キャンプ用品にも超精密加工を。町工場がコロナによる危機をチャンスに変え、遊べる火吹き棒「SHAKIIIIIN」を開発するまで
株式会社来光工業は、1972年の創業当時から超精密加工にこだわり、日本のモノづくりを支えてきました。1/1000mmの誤差を管理し、航空機・宇宙産業・自動車・工作機械といった超精密が求められる部品加工を得意としています。
当社は2023年4月、運営しているキャンプ用品ブランド「Definitely」から、焚き火やBBQの際に使う火吹き棒である「火遊び棒 SHAKIIIIIN」を発売。日本のモノづくりを超精密な部品加工から支える町工場が、なぜキャンプ用品を作るのか。その開発の裏側に迫ります。
日本のモノづくりを支える町工場にも、危機が訪れる
当社は愛知県春日井市にある、いわゆる町工場。超精密金属加工を生業とし、主に工作機械に使われる生爪と呼ばれる部品を製造しています。自動車・工作機械・飛行機・ロケット等、日本経済の土台となる産業を、1/1000mmの誤差にもこだわる精密加工の技術によって支えてきました。
2020年、世界的に流行した新型コロナウイルスによって、当社にも危機が訪れます。外出自粛が求められる中、営業活動には制限がかかり、仕事量が激減。みるみる仕事量が減っていく中、仕事を確保をしなければという焦りだけが先行しました。かといって営業活動が制限される状況ではできることも少なく、何か新しい策を考える必要に迫られたのです。
キャンプ用品をロケット品質で作ろう
当社代表の玉利の趣味はキャンプ。10年ほど前に玉利が初めてキャンプ用品を購入したとき、購入した商品の雑な作りに驚愕しました。徐々にキャンプ用品を買い揃える中で、「キャンプ道具にも、超精密の概念があってもいいのではないか」と感じることも。
「コロナ禍で仕事がないなら、自分たちで仕事を作るしかない」と考えたとき、玉利が感じてきたキャンプ用品への課題感が活きることとなったのです。そして、キャンプ用品の開発に着手することに。
キャンプ用品の開発にあたって市場を見渡すと、超精密加工を行う同業者はいませんでしたが、それは当然のこと。ロケット部品に求められるほどの精度はキャンプ用品には不要であり、それまでは誰も求めていなかったものです。この事実は、当社のチャレンジを後押しします。「同業がいないならキャンプ用品をロケット品質で作ろう」と意気込み、「キャンプ用品にも超精密加工を」をコンセプトに商品開発に着手しました。
100円ショップでも買える火吹き棒を買ってもらうには
当社にとってキャンプ用品の開発は初めての挑戦であったものの、滑り出しはそこまで苦労しませんでした。玉利は趣味として10年以上キャンプをしており、玉利自身が考えていたキャンプ用品の改善案を商品に落とし込むだけだったためです。
また、デザインが好きだったこともあり、玉利自身の意外な才能にも気づける機会となりました。玉利がデザインした商品は、2021年にグッドデザイン賞、インターナショナルギフトショ―で準大賞を受賞することもできました。
いい流れの中、「火遊び棒 SHAKIIIIIN」の開発に2022年4月に着手。玉利の中では、当初から火吹き棒を作りたいという思いがありました。火吹き棒とは、火種に直接空気を送り込める筒状の棒のこと。既存の火吹き棒の中に、デザインが優れ、多機能かつ遊べる商品が無かったため、開発に挑戦することに。
一般的に、キャンプで使う火吹き棒は100円ショップでも購入できる商品であり、なおかつキャンプに必須な道具ではありません。キャンプ用品ブランドとしての知名度が低い中、1万円以上の価格になるであろう火吹き棒を、どうやって顧客に購入したいと思ってもらうのか。しかもキャンプで必要性が高くない火吹き棒を購入してもらえるのか。今回の商品開発は簡単ではありませんでした。
納得のいく仕上がりを目指し、何度も試作を重ねる
「火遊び棒 SHAKIIIIIN」を開発するにあたり、玉利が火吹き棒に対して抱えていた課題感を元に、商品のコンセプトを次の通りにまとめました。
1.デザインが優れていること
2.火吹き棒で遊べること
3.火吹き棒以外の使い方も出来ること
最も苦労したのは「遊べる」火吹き棒を作ること。「遊べる=容易に伸び縮みする」というアイデアが頭の中にあった一方で、そのアイデアをどのように商品に落とし込むのかが難しかったのです。(写真は開発当時の試作品SHAKIIIIIN)
なぜ「遊べる」に着眼して商品開発したのか
キャンプ用品開発は玉利の趣味が高じて商品展開していますので、開発コンセプトに「カッコイイ」とか「使って楽しい」という事は絶対に必要な事でした。
その上で火吹き棒の開発は「遊べる」をコンセプトに開発着手することになりました。
今より焚火が楽しくなっちゃうアイテムを作ろう!「火遊び棒シャキーン」はそんなバックボーンから開発がスタートしました。
設計は産業機械設計のベテランに依頼する事にした。
「容易に伸び縮みする」構想だけは当初からありましたが、それを商品設計に落とし込むのは極めて難しい設計でした。
・ 伸ばした時には600mm程度の長さ必要
・ 口元から送り込む空気は接続部分から絶対に漏れないこと
・ 一般の方でも簡単に組手容易であること
・ 棒でケトル程度は持ち上げる強度が必要
・ 300g以下で設計すること
当初は自分達で設計にチャレンジしましたが、複雑な部品設計が求められるために、知り合いのベテラン設計者に相談をした。(普段は産業機械の設計をするベテラン設計者である)
細かな設計変更7~8回繰り返しました、特にシャキーンと伸ばして「遊ぶ」時のシャキーンの感じが納得のいく手応えを作るのにとても苦労しました。
幾度もの試作を経て、「火遊び棒 SHAKIIIIIN」が完成。シャキーンと棒を伸ばした時にしっかり固定される性能にたどり着きました。部品接合部分からの空気漏れは一切無く、空気を思いのままに焚火台へ吹きかける事が可能です。
いつもの焚火を「火遊び棒 SHAKIIIIIN」と一緒に過ごすことで、いつもよりちょっと楽しくなる。それが本商品の魅力でもあります。
「超精密」なキャンプ用品を通じて、すばらしい体験を届けたい
初回の予約販売ではお陰様で100本以上のご注文を頂きました。
発売後はお客様からは楽しく商品と一緒に楽しく遊んでいる写真等を頂きます。
子供から大人まで楽しく遊んで頂ける商品をお届けする事ができて、私達もとても満足しています。
一般の方が精密に作られた工業製品を手にすることはまずないと思います、私達はキャンプ用品を通して、モノ作りの楽しさを一人でも多くの方に伝えられればと考えています。
今後も「そうか!その手があったか!」と思ってもらえるような商品開発をして、楽しくキャンプが出来るお手伝いができれば幸いです。
■火遊び棒 SHAKIIIIINについて
価格:14,300円
主な素材:アルミニウム
サイズ:全長342×直径22mm(収納時)、全長600mm(使用時)
重量:220g
カラー:ブラック、シルバー
■発売元ブランド「Definitely Camping Tools」公式HP
https://www.definitely-camp.com/
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