自分楽が「内部障がい者」(心臓病・肝臓などの機能障害)の職場復帰支援を開始。障がい者の法定雇用率引き上げ対策に、新しい一石を投じるまでの裏側。
「え!?障がいは、治らないの?大好きな仕事を続けるためにはどうすればいいの?」人生の途中で、突然障がい者になった困惑と、それでも働きたいという意思から生まれた両立支援サービスがあります。
株式会社自分楽(東京都)は、法人向けに、中高年層に的を絞った人材教育コンサルテーション・研修を行ってきました。このストーリーでは、「中途障がいと仕事の両立支援」という、新しいサービスが生まれた経緯について、お伝えします。
それは、代表取締役 﨑山みゆきが、突然「虚血性心疾患」からペースメーカーを埋め込んだ「内部障がい者」になった困惑と、それを乗り越えて仕事に復帰した経験からです。インタビュー形式で、まとめました。
Q:いつごろ、なぜ、障がい者になったのですか?
﨑山:50歳になる少し前に「虚血性心疾患」という中高年に多い心臓病になりました。
『仕事が好きだ、休みたくない』と手術を放置していましたが、50代半ばに、脈拍が28まで低下し、救急搬送となりました。結果として、ペースメーカーを埋め込み身体障がい者一級になったのです。
循環器病予防対策については厚生労働省も本腰を入れ始めています。(※)その背景は、我が国の超高齢社会です。生涯現役時代となった今、企業は、健康経営やSDGsのテーマとして取り組むべきテーマだと思います。皆さんには、私のようになってほしくないですから…。
※第2期循環器病対策推進基本計画 概要より https://www.mhlw.go.jp/content/10905000/001077711.pdf
Q:障がい者になることは、想定していましたか?
崎山:全く、していません。「障がいは、治る。元のように働き、スポーツもできるようになる」と信じていました。障がい手帳を前にしながら、夫が治らないことを教えてくれましたが、感情は何も起こりませんでした。ただ、受け入れることしかできませんでした。当時のことを鮮明に覚えています。
「障がい者は、治るんでしょ?
「治らない、君は一生、障がい者なんだよ」
「え? もう元の私に戻れないの?」
「そう…。」
Q:身体の中の障がいなので、周囲からは全く分かりませんね。
崎山:それが、私たち「内部障がい者」と呼ばれる人の悩みです。身体の内部にある障がいなので、外から見てもわかりません。心臓のほかに、呼吸機能障害、肝臓機能障害などがあります。オストメイトやペースメーカー、人工透析を受けている方というとわかりやすいかもしれません。
疲れやすい、重いものが持てない、電磁波に注意するなどいろいろな不便さがあります。車いすや杖のように、他者から見てもわからないので、配慮していたたくことが難しいのです。
Q:「中途障がい者」「内部障がい者」になって、困ったことは何ですか。
崎山:大きく二つあります。
一つ目は、経済的不安です。「働かなくっちゃ」と。会社を経営していますが、障害を理由に、倒産はしたくない。疲れやすいのでタクシーを使う、料理がができずにお弁当を買う。私は腕が上がらなくなったので、着脱しやすい洋服に、半分以上買い換えました。障がい者には行政から補助があると言われますが、これに関してはさすがに…。
内部障がい者の会「ハートプラスの会」の会報にも書かせていただきましたが、会長から「こういう本音が聞きたかった」とほめていただきました。(本文p3)
https://www.normanet.ne.jp/~h-plus/tuusinsouko/5420211120.pdf
二つ目は、周囲の理解を得ることの難しさです。「内部障がい」というものの認知度が低いので、相手側も何をサポートしてよいのかわからない。「ハートプラスマーク」というものがありますが、認知度は、まだ高くありません。また「中途障がい」の方は、今までできたことができなくなるというショックから、うつ病や引きこもり、自殺をする人が多いと言われています。私は幸いにして、カウンセリングやGerontologyという学問を学んでいたので、障がい者の自分を受け容れることができる方法論を、自分なりに創ることができました。
Q:質問しにくいですが…何か得たことはありますか?
崎山:はい。この経験を通じて得たことが二つあります。
一つ目は、働き続けるための方法論を見出しました。職場と家族の理解を得るための方策です。また、キャリアプランの立て方も、入院中に「復職する障がい者用」を考案しました。
自分で試行しましたが、なかなかうまくできています。キャリアコンサルタントや障がい者の就労相談をしている仲間に見せると、即OKをいただきました。
自分が、働く障がい者のオピニオンリーター―になろうと、内閣府障がい者理解促進事業作文コンクール「心の輪」に応募もしました。佳作をいただきました。
https://jibungaku.com/news/171789/
二つ目は、社会資源の活用方法です。企業の人事や病院などがありますが、それだけでは不十分です。患者会や医療器械の情報収集の仕方なども知っていると、安心して働き、生活することができます。
Q:今までのお話を、貴社のサービスにどう生かしてゆくのですか?
崎山:まずは、啓蒙活動として、研修事業からスタートします。
職場復帰しやすいように「内部障がい」「中途障がい」に対する理解を、企業全体にしていただく必要があります。集合研修・講演・動画配信など、多様な方法があります。
幸いにして、弊社は研修企画を20年間してきたノウハウがあります。どうすれば、未知のことを、自分事としてとらえていただく事ができるかについて、専門的な知見とノウハウがあります。
併せて、職場復帰のためのトータルコンサルティングをします。
Q:今後の展開をお聞かせください。
崎山:三つあります。
一つ目は、リアルな場と、オンラインを活用して、障がいの種類は関係なく「働く仲間」として情報交換・相談しあえる場を創ります。働いている「内部障がい者」「中途障がい者」は、話す場が少ないことがわかりました。患者会は、同じ病気だけの方が集まるので、情報が偏りがちなところが多くなります。障がいの場合、いくつか重複しているケースもあります。壁はない方が良いと思いました。
二つ目は、生活・仕事にあると便利なグッズ紹介・販売と、そのまとめサイトの運営です。私たち内部障がい者の中には、パソコンやスマホでネットサーフィンをしていると疲れてしまうという方もいます。よって、一か所にまとめたい。
例えば、ペースメーカー埋め込み者は、リュックサックが背負えません。ベルトが医療機器をを圧迫して壊れてしまうからです。そこで便利なのが、ナップザック。紐なので、ちょっとずらせば、あたることはありません。ショルダーもいいですね。ちょっとした工夫で、私達、内部障がい者の活動の幅は、広がります。一般の方が見ても楽しめるようなサイトにしたいです。
三つめは、職場復帰後の障がい者に向けた、キャリア開発教育です。私たち内部障がい者は、一般雇用でありながらも、可能な業務が制限される、長時間働くことができないなどの理由から、キャリアパスを奪われてしまうことが多々あります。研修を受けられない、昇格の資格を手に入れにくいなどのチャンスロスを、なくしたいです。中途障がいだからこそ、再チャレンジのチャンスが必要だと感じています。
まだまだ、いろいろとビジネスモデルは出てきそうです。これからは、障がい者の福祉的就労を、自立型就労に変えてゆきたいです。
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