“祈りを自分らしく” 多様化する時代の中、会津の仏壇・仏具・位牌メーカー、アルテマイスターが厨子に込めた想い。
アルテマイスター株式会社保志は、「豊かな心を創る」という理念を掲げ、供養や祈りという人の「心」の領域に関わる製品・サービスを提供しています。
創業した1900 年の年号は明治でしたが、大正、昭和、平成、令和と時代が移り変わる中で、人々のライフスタイルや住環境なども大きく様変わりしました。自宅での祈りの場がかつての日本と大きく様変わりしている状況を鑑み、2002年に東京・銀座にギャラリー厨子屋を開廊し、「厨子(ずし)」という「大切なものを納める箱」を、現代の祈りのかたちとしてご提案しています。
開廊から20年、多様性を重視する時代の中、厨子をご覧になったお客様から「こういうものを待っていた」「これでいいのよね」といった、これまでの様式とは異なる“自身が望む祈りのかたち”を求める方々が増え、少しずつ広がりをみせています。
暮らしが楽しくなるような自分らしい供養・祈りのかたちがあることを、より多くの方々に知っていただきたいと、webサイトのリニューアルを実施しました。
このストーリーでは、厨子屋開廊の経緯や厨子に込めた想いを、代表がお伝えします。
代表取締役社長 保志康徳
厨子屋 開廊の経緯。創業100年の節目に、新しい祈りのかたちを提案
私たちは1900年創業、福島県会津若松市で仏壇・仏具・位牌を製造するメーカーです。また、全国への卸販売や直営店舗の運営、その他に仏壇リフォームなどのサービス事業も行っています。
近年、単身や夫婦のみ世帯が増加し、都市部で生活する方が増えたことで、生活空間はコンパクトになり、また、ライフスタイルの多様化から日々の過ごし方や時間の使い方なども大きく変化しています。自宅での祈りの場がかつての日本と大きく様変わりしている状況を鑑み、創業100年の節目に、次の100年に向けて、時代に相応しい「新しい祈りのかたち」を目指し、厨子の開発・製造をはじめ、そのアンテナショップとしてギャラリー厨子屋を2002年に開廊しました。
これまで培ってきた仏壇仏具の製造技術を生かしつつ、現代のライフスタイルや価値観に合うデザインにすることで、厨子に大切なものを納め、心の拠り所にしていただき、祈りの新たな概念を提案できると考えたからです。
ギャラリー厨子屋の店内
第一線で活躍するデザイナーや工芸家が提示する「新しい祈りのかたち」をテーマに、年に2~3回企画展を開催しています。それぞれのクリエイターが考える現代の祈りのかたちとした厨子はもちろん、日本各地の陶芸・漆芸作家が創り出す、可愛らしい仏さまや丁寧に作り込まれた仏具などもご覧いただけます。
2023年2月に開催した「6人の祈りのかたち」展
仏壇と比べて小さな厨子。私たちの製品のこだわりとは
大きな仏壇は仏間に安置して使用されることが多いですが、小さな厨子は家族の集まるリビングや、気持ちをゆったりと向けられる静かな寝室など、お使いのシーンは様々です。厨子屋の厨子は、そんな様々なライフスタイルやインテリアに合うよう、主に三つのカテゴリに分けてご案内しています。
【 デザイン厨子 】
第一線のデザイナーによってアップデートされた、今日の住宅や暮らしに調和し、清浄感・神聖感が際立つ、現代感覚溢れるシンプルでモダンな厨子シリーズ。
インテリアデザイナー 内田繁氏デザイン Type E
【 工芸厨子 】
日本特有の工芸の風合いとその美しさを現代の人の心に届けるものとして、確かな工芸家の表現力により創出された趣き深い厨子シリーズ。
木漆工芸家 十時啓悦氏デザイン 棚厨子
【 工房厨子 】
長い歴史の中で残されてきた、ゆるぎない神社仏閣の形に学び、会津の仏壇職人たちの技術から生まれる、祈る心を納めるに適う厨子シリーズ。
白壽(はくじゅ)
「こんなに小さくしてしまって、不謹慎ね」。容易には受け入れてもらえない壁があった
店舗が地下にあることもあり、開廊当初は、開店休業のような状態が続きました。積極的に外へ出て行こうとイベントや催事に出展するものの、見たことも無い製品に、お客様からかけられる言葉は「これは、ペット用か何かですか?」「お仏壇をこんなに小さくしてしまって、不謹慎ね」など、厳しいものでした。
“大切なものを納める箱”というコンセプトよりも、これまでの仏壇のイメージとのギャップが大きく、なかなかお話を聞いていただくには至らなかったことも多くありました。新しい試みに対して風当たりが強いのは世の常ですが、受け入れていただけるには、相当の努力と時間が必要だと実感したものです。
また、厨子を製作する職人たちの士気がなかなか上がらなかったのを覚えています。高い技量とプライドを持って伝統的な仏壇をつくり続けてきた職人たちにとって、デザイナーや工芸家の描く斬新な厨子には得心がいかないことも多々あり、そう簡単には運びませんでした。「なんだかよく分からないものをつくらされているよな」そんな空気が社内にはありました。
ただ、そこは職人、得心がいかなくとも、決して手は抜きませんでした。職人たちの心根には「やらねばなりませぬ」という会津魂が宿っているからです。繰り返し、仕事を重ねるうちに、デザイナーと職人とが少しずつ互いの仕事やこだわりに理解を深め、次第に職人たちにとって「どんなものが来ても、創り上げよう」という挑戦の対象へと変化していきました。
「これなら、入りたいな」。空気を変えたきっかけは、紳士のつぶやき
2007年4月に出展した「東京ビッグサイト ホームファッションフェア」。職人も駆けつけての出展準備の最中、仕立ての良いジャケット姿の社長然とされた紳士が、内田繫氏デザインの厨子の前に腕組みをされてしばらく立って眺めておられました。そして、帰り際に「いいなあ、これだったら俺、入りたいな」とつぶやかれたのです。
「今、良いって言いましたよね!」「聞きました!」そこから、社内の空気もグッと変わりました。自分たちがつくっているものは、誰かに求められ、その人生に寄り添えるものなのだと、自信を深めた出来事でした。
ホームファッションフェア2007
また、ギャラリー店舗運営だけでは集客が難しいため、同時期にwebサイトを開設し、厨子という存在があることをインターネットを通じて発信するようにしました。その後、ギャラリーでの継続的な企画展開催や、外部催事出展を積み重ね、実家の空き家・子供への仏壇継承問題や、インターネット・スマートフォンの普及など、様々な要因が重なり、厨子屋の認知と厨子への共感が少しずつ広がりました。
特に、「祈りのかたち」への世の中の考え方が、世間体や家の宗教宗派に囚われることなく、人や家族の生き方・美意識に適ったものへと少しずつ変わっていったことが、非常に大きいと考えています。
自分らしい供養と祈りのあり方を探していらっしゃるお客様のストーリー
厨子はご家族の逝去をきっかけに、仏壇の代わりとして求める方が多いです。「ここに主人がいるとは思えない。処分してほしい」と、位牌を持ち込んで厨子を購入した奥様もいらっしゃいました。また、「自宅に一人にしておくのが忍びないから、以前と同じように一緒に旅行に行きたい」と、持ち運べる厨子を選んだ旦那様もいらっしゃいます。故人への思いが強いほどこだわりも強くなり、自分らしい供養と祈りのあり方を探していらっしゃいます。
一人ひとりの「心」がとても大切な時代
供養のために厨子を求めるお客様が依然として多いですが、最近は「昔、祖母と同居していて、お仏壇に手を合わせるのが習慣だった。何かしら、手を合わせるものが欲しい」「自分のために、祈りの空間を設けたい」など、弔いとは別のご要望で厨子屋にいらっしゃる方が増えてきました。
近年は特に、震災・災害や長引くコロナ禍、ロシアによるウクライナ侵攻など、社会が不安定となる事象が相次いで発生し、世界の安寧や大切な人の無事を願う「祈り」が見直される時代になっていると強く感じます。
私は、祈りとは「幸せを願うこと」だと考えます。その願いは自分を中心としながらも、自分以外の人々に向ける温かな心であって欲しいと思っています。
また、受け入れ難い現実が目の前に現れた時、その現実を肥やしとして乗り越えていける強さを生む力も、祈りにはあると考えます。
そのためには、ちょっとした工夫や安らぎを取り入れ、丁寧に暮らすことが大切だと思います。日常の中で手を合わせる時間を持ち、おかげさまという気持ちを持って、まわりのために頑張ろうという人が一人でも増えたなら、社会はもっともっと豊かになっていくと信じています。そのきっかけが厨子屋であったなら、これほど嬉しいことはありません。
厨子屋ウェブサイト
厨子屋インスタグラム
https://www.instagram.com/gallery_zushiya/
厨子屋オンラインショップ
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