加西市がクラフトビールをふるさと納税の返礼品として決めたわけ。食パンを原料とし、フードロスを抑える「Crust Ale」の誕生秘話と出会いの裏側。
兵庫県の南部に位置する加西市は、2023年6月に新たなふるさと納税の返礼品を発表しました。それは、市内の食パン専門店「Massimo」が企画・開発したクラフトビール「Crust Ale(クラストエール)」です。食パンを原料としてビールを作っており、食品ロスを削減するSDGsへ貢献しながら、焼きたてのパンのような香ばしい香りが特徴となっています。
本ストーリーでは、この取り組みが実現するまでの裏側をお伝えします。
気候と土壌に恵まれ、製造業が発展してきた加西市
加西市は兵庫県の南部、播州平野のほぼ中央に位置します。年間を通じて温暖な気候と広大で肥沃な土壌に恵まれ、農畜産物の生産が盛んな地域です。
約1300年前に編纂された播磨風土記には根日女伝承の舞台である玉丘古墳をはじめ、
ゆかりの地が多数記述されており、播磨の歴史を語るには加西市は外せません。現代ではものづくりのまちとして製造業が盛んになり、地域の産業と経済が発展してきました。
また、加西市には気球の飛行できる素晴らしい環境があり、飛行シーズン(11月~5月)には、全国から多くの気球チームが訪れます。
そのため、「気球の飛ぶまち加西」をテーマにさまざまなまちづくりの取り組みを進めています。
ボクサー時代の原体験がきっかけ
元ボクサーで店長の浅野英樹さんは、現役時代、減量時に「食べたくても食べられない」という苦しい経験をしました。そのため、食べ物は絶対無駄にしたくないという強い思いを持ったと振り返ります。
その思いは、食パン専門店「Massimo」を経営するようになってからも、
売れ残ったものや焼き上がりの形が悪いなどの理由から規格外として廃棄せざるを得ないパンが一定量出てしまう現状にずっと心痛めてきました
これまではイノシシの罠猟や餌として加西市内の猟友会に提供してきましたが、
海外ではパンをビールの材料に使用することでフードロスに取り組んでいることを知り、
浅野さんの知り合いが営む「マイルストーンブルーイング東加古川醸造所」に相談したのが開発のきっかけです。
浅野さんが話を持ち掛けたとき、醸造所の責任者をされていた大西さんの反応は芳しくありませんでした。
「ビールの歴史的には古代エジプトでは製造過程にパンが使われていたという壁画もあるほど関係は深いものの、現代の一般的な製造工程ではパンを使用することはありません。食品ロスをなくしたいという思いには共感するが、乗り越えなければならないハードルの多さなどからパンビールの製造には後ろ向きでした」
と大西さんは当時を振り返ります。
しかしながら、浅野さんが何度も醸造所に足を運び、食品ロスやパンビールに対する考えを訴えられました。その話を聞くうちに浅野さんの素敵な人柄と熱意に心打たれ協力を決意されたそうです。
単に食品ロスを抑えるだけでなく、食パンの風味や個性が味わえるビールを作るために。
通常、食パンを原料としてビールを作ると、ほんのりとした甘みとフルーティな香りが特徴のビールに仕上がります。とても飲みやすい味なのですが、食パンの風味が損なわれてしまいます。廃棄パンをなくしたいというSDGsの取り組みには、多くの皆さんに共感していただけると思いますが、いくら素晴らしい取り組みであっても肝心のビールの味が良くなければ、お客様には満足していただけません。そのため、取り組みのすばらしさに甘えず、ビールそのものの味にこだわりました。
香ばしくビター・焼きたての食パンのような風味がどうやったら出せるか何度も大西さんと浅野さんで試行錯誤を繰り返しました。試行錯誤の結果パンと麦芽の配分と麦芽のブレンドに工夫することでようやく納得の行く風味を作り出すことに成功しました。
返礼品登録へ。
その後、加西市役所から浅野さんへお声掛けすることとなりました。
当時のことを、浅野さんは笑顔で話します。
「加西市役所からふるさと納税の返礼品に登録しませんか?というお話をいただいたときは、二つ返事で引き受けました。
地域に貢献したいという思いはもともと持っていたし、何よりも普段お付き合いさせていただく中で、加西市の職員の皆さんの熱意や誠意を感じていたので、
少しでもチカラになりたいと思ったからです。
今後はこの返礼品を通じて全国に加西市を発信し、地域を盛り上げていきたい」
また、この取り組みを推進した、加西市役所の担当者からも今後に向けたメッセージを話してくれました。
「地域のフードロスを改善させ、資源を循環させることで地域課題解決につなげている事業者が市内にあることを誇りに思います。
何事も挑戦していくには使命感を持つことが必要になってきます。
地域を盛り上げ、住んでいる人々や住んでいた人々が誇りに思えるようなまちにしていくために自治体だけではなく、民間事業者の力を借りて、
まちがチームとして一緒に盛り上げていけるようこれからも頑張ります。」
■開発者
・名称:食パン専門 Massimo(マッシモ)
・住所:兵庫県加西市北条町東高室748番地の3
・店主:浅野英樹さん
※7月31日で閉店していますがクラストエールの返礼品は継続して提供しています
■返礼品の概要(ふるさと納税限定品)
・名 称:クラストエール
・寄附額:1万4千円
・内 容:1セット6本入り(1本あたり330ml)
リンク先
楽天ふるさと納税:https://item.rakuten.co.jp/f282201-kasai/56981259/
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