にし阿波の「傾斜地農耕システム」に着目。まだまだ知られていない「地元に出会う旅」をコンセプトにしたバスツアーの企画秘話。

2023年7月、突如飛び込んだ久々の明るいニュース。

一般社団法人日本旅行業協会が主催する「ツアーグランプリ2023」で、「国内・訪日旅行部門 SDGs部門 グランプリ」を受賞しました。

株式会社穴吹トラベルは、香川県・高松市に拠点を置く旅行会社です。

多くの旅行会社のご多分に漏れず、2020年以降は私たちも苦しい環境に置かれました。

「ツアーグランプリ2023」で受賞したツアーは、コロナ禍の中、なんとかお客様に旅行を楽しんでいただけないかと試行錯誤を重ね、生まれた企画です。

旅行会社としての私たちの思いが詰まったバスツアー、「世界農業遺産認定『傾斜地農耕システム』から学ぶ持続可能な農業！にし阿波の天空集落 渕名集落」が生み出されたストーリーをお伝えします。

■“なんとか「旅行」を継続したい”コロナ禍の葛藤

遠方・大人数の外出が自粛された当時。

たくさんの旅行好きのお客様が、なかなか出掛けられず寂しい思いで過ごされていたことと思います。

あなぶきトラベルの香川・徳島発バスツアー『穴吹四季の旅』は、旅行好きな地元のお客様から、長年にわたりご愛顧いただいているブランドです。

これまで毎回参加いただいていたお客様も、ご家族やお身体のことを心配してバスツアーへの参加を控えるようになりました。

事業をストップすることも考えましたが、なんとかお客様に継続して「旅行」を提供できる形はないかと、本数や参加人数を抑えながら模索する日々でした。

■世界農業遺産に認定された、傾斜地農耕システム

そんな中、私たちはあるスポットに注目しました。

2018年に世界農業遺産に認定された、徳島県にし阿波地区にある「傾斜地農耕システム」です。

にし阿波の山間部では、段々畑のような水平面ではなく、傾斜地のまま耕す農法が継承されてきました。

地元でもまだまだその価値は知られていませんが、400年以上の歴史があるこのシステムが評価を受けたことは、地元四国にとって名誉あることです。

にし阿波の営業担当者より何度か話を聞いたことがありましたが、大型バスが入っていけない山道だったり、観光スポットとしてのPRが難しかったり、これまでバスツアーの目的地の候補として挙がってくることはありませんでした。

ですが、コロナ禍で他地域への旅行が憚られる今だからこそ、改めて地元を旅し、地元の魅力を再発見するツアーがあってもいいのではないか。

にし阿波の傾斜地農耕システムに、新しい旅行への可能性を見出していました。

■キーワードは「体験」と「学び」

企画担当の長居を中心に、早速現地の下見と具体的な企画をスタートしました。

現地では、にし阿波の地域マネジメントに携わる一般社団法人そらの郷にプロデュースを依頼。

今回の企画は、通常のバスツアーとは違い、少人数でのコンパクトな旅が特徴です。

にし阿波の住民の方にも協力してもらい、実際の集落での暮らしを身近に感じられる内容になるよう、現地の人と一緒に体験したり、会話を楽しむ時間を設けたり、いつもとは一味違うバスツアー企画を作り上げました。

にし阿波での下見の様子

①ガイドが案内する天空の集落『渕名集落』

ガイドが案内する渕名集落の畑や茶畑の見学、茶摘み体験を通して、価値ある伝統農法や集落の暮らしについて学びます。

茶畑

②傾斜地農法で栽培された野菜を味わうランチ

渕名集落の中心にある農家レストラン「風和里」で、傾斜地の農法で栽培された野菜を使用した“世界農業遺産ランチ”の昼食。

徳島県の郷土料理「金時豆入りばら寿司」や摘んだ茶葉を天ぷらにして味わいます。

食後は集落の展望台で渕名茶を淹れ、集落の景観を楽しみます。

”世界農業遺産ランチ”。摘んだ茶葉を天ぷらに。

にし阿波の伝統的な農業システムの一端を体験し、栽培された野菜をその場で味わう。

大自然に囲まれながら、地元の方と一緒にゆっくりと過ごせる時間は、少人数でコンパクトなツアーならではの醍醐味です。

もう1つのテーマとして設定したのはSDGs。

耳にする機会は増えましたが、身近に感じられる場面は、日常生活の中ではそう多くはありません。

「傾斜地農耕システム」は、自然の景観だけでなく、それをとりまく人、文化、食など、あらゆる繋がり・歴史を感じられる貴重な「生きた遺産」であり、まさに持続可能な環境をそのまま体現している場所です。

集落での体験が、SDGsを学ぶきっかけになることを願って、傾斜地農耕システムならではのエコ体験「脱プラスチック！」をプラスしました。

・マイ水筒持参のお客様に、プラスチックやビニール袋を使用しないお茶をご用意

・マイバッグ持参のお客様に、採れたて野菜のお土産プレゼント

こうして、地元四国が舞台の「サステナブル・ツーリズム」バスツアーが誕生しました。

■地元に出会う旅をコンセプトにしたバスツアー

当日ご参加いただいたお客様には、よく知っているはずの、だけどまだまだ知らないことも多い“地元に出会う旅”を楽しんでいただきました。

私たちにとっても、新しい旅行の形を切り開くきっかけとなった本ツアー。

少しずつ旅行のある日常が戻ってくる中、コロナ前と変わらず旅行を楽しみにしてくださるお客様に感謝しながら、今日もまた、ステキな出会いを生み出す旅行をお届けしていきます。

ツアーグランプリ2023受賞のお礼に行きました！

ツアーグランプリ2023受賞記念！「国内・訪日旅行部門　SDGs部門グランプリ」

にし阿波の天空集落 渕名集落

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