ボタン1つで粉雪のようなふんわりとしたご飯の盛り付けを実現。発売から20年、外食産業の発展に貢献し続けるご飯盛り付けロボット”Fuwarica”の開発ストーリー
鈴茂器工株式会社は、1981年に世界初の寿司ロボットを開発し、寿司の大衆化を実現したリーディングカンパニーです。『食の「おいしい」や「温かい」を世界の人々へ』というビジョンを掲げ、細分化する食に関するニーズをいち早く捉えて市場にご提案し、常に新しいフードビジネスを開拓する企業として躍進しています。近年では、寿司ロボットシェアNo.1※を獲得しました。
そんな当社で寿司ロボットと並び、業界シェアNo.1※を獲得しているのが、ご飯盛り付けロボットFuwaricaです。2003年に発売され、今年発売から20周年を迎えるFuwaricaは、現在、丼チェーン店や飲食店、ホテル・ビュッフェなど幅広い場所で活躍しています。
飲食店でなくてはならない存在となったFuwaricaはどのようにして開発されたのか?その開発秘話を、当時開発チームのメンバーだった山田二郎、井上英司郎、長谷川実、小峰淳の4人に聞きました。
※出典: 富士経済「労働人口不足の未来予測から見たロボット潜在需要に関する考察」すしロボット/ご飯盛り付けロボット 販売数量・金額 2022年実績
Fuwarica初号機開発チームの一員だった山田、井上、長谷川、小峰
開発の原点は「誰でもどんな場所でもおいしいご飯を食べてもらいたい」という創業者の強い想い
ご飯盛り付けロボットFuwaricaは、ご飯を練らずにやさしくほぐし、ボタンを押すだけで定量のご飯をふんわり衛生的に盛り付けるロボット。
そんなFuwaricaのご飯を盛り付ける技術の基礎研究が始まったのは、2000年でした。
当時、当社は“米飯主食文化を世界へ”というビジョンのもと、世界初のシャリ玉ロボットをはじめ、海苔巻きロボットやお櫃型ロボットなど様々な米飯加工ロボットを次々と開発していました。
ロボットというと人手やコストの削減をイメージしがちですが、当社が創業当時から機械において重視しているのは「おいしさ」です。まだ日本食に馴染みのない世界の人々にも米飯の「おいしさ」を届けたいという想いがそこにありました。
そんな中、当社創業者である鈴木喜作氏の「誰でもどんな場所でもおいしいご飯を食べてもらいたい」という想いから生まれたのが、ご飯盛り付けロボットFuwarica(2003年発売当時の名称「シャリ弁ロボ」)です。
“ご飯をふんわりおいしく盛る”という作業は、簡単そうに見えて実は、当時も今も変わらず技術が必要な作業です。例えば、ご飯をよそい慣れていない人は、ご飯をほぐさずによそったり、よそう時に茶碗に押し付けて潰してしまうことがあります。そうやってよそわれたご飯は潰れていて硬く、米粒一粒一粒が立っていない為、お米のおいしさを感じにくくなってしまいます。また、丼もののご飯が潰れていると、具材のツユが染み込みにくくなってしまいます。特に日本食に馴染みの薄い海外の方にとってご飯をふんわりおいしく盛り付けることは大変難しい作業です。
鈴木喜作氏の「誰でもどんな場所でもおいしいご飯を食べてもらいたい」という想いと、ご飯をふんわりおいしくよそう事の難しさに着目した先見の明により、ご飯盛り付けロボットの開発が始まったのです。
耐熱性やご飯のふんわり感。これまでとは全く異なる条件に立ちはだかる壁
ただ、これまでとは全く異なる環境で使われることが前提となるご飯盛り付けロボットの開発には多くの課題が立ちはだかりました。
当社の主力製品である寿司ロボットが扱う酢飯は約40℃程度ですが、ご飯盛り付けロボットが扱うのは約90℃以上の熱々のご飯(白飯)。寿司ロボットよりも機械に求められる耐熱性が格段に高くなりました。また、ご飯が高温であるために発生する結露は、機械の制御部に入れば故障の原因にもなり得ます。
さらに、ターゲットとなる店舗は24時間営業。24時間機械を使えることが前提となる為、機械にかかる負荷は、主に回転寿司やスーパーマーケットで使用されてきた寿司ロボットよりも過酷です。当時寿司ロボットで使っていた樹脂素材では耐熱性が十分ではなく、長時間熱々のご飯を入れ続けるとすぐに部品が茶色く変色し痛んでしまいました。そこで、Fuwaricaの部品に使用する樹脂素材を1から見直す必要がありました。
さらに、機械でご飯をふんわり盛り付ける為には、いかにご飯にダメージを与えず、練らずに送り出せるかが重要です。
この時のことを小峰は振り返ります。
「実際に何度も何度も機械でご飯を盛り付ける検証を行いました。機械で送り出していたご飯が練って機械が動かなくなってしまうこともあり、大変苦労したことを覚えています。時には、機械がご飯に与えるダメージを調べる為、盛り付けたご飯を一粒一粒確認し、破砕米となっていないか調べることもありました。
検証の度に、素材を見直したり、機械構造や部品形状を作り直してブラッシュアップしていきました」
こういった苦労の末に採用された素材や構造は、Fuwarica初号機発売から約20年経った今でも最新のFuwaricaシリーズで使用されています。
猛スピードで開発されたご飯盛り付けロボットはすぐに金型化されることが決まりました。
しかし、当時ご飯盛り付けロボットはほとんど市場に出回っておらず、売れるかどうか見通しが立たない状況。そういった状況で莫大な費用をかけて金型化するのはやはり不安があったと、山田は言います。「今考えると当時の経営層の方々はFuwaricaを必要とする市場はある!という確信を持っていたのだと思います。実際、金型化することで機械のイメージを払拭するシンプルでスマートな外観となり、当社ならではの魅力となりました」
Fuwarica初号機開発時のスケッチ
ようやく完成したFuwaricaは、ご飯をパラパラとほぐし、しゃもじを使用した手盛りのご飯では難しいふんわりとした盛り付けを実現しました。創業者の鈴木喜作氏はFuwaricaでご飯を盛り付ける様子を「まるで粉雪のようだ」と表現しています。
ふんわりした盛り付けは見た目がおいしそうなだけでなく、丼のツユが染み込みやすいという更なるメリットを生み出し、機械化による品質の低下どころか、最終消費者の満足度の向上にも貢献できる大きな強みになったのです。これは省人省力化にとどまらず、最終消費者へのお米のおいしさを届ける当社のビジョンと一致しており、まさに当社らしいと言える機械が誕生しました。
お客様の声にお応えした細やかなブラッシュアップが、ご飯盛り付けロボット普及のカギに
完成したご飯盛り付けロボットは、最初シャリ弁ロボと名付けられ、2003年の展示会で華々しくお披露目となりました。
Fuwarica初号機と発売当初のカタログ
しかし、シャリ弁ロボはすぐにはヒット商品になりませんでした。
当時の問題点について、長谷川曰く「当時、当社で金型化した機械は2製品目で、成形部品に関する経験が浅く、ほとんど初心者でした。その為、成形部品が壊れやすい構造になってしまっていたことなどがあり、苦労しました」とのこと。
山田は「今だから笑って話せますが、実は展示会の翌日には機械のフタのヒンジが壊れるといったアクシデントもありました」と振り返りました。
展示会やお客様の店舗で実際に機械を使用することで初めて明らかになった課題は山積みでした。
「営業部門が徹底してお客様の声を集めて開発チームに詳細に情報共有し、開発チームは明らかになった課題を一つ一つ着実に解決していきました」と、井上は当時の資料を見ながら振り返ります。「ご飯盛り付けロボット自体初めてみるお客様が多く、実現が非常に難しい要望もありましたが、一方で、機械フタを横開きにしたいなどといった現在でもよくいただく要望も多くありました」
開発チームと、営業部門のたゆまぬ努力により、「しゃもじが100円なのに、そんな高級な機械を購入する理由がない」と言っていたお客様にも徐々にFuwaricaの良さを理解してもらえるようになっていきました。大手飲食チェーン店に導入が決まると、加速度的にFuwaricaの販売台数は増えていきました。
2010年、Fuawaricaは第35回発明大賞にて発明功労賞を受賞。
2011年には文部科学大臣表彰の科学技術賞を受賞しました。
いずれの賞も、ボタンを押すだけで誰でも簡単においしくふっくらとしたご飯を素早く定量盛り付けられることと、これまでにない小型且つ軽量の機械であり飲食店・小売り店舗・社員食堂・介護施設などあらゆる場所で使用できることで、外食産業の発展に貢献しているという理由で高く評価いただきました。
Fuwaricaがご飯盛り付けロボット業界シェアNo.1※を獲得!ご飯のおいしさへの追求は続く!
2020年、当社のご飯盛り付けロボットの名称は「シャリ弁ロボ」から「Fuwarica」に変わりました。「ふんわり」とご飯を出し「おかわり」を素早く提供するという2つの単語をミックスし、呼びやすく覚えやすい名称となったFuwaricaは、より沢山の人たちに愛される製品となることを願い命名されました。
2022年3月には、Fuwaricaシリーズはご飯盛り付けロボット業界シェアNo.1※1を獲得しました。翌年の2023年10月にも、シェアNo.1※2を獲得しています。
丼チェーンや飲食店だけでなく、ホテルや病院などご飯を盛り付ける多種多様な場所でFuwaricaは活躍しています。
お客様の声に応えて常に進化し続けてきたFuwaricaシリーズのラインナップは、現在5種類にまで増えました。多種多様なお客様の環境やオペレーションに合わせて選ぶことができる大きな強みを持っています。
Fuwaricaシリーズ ラインナップ
Fuwaricaシリーズ最新機種であり最上位機種でもあるGST-RRAは、ホテルやビュッフェのセルフサービスなど消費者から見える所に設置しても浮かないデザイン、使いやすさを追究したタッチパネル、使いやすさは勿論フードロスの抑制にもつながるご飯残量検知機能など、お客様の声をよく聞き取り、市場が本当に必要としているものを汲み取った機械となっています。
もちろん最新機種GST-RRAでも、ご飯のおいしさへの追求は続いています。
ご飯をふんわり優しくほぐしダメージを与えずに送り出す構造により、盛り付けられたご飯は空気を含みふんわりとしています。さらに、機械に投入したご飯は70℃以上の温度を4時間保持することができ、長時間温かいご飯を提供することができます。
Fuwaricaシリーズ最新機種GST-RRA
2022年、当社のビジョンは「米飯主食文化を世界へ」から「食の『おいしい』と『温かい』を世界の人々へ」に変わりました。これからも創業者の「おいしさ」を追い求める想いを受け継ぎながら、食に関するニーズをいち早く捉えて市場にご提案し、常に新しいフードビジネスを開拓する企業として躍進していきます。
当社は、これからもFuwaricaシリーズを通じて多様なお客様のご飯提供シーンのニーズに応え、世界の人々に「おいしい」と「温かい」を届けます。
※1 出典:富士経済:「2022 年版 ワールドワイドロボット関連市場の現状と将来展望」 米飯盛付けロボット 販売金額・台数 2021 年実績
※2 出典: 富士経済「労働人口不足の未来予測から見たロボット潜在需要に関する考察」ご飯盛り付けロボット 販売数量・金額 2022年実績
Fuwarica特設サイト
参考データ
1.Fuwaricaの受賞歴
2010年 第35回発明大賞 発明功労賞 受賞
2011年 文部科学大臣表彰 科学技術賞 受賞
2013年 第16回日食優秀食品機械資材・素材賞 機械部門 優秀機械賞 受賞
2021年 第25回外食産業貢献賞 機器・資材部門 受賞
2.Fuwaricaラインナップの変遷
2003年 GST-RSA発売
2003年 GST-RSB発売
2009年 GST-FBA発売
2012年 GST-RSC発売
2016年 GST-HMA発売【発売中】
2016年 GST-FBB発売【発売中】
2020年 GST-FBC発売【発売中】
2022年 GST-MRA発売【発売中】
2023年 GST-RRA発売【発売中】
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■参考:寿司ロボットの開発ストーリー
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