人口3,000人の北海道の下川町で、「ワクワクする事業で新しい風を」。課題が山積みの小さな町が挑戦者を呼び込むための秘策とは
人口約3,000人の北海道下川町。人口減少の影響による地域課題を数多く抱えながら、挑戦し続けることで何度もまち存続の危機を乗り越えてきた歴史があります。森林づくり、木質バイオマス、SDGsなど、先進的な取り組みが注目されている一方、町の課題はまだまだあります。
課題の根幹となる人口減少を食い止めるため、首都圏等からの移住者誘致を行う実動部隊として「タウンプロモーション推進部」を設立し、新事業創出のために「シモカワベアーズ」という名の起業型地域おこし協力隊を募集しています。
「シモカワベアーズ」は、暮らしや働き方に合わせて制度を増やし、自分も地域もワクワクする事業を求めています。小さなまちで新しい起業の仕組みに挑戦している経緯や想いについてお伝えします。
開拓以来、多くのピンチをチャンスに変えるまち、下川町とは?
北海道北部に位置し、森林に囲まれたまち「下川町」の規模(面積)は、東京23区と同程度で9割が森で占められています。 基幹産業は林業・林産業・農業・酪農です。 3,000人弱という少ない人口の8割が半径1kmの市街地に暮らしており、その範囲に主要な施設やスーパー・飲食店がそろっていて、不便のない暮らしを送ることができます。そんな下川町ですが、迫りくる数々のピンチをチャンスに乗り越えてきた歴史があります。
下川町は1901年に開拓されてからの120年余の間、度重なる危機的状況に陥ってきました。林業、鉱山の恩恵で最大人口15,555人を記録した町は、1980年の国勢調査で人口減少率が道内ワースト1位、全国ワースト4位という危機に陥りました。活気を失った暗い下川町をなんとか盛り上げたいと町民が立ち上がり、まちおこしに注力し始めたのが、すべての始まりです。
町民にとって厳しかった冬の-30℃の寒さ「しばれ」を逆手に取り、1986年には日本で初めて、寒さを利用した「アイスキャンドル」という、氷でつくるランプシェイドを飾る風習をつくり、まちおこしのイベントとして毎年冬まつり「アイスキャンドルミュージアム」で大々的に行うようになりました。
同時期に、旅行で中国に行った行政職員はアイディアが湧き、下川町の農地等から出てきた石を活用し、「ミニ万里長城」を造り上げる手づくり観光資源として石積を始めました。
これらの取り組みをはじめとする様々な知恵と工夫で、大火災や冷害、台風、極めつけは平成の大合併など、たくさんのピンチをチャンスに変えて、下川町は生き残ってきました。
この心意気は「しもかわイズム」として私たちに代々受け継がれ、今では森林のまち、SDGsのまちとして注目を集めるまちづくりをしています。
地域産業の挑戦を応援するタウンプロモーション推進部を設立
とはいえ、下川町は他の過疎地域と同じように、高齢化率の増加、担い手や人材の不足、住宅不足などの地域課題が山積みです。それらの問題の根幹となる、人口減少を食い止めるため、首都圏等からの移住者誘致を行う実動部隊として「タウンプロモーション推進部」を設立したのが2016年のことです。
タウンプロモーション推進部では「総合移住促進」「地域人材バンク」「起業塾」の3つの事業を軸に移住者の呼び込みを実施。その結果、タウンプロモーション推進部が直接関わって移住した人数は部署創設以来160人を超えました。これは下川町の全人口の約5%以上に相当します。
そんな移住者の中には、下川町で新たなチャレンジをする人も多くいます。その理由は下川町の風土にあります。前述の通り下川町の歴史を紐解くと、人口が増えて町に活気が溢れたり、急激に人口が減って衰退の一途を辿ったり。下川町に暮らす町民たちは、町に移住者が増える喜びを、そして人が減っていく悲しみをよく知っています。そのため、移住者に対してもとてもウエルカム。さらには、出る杭を打つのではなく、彼らのチャレンジを楽しみにし、温かく応援してくれるのです。
『シモカワベアーズ』という新しい起業の仕組みが生まれたわけ
移住するためには仕事が必要です。仕事と一言で言っても、企業に就職するか、自分で事業を起こすかのどちらかが主となります。下川町内は就業先も多いけれど、新しい事業を自分で作り出す人も多く見られます。その理由の一つは、下川町が町民や移住者の挑戦を後押しするような支援メニューを積極的に用意してきたことにあります。例えば、新規事業を始めるためのハード面・ソフト面の支援メニュー、住宅の取得・改修に関わる支援メニューなどがあります。これらの支援を受けるための相談などにも乗っています。
さらに、新事業創出のために毎年採用しているのが「シモカワベアーズ」という名の起業型地域おこし協力隊です。彼らの受け入れをタウンプロモーション推進部創設年度から行い、これまで6人の起業家を排出してきました。
「シモカワベアーズ」は、総務省の地域おこし協力隊制度を活用し、自分の「スキ」や地域課題を基軸に新しい事業を下川町で起こすことに特化した仕組み。事業を生み出すために使える活動費は、下川町の場合160万円。活動内容等について少しでも有意義な活動へとつながるように、タウンプロモーション推進部と連携をはかりながら進めていきます。
また、週に1度事業進捗の確認や、3ヶ月に1度の町内外メンターによる壁打ち、半年に1度応援してくれる町民気質を生かした活動報告会の実施等の伴走体制を確立しているので、本来ならば孤独な「起業」という戦いを、伴走メンバーや町民とワンチームとなって乗り越えていくことができます。
このようなカルチャー・支援体制を活用しながら、「下川町を愛し、一緒に盛り上げてくれるビジネスを誘致するにはどのような支援の仕組みが必要なのか?」という問いのもと、起業家の伴走型サポートシステムを構築することに。まだメジャーではなかった地域おこし協力隊制度を活用して2017年に誕生したのが、起業支援プロジェクトの「シモカワベアーズ」です。
コロナ禍によりもたらされた新しい働き方にも対応する進化形の起業の形とは?
「シモカワベアーズ」は毎年テーマを少しずつ変えながら、全国(時には世界!)からメンバーを募集しています。現在募集しているのは、2024年度着任のシモカワベアーズ。
シモカワベアーズの大きな特徴としては、以下の2つから働き方を選べることがあります。
①兼業型地域おこし協力隊
現在の仕事を継続しながら「兼業・複業」として起業し、下川町で事業をつくる枠組みが、“兼業型”。 コロナ禍を経て暮らし方を見つめ直すきっかけとなった3年間。テレワークやフレックスタイムなど、柔軟な働き方が増えました。そこで浮かび上がってくる、自分のやってみたいビジネス。私たちは、柔軟な働き方が可能な時代に合わせ、これまでの仕事を続けたまま、起業ができるような仕組みがあればいいと考えました。ビジネスをおこし、それを生業としていくことはとても大変です。1人が色んな顔や肩書を持って活躍する今、他の仕事もしながら、自分がやってみたいと考え、ワクワクしていたビジネスを下川町で実現するという複業的な働き方をイメージしました。本業で培ってきたスキルや経験を活かしながら、地域にまだ無いビジネスを創出したり、町内との適度な距離感だからこそ見える余白を新しいビジネスや活動を通じて解決したり。「働き方を自分でデザインする。」そんな想いを込めた、理想の暮らしとのいいところ取りで事業をおこす仕組みです。
②専業型地域おこし協力隊
1年~3年間の任期の中に新規事業をおこし、自走できることを目指し活動する協力隊の枠組みです。 「まだ地域には無いけど、あったらいいな」という住民のニーズに応えるプロジェクトや、自分が今まで培ってきたスキルや経験を活かした長年の夢の実現など、持続可能な事業の創出を目指します。挑戦を応援する下川町ならではの起業を計画的に実行できる仕組みです。もちろん「ワクワクするかどうか」という視点もお忘れなく。
起業のジャンルは、環境、教育、食、医療、福祉、エンタメ……なんでもOK。まずは自分が、そして周りがワクワクするか。町全体で楽しみにしている「シモカワベアーズ」の活躍。少しでも心躍ればご応募ください。
お知らせ
シモカワベアーズの募集〆切は以下の通りです。
2023年9月12日
詳細・応募方法
シモカワベアーズHP:https://shimokawa-life.info/shimokawabears/
タノシモHP:https://shimokawa-life.info/
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