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ストーリーの著者は、読者でもあります

“IT領域の専門性”と“業務への理解”を持ち寄り、質の高いITシステムを目指す―人事・給与システム更改プロジェクト

著者: パーソルホールディングス株式会社

2023年パーソルホールディングス株式会社は『パーソルグループ中期経営計画2026』を策定し、2030年の「はたらいて、笑おう。」実現に向け、「テクノロジードリブンの人材サービス企業」への進化を経営の方向性に定めています。


今回は、パーソルグループ共通の人事・給与システム更改プロジェクトについて、プロジェクトマネージャーを務めた小林、そして人事部門とIT双方の目線でプロジェクトを牽引した梅田に、取り組みの始動背景から推進過程において苦労したこと、得られた成果まで、詳しく話を聞きました。


パーソルホールディングスが運営するWebメディア「TECH DOOR」では、パーソルグループ内で取り組んでいるITプロジェクトを紹介しています。本記事と併せてぜひご覧ください。

EOSL*を「パーソルグループの人事給与システムはどうあるべきか」から見直す機会に

*EOSL:「End Of Service Life」の略。ソフトウェアやハードウェアの製造、販売、サポート等々の製品ライフサイクルの終了を意味する。


――まずはお二人の普段の役割や業務について教えてください。


梅田:私の役割は、人事部門においてITに関連する業務を推進することです。具体的には「人事領域のシステムがどうあるべきか」「人事データをどう活用していくか」といった“人事×IT”の領域をテーマに、企画から施策推進までを行っています。

小林:私はITコンサルタントとして人事領域のシステムを担当し、プロジェクトを推進するとともに、所属するIT部署のマネジメントも行っています。


――今回、パーソルグループが活用する人事・給与システムの更改を実施した、このプロジェクトはどんな経緯で始動したのでしょうか?


小林:まず当初の状況として、パーソルグループで10年以上にわたって活用してきた「Company-HR」はオンプレミス上で管理されており、サーバやミドルウェア、OSなどの保守も自分たちで行っていました。

そんな中、「Company-HR」のEOSLが近づきました。EOSLを機に一部を最新化するとなると、たとえば「OSのバージョンが上がるならミドルウェアもアップデートしなければ」と連動する形でさまざまな対応が必要になります。

それならば、単にアップデートの対応をするのではなく、改めて「パーソルグループの人事給与システムはどうあるべきか」を考えてシステムのあり方から見直す機会にしようと、IT部門主導でこのプロジェクトが始動しました。



――IT主導のプロジェクトに人事部門の梅田さんがジョインされた背景についても教えてください。


小林:今回のプロジェクトがシステムのあり方にまで影響を及ぼすということは、つまり運用にも影響が出るということです。業務に負担のない形でプロジェクトを着地させるためにも、人事部門を巻き込んでいかなければいけないと当初から考えており、プロジェクト発足後早い段階から梅田さんに参画してもらいました。

梅田:システム選定のタイミングから入らせていただき、IT部門が挙げてくれた候補の中から「どれなら現場の業務にフィットするだろうか」と一緒に考えていきましたね。

セキュリティ上のリスクをふまえ、今回は“マイナス→ゼロ”の取り組みの優先度を高めることを決断


――製品の選定はどのように進めていきましたか?


小林:現在の運用を担保するために必要なこと、現状の課題を解決してマイナスをゼロにするために必要なこと、さらにゼロをプラスにしていくために必要なこと……とさまざまな観点から人事部門と議論を重ね、着地点を決めて製品を選定していきました。


――最終的な着地点として、今回のプロジェクトではどんな課題を改善しようと考えたのですか? システムと運用の両面から教えてください。


小林:システム面では、基盤自体がレガシーなこと、オンプレ環境で管理しているために保守面で負荷やリスクがあることにフォーカスし、これらの根本的な解決に向けてまずは構成の部分をきれいにすることを目標として掲げました。

梅田:運用面では「使いづらく工数がかかってしまう」「このシステムではできないことがある」といったさまざまな課題がありますが、今回のシステム更改ではあえてそれらを解決しないと決断しました。

今回まず対応しなければならないのはEOSLで、セキュリティ上のリスクをふまえ、サービス保守が終了してしまうまでに新しいシステムに移ることが最優先になるはずですから。ゼロからプラスを目指すような運用課題解決については、今回はあえて優先度を下げ、リプレースが完了した後に進めようと切り分けています。


――プロジェクトを進める中で特に苦労されたことはありますか?


梅田:運用課題の解決を見送るにあたって、国内で30社を超えるグループ各社の理解を得ていく、ステークホルダーマネジメントには非常に苦労しました。

小林:「今回はEOSL対応のため、業務に極力影響を与えないようにします」という前提でスタートしたものの、今回は従来利用していた「Company-HR」が2段階バージョンアップしたものということもあり、システムを使ってできることに細かな差異が生じていて。想定外の課題が発生して現場業務に影響をおよぼしてしまう場面がありました。それらの課題について、各組織と対話し、また時に詳細を説明して前に進めていく過程には苦労しましたね。

梅田:マイナスをゼロにすることに優先度を置いたため、ユーザー部門にとって自身の業務は良くならないかもしれない中で協力してもらわなければならず、難しいところでしたよね。

今回は、このままシステムを使い続けることのリスクをIT部門がまとめ、それを人事の立場で各担当者に分かりやすいように翻訳して伝えたことで、なんとかプロジェクトへの理解が得られて。みなさんが優先度を上げて要所要所で協力してくれたことで、ようやく着地したプロジェクトだったと思っています。


プロジェクト成功の要因は、“IT領域の専門性”と“業務への理解”を互いに持ち寄り協働できたこと


――現段階で見えているプロジェクトの成果があれば教えてください。


小林:今回のプロジェクトの重要な要素である、「グループ共通システムの運用と人事業務の安定的な継続」は一定達成できました。また保守の観点で、今回システムをSaaS化したことによって安定基盤を築けたのも良かったと思っています。


梅田:また、そもそも古いシステムを利用していたので、リプレースによって人事・給与にまつわるコア業務の処理速度を2倍近くまで高めることができました。給与計算にかかる時間で言えば75%ほど削減されるなどの明確な効果があり、担当者はとても喜んでいます。


ただし、今回のプロジェクトでは運用面の課題解決は優先度を落として進めてきたので、この成果は一端に過ぎないと考えています。課題にフォーカスすることで、今以上の成果を担当者には提供していきたいですね。


――部署の垣根を越え、協働して進めるプロジェクトが成功した要因をどのように振り返りますか?


小林:プロジェクトの初期段階から人事部門の方に参画してもらい、一緒に進めていったことで、システムを使う方の目線が見え、システムが変わることによる影響を理解してコントロールしていけたのかなという印象です。


梅田:パーソルホールディングスでは現在、さらなるテクノロジー活用の推進のため、IT部門以外にもITの知見がある人材を積極的に配置しています。そのため以前よりITに知見のある人が身近にいる環境ができ始めていることから、IT部門に所属していなくとも、IT施策に価値を感じてもらいやすくなっているのではないでしょうか。


このような影響もあり、今回のプロジェクトもスムーズにIT部門の皆さんと一緒になって進めていけたのかなと。結果として、専門性の高い部分はIT部門に頑張ってもらい、業務のことは私たちが頑張るという良い連携ができたと思っています。


小林:ユーザー部門の方の姿勢という点では、梅田さんが人事とIT、それぞれにご自身の考えやポリシーをしっかりと持ってくれていたこともスムーズなプロジェクト推進に繋がりました。


ITにおいてはロジカルな思考が中心になることが多いものですが、時として、正しさが正義とは限らないこともあって。そういった場面でロジックに勝るのは、信念だと思うんです。プロジェクトの状況が絶えず変わり、さまざまな課題が生じる中でも常にユーザー部門の目線を忘れずに、「グループ人事としてこうするんだ」と信念を持っていてくれたことで、「ITとしてそこにどう合わせていこうか」と新たなロジックを組み立てていけたと思います。


――プロジェクトを通じて得られたこと、感じたことがあれば教えてください。


梅田:プロジェクトの初期に「今後数年で人事部門としてどうしていきたいか」を説明してもらい、その根本的な部分から一緒に考えてディレクションしていけたことは、前職にはなかったこの会社の面白さだと感じますし、おかげでシステム導入のナレッジが得られたのも良かったと思っています。

またプロジェクトを通じて、一緒にはたらく仲間の素敵な姿勢に気がつきました。

特に、私たち人事を含めグループ内のミドル・バック部門がITの取り組みに対してとても協力的だなと。テクノロジー活用をパーソルグループとして推進しているからこそ、みんなが同じ方向を見ている印象ですし、また困りごとを放っておけない方が多いため、みなさん課題をITで解決していくことに興味を持ったり後押ししたりしてくれるなと感じます。

小林:確かに、テクノロジー戦略をはじめ会社として掲げる価値をみんなで見据えられているので、みなさん協力的でサポーティブですよね。反対に他のプロジェクトの方たちが何か困っていたら、私たちももちろん相談に乗ると思います。

梅田:そんな小林さんをはじめとしたIT部門のみなさんも、ITコンサルタントとしての専門的な知見やプロフェッショナル性を持ち、ユーザー部門が分からない部分を率先してリードしてくれる一方で、物腰柔らかで話しやすい方が多いんです。そんな組織だからこそ、心理的安全性が確立されていて「ちょっと困っているんですけど…」と相談しやすい感覚ですね。

小林:ありがとうございます。

また個人的には、グループにインパクトを与えるこれだけの規模のプロジェクトは、自分一人でマネジメントできるものではないなととても勉強になりました。梅田さんをはじめ、本当にたくさんの方に手伝ってもらって初めて成し得たものだなと。

そういった協力を得るためには理屈だけでは足りず、一人ひとりと真摯に向き合ったり、全体を俯瞰した価値観を作ったりすることが大切だと学べましたし、今回そうしてグループ人事のみなさんと関係性を築けたことが、今後に向けて頼もしくもあります。


部門の垣根を越えて一体となり、品質の高いITを実現していきたい


――今回のプロジェクトを経て今見えている、今後のシステム設計やデータ活用における展望について教えてください。


小林:今回オンプレからSaaS化したことで、今後の可能性は大きく開けたと思っています。現状「Company-HR」からはグループ各社が利用する50ほどのシステムにデータ連携がなされていますが、それらの仕組み自体を抜本的に見直すこともしやすくなりましたし、たとえばAPIでのデータ連携など新たな仕組みの活用も可能になりますから。これまでオンプレではできなかったことをデータ連携において実現していけると見据えています。

梅田:まだ構想段階ではありますが……。将来的には、たとえば人事基幹システムとタレントマネジメントシステムにおけるデータのグランドデザイニング、つまり「それぞれのシステムで何のデータを持つべきで、それらをどう連携してどう活用すべきか」をゼロから一緒に考えていくような、ダイナミックなことをやってみたいなと考えています。

具体的なプロジェクトとして動き始めるのはもう少し先かもしれませんが、できることの幅が広がる感覚がありますね。


小林:また今回は人事領域のシステムにアプローチしましたが、あくまでこれは大きな変革の一端です。これを皮切りに、現在進められている「グループ共通システム群がどうあるべきか」という全体の見直しについても、前進させていければと思っています。


――ありがとうございます。それでは最後に、お二人が今後チャレンジしたいことを教えてください!


梅田:専門性が高い人材が集まるパーソルホールディングスで、各部門の視野が狭くなってしまうことのないよう、部門間で連携する今回のようなプロジェクトを積極的に進めていきたいなと思っています。それによってお互いのノウハウを教え合い、生産性を高めていければ嬉しいですね。

また今回ITの専門家と一緒に大規模なプロジェクトを進めたことで、ベンダーマネジメントをはじめプロジェクトの進め方を学べたため、今後の大型ITプロジェクトで活かしていければと思います。

小林:今回人事業務の難しさや幅広さ、奥深さを学べたと思っているので、「そこに対してテクノロジー活用をいかに推進していくか」を考えていきたいと思っています。またそこから施策を一つひとつ進めていく中で、パーソルグループ内にあるさまざまな部門のみなさんと価値観を揃えて一体となり、“品質の高いIT”を一緒に実現していくことにこだわっていければと思います。

 ※2023年10月時点の情報です。


パーソルホールディングスが運営するWebメディア「TECH DOOR」では、パーソルグループ内で取り組んでいるITプロジェクトを紹介しています。本記事と併せてぜひご覧ください。






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