を超え、従業員みんなが選んだ次期社長町田氏への事業承継がスタート

苗村氏は、親族に事業を承継したい想いはありましたが、それは叶わない状況でした。そこで、白羽の矢が立ったのは同僚から信頼を得て活躍していた営業の町田氏でした。しかし、町田氏は当初「社長になるなんて考えたこともなかった」と語っていました。そこで、苗村氏は、全従業員に「次期社長は誰がいいか」というアンケートをとったのです。その結果、満場一致で町田氏が選ばれ、苗村氏は町田氏に「これだけの想いに応えないといけないのでは?」と背中を押し、町田氏も承諾。ユニックス社の事業承継が本格的にスタートすることになりました。


ユニックス社の事業承継は、代表取締役会長として苗村氏が代表権をもったまま、町田氏が取締役社長に就任し、「社長業とは何か」を座学・実践で学ぶことから始まりました。町田氏は経営者として苗村氏と一緒に動きながら学びを深めていき、3年の学びを経て苗村氏は「代表権を本格的に譲ろう」と考えはじめました。


代表権を現オーナーから後継者に委譲することは、後継者が会社の重要事項を決められる立場になり、独り立ちして会社経営を行うこと。そのためには、後継者が議決権のある株式の3分の2を保有することが重要となります。しかし、株式を後継者が個人で買取るには資金面での負担が大きすぎて、この時点で諦めてしまうケースが多くあります。

ユニックス社も、この「株式の買取資金」について、どう進めていくか困っていました。そんな折に、FVC『地方創生ファンド』のひとつである、「おおさか事業承継・創業支援ファンド」(*3)からファンド活用を提案したのです。


ファンドが提案した株式の承継スキーム

FVCの投資担当者である尾川が感じていた、ユニックスの事業承継のポイントは2つでした。1つは、後継者である町田氏の資金的な負担を軽減しながら、経営権の確保(経営と所有の一致)をどう進めるか、2つめは、譲る側の想いをどう適切に引き継いでもらうかです。この2つのポイントを抑えた、譲る側、引き継ぐ側、両者にとって納得がいく提案を検討することにしました。ユニックス社は、元々苗村氏とそのご家族で議決権100%を保有しており、後継者の町田氏は社長就任時に議決権9.5%を取得しました。そこで、苗村氏やご家族が保有するユニックス社の株式の大半を無議決権株式として同ファンドが買取り、町田氏が保有する株式はそのまま議決権のある株式とすることを提案しました。これによって、町田氏は議決権66.7%を取得でき、且つ、「株式買取り資金」の問題がクリアされるといった内容です。また、ファンドが取得したユニックス社の株式は、事業計画に基づき無理のない範囲で3~5年かけてユニックス社にて段階を追って自社株買いを実施いただくことを提案しました。町田氏個人が株式の承継のために資金を用意する必要なく、経営者として奮闘し会社が順調に利益を積み重ねることに集中できるというプランです。そして、代表権については苗村氏と町田氏の2名代表制を提案しました。金融機関の継続支援においては苗村氏に引き続き代表権を有していただいたほうが良い一方で、後継者教育の観点では町田氏に代表権を付与し経験を積んでいただいたほうが良いと判断したからです。そうすることで、苗村氏が町田氏を補佐しながら後継者教育も可能となります。そして、5年後を目途に、町田氏が代表取締役社長として独り立ちすることを目標としてはどうかと提案したのです。


経営サポートやガバナンス強化も得られる『ファンド』と知り、イメージが覆り1ヶ月程度で投資受け入れ決定

同ファンドは株式の承継手続きをして終わりではありません。町田氏率いる“新”ユニックス社を投資先として、モニタリングしながら、経営支援をしていきます。ファンドは新経営者に伴走し、業績数字や経営状況を確認しながら、必要なサポートやアライアンス先の紹介、時には客観的な視点でのアドバイスも行います。それにより、健全で透明性のある企業経営が可能となり、対外的な信用力も得ることもできます。また、元オーナーも安心して全権を後継者に委譲できます。


従業員への事業承継の様々な課題を解決し、経営サポートや経営の透明性も得られるFVCの地方創生ファンドですが、苗村氏と町田氏は、説明を聞くまでは、「大きな利益を追求される」「意に反した意思決定をさせられる」など、『ファンド』という言葉のイメージはあまりよいものではなかった様です。しかし、上述の内容を聞いて、非常にメリットを感じ、1ヶ月程度で投資受け入れがスピーディーに決定しました。

「夢をもって起業した人ばかり、その夢を成就させる事業承継」

事業承継における重大イベントである株式の承継に続き、代表権の付与が果たされ、2020年10月、町田代表取締役社長による新体制のユニックス社がスタートしました。

町田氏は、「コロナ禍の影響もあり不安が無いとはいえない」と言いつつ、ユニックス社の強みについて問いかけると、「表面加工業としてニッチな立ち位置で、町工場でありながらも業界シェアは高い。色々な業界へ販売を広げていける」と、営業畑の新社長らしいコメントには不安の陰りも感じられません。

苗村氏は、そんな町田氏を見て「社長になる前の町田さんと今の町田さんは全くの別人」だと喜んでいます。


最後に、苗村氏に全国の事業承継に悩む企業の方々へメッセージをいただきました。

「私どものような中小企業は、夢をもって起業した人ばかりだと思います。その夢を成就させるためには、最後は事業承継だと思います。自分もまだ志半ばではあるものの、自分の想いを成就できそうです。その手段がこのファンドでした。しかし、方法はなんでもいいのです。自分の意志を伝え、わかってもらえる方に継いでもらえればいいのです。そして、新しい社長に成功させてもらえば、なお嬉しいことです」と、笑顔と安堵の表情で語ってくれました。


大きな社会問題となっている後継者不足の背景としては、従来多くの中小企業は親族に事業を引き継いでいましたが、近年は4割以下と低迷していることがあげられます。(*4)そこで、親族外から、新たな経営者を迎えての事業承継が解決策としてあげられ、主に、M&Aやバイアウトファンドによる第三者承継について議論されています。一方では、後継者として決めている人材について、親族外で一番多く望まれているのが自社の役員・従業員への事業承継となっています。(*5)長年、自分と共に会社を成長させ、さらに、自らが育ててきた自社の役員・従業員を後継者としたいとする経営者の気持ちは、ごく自然なものと考えられます。



▼株式会社ユニックスの事業承継ストーリー全文はこちら

https://www.fvc.co.jp/service/case.html

「当事者の想いに寄り添った事業承継支援を」             (FVC投資担当者 尾川 充広コメント)

苗村会長や町田社長のお人柄に触れ、会社や事業に対する真摯な想いをお聞きするうちに、ユニックス社の事業承継をお手伝いしたいという気持ちになりました。


ユニックス社は事業承継を行うにあたり、株式譲渡資金だけでなく、事業承継のタイミングについても不安をお持ちでしたが、一度に代表交代をするのではなく、まずは2名代表にして5か年計画で権限委譲を行っていくことで、早期に経営の承継のスタートを切ることが出来ました。


事業承継には、譲る方、譲られる方の様々な想いが交錯しています。地方創生ファンドを通じて、当事者全員の想いに寄り添った事業承継のお手伝いができればと思います。


「全国の優良企業の廃業を減らし、100年つづく継続企業を全国に拡げたい」(FVC代表取締役社長 松本 直人コメント)

創業者の強い想いと行動力により、幾度もの困難な状況を乗り越えてこられたユニックス社の事業承継は、同じようにユニックス社に想いをもつ従業員へバトンタッチできたことで、関係者皆様が安心し、さらなる発展へ向けた新たなスタートがきれたことと思います。しかし、ユニックス社と同じように、自社の大切な従業員個人に大きな資金的な負担を負わせることを避けるために、事業承継が進まなかったり、諦めてしまったりするケースが多くあると想定されます。よって、このような事例が、事業承継に悩む中小企業の経営者、特に、自社の役員や従業員を後継者にしたいと思う方々に届くことで、全国の優良企業の廃業が少しでも減らすことができればと考えております。



【株式会社ユニックス 会社概要】

代表取締役社長:代表取締役社長 町田泰久

本社所在地:大阪府東大阪市加納4丁目14番31号

URL:http://www.unics-co.jp/


【フューチャーベンチャーキャピタル株式会社 会社概要】

京都に本社を置く独立系ベンチャーキャピタル。地域のベンチャー企業を支援するための「地方創生ファンド」と事業会社のオープンイノベーションを促進するための「CVCファンド」に取り組んでいます。また、資金を投入するだけでなく、長期的な事業継続に向け、事業育成、人材育成、事業コンサルティングなどの支援を行っています。


代表取締役社長 :松本 直人

本社所在地:京都市中京区烏丸通錦小路上ル手洗水町 659 番地 烏丸中央ビル

証券コード:8462 JASDAQ スタンダード

URL:https://www.fvc.co.jp/


(*1) 経済産業省発表「中小企業・小規模事業者の生産性向上について(2017 年 10 月)」資料より

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/chusho/dai1/siryou1.pdf

(*2):FVC、大阪信用金庫及び大阪信用保証協会と共に設立した「おおさか事業承継・創業支援ファンド」を活用された企業様の事例

(*3) FVC、大阪信用金庫及び大阪信用保証協会と共に設立した「おおさか事業承継・創業支援ファンド」

(*4) 事業引継ポータルサイト 中小機構

https://shoukei.smrj.go.jp/background/

(*5)「事業承継と事業再編・統合の実態に関するアンケート」調査結果について 日本商工会議所

https://www.jcci.or.jp/news/2021/0305151507.html




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