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日立グループで進める「学びの場」づくりへの挑戦 |[イベントレポート]「イノベーションを起こすために必要なビジネスの見つけ方・見方・育て方 Willで推進するビジネスのモードチェンジ」

著者: 株式会社 日立アカデミー

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技術革新、働き方の多様化、グローバル化など、企業を取り巻く環境が大きく変化する今、企業の人財育成の在り方が問われています。ジョブ型をベースとした働き方が進展する中で「事業成長と、従業員一人ひとりの成長をどのように実現するか」は、企業にとってますます重要な課題となるでしょう。 


私たち株式会社日立アカデミーは、日立グループの人財育成を担うCoE(※)として、「事業起点の人財育成」と「個人の成長意欲・興味関心に基づく学び」の加速をめざし、多様な角度で刺激し視座を高めるための「学びの場」づくりを、日立グループにて推進しています。(※Center of Excellence) 

その取り組みのひとつが、各界の有識者や多様でユニークな活動家、活躍する個人を招き、さまざまなテーマで語り、考える学びのイベント。日立グループが進める、従来の「企業研修とは異なる学び」の一部を、連載で紹介してまいります。

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講演会「イノベーションを起こすために必要なビジネスの見つけ方・見方・育て方」

Willで推進するビジネスのモードチェンジ 〜ヘトヘトからワクワクへの挑戦〜


2023年9月27日


「イノベーションを起こす」。言葉にするのは容易だが、実現するのは決して容易ではない。そもそも、何をイノベーションとするのか、どうすれば糸口が見つかるのか。そんな悩みを抱えるビジネスパーソンも少なくないだろう。既に「ヘトヘト」になりながらイノベーションに挑戦している人もいるかもしれない。


そうした悩みを「ワクワク」へと変えられるよう、日立アカデミーは【組織全体のDX推進に向けて!DX第一人者による講演会 Vol.09 Willで推進するビジネスのモードチェンジ〜ヘトヘトからワクワクへの挑戦〜】をオンラインにて開催。「たった一人からはじめるイノベーション入門 何をどうすればいいのか、どうすれば動き出すのか」の著者であり、オムロン株式会社のイノベーション推進本部でシニアアドバイザーを務めた※竹林 一氏を講師に迎えた。


※2023年8月20日まで在籍



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左:講師 竹林 一(たけばやし はじめ)氏

京都大学経営管理大学院客員教授

大阪大学フォーサイト株式会社エバンジェリスト


右:モデレーター 渡辺 薫(わたなべ かおる)氏

株式会社日立ICTビジネスサービス シニアコンサルタント

元日立製作所 社会イノベーション事業統括本部 エグゼクティブSIBストラテジスト


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社会課題を解決することで生まれるイノベーションと、社会課題を見つけ出すヒントとなるSINIC理論。



「みなさん元気ですか!」と、竹林氏のハツラツとした挨拶からスタートした本講演。関西弁混じりでノリのいい自己紹介で参加者から大きな注目を集めた。


「本日は【“十八番(おはこ)”を見つける】【“軸”を変えていく】【“人”を育てる】の3テーマでお話をしたいと思います。みなさんイノーション、イノベーションと言いますが、そもそも“イノベーションとは何か?”という話ですよね」



そう言って竹林氏はまず、1911年に経済学者のヨゼフ・シュンペータが発表したイノベーションの定義について解説する。


「イノベーションとは“それまでとは異なる仕方で【新結合】すること”。新しい財貨をつくる、新しい生産方法を導入する、新しい販路を開拓する、原料や半製品の供給源を変える、新しい組織を実現するなど、全部で5つのタイプが提示されています。新規事業を立ち上げるのはもちろんですが、現在の採用の仕組み自体を変える、職場の心理的安全性を高めること等もイノベーションになるわけです」


竹林氏が長年所属していたオムロンでは「イノベーションとは社会課題の解決」だと定義しているそうだ。渋滞緩和という社会課題解決を目的につくられた全自動感応式電子信号機や、脳疾患や心臓疾患で倒れる人を減らすという社会課題解決を目指し、日ごろから家庭で血圧を測るという習慣を創るために家庭用電子血圧計を開発してきたなど、実際に起こしたイノベーション事例を紹介した。


さらに竹林氏は、社会課題を見つける糸口となる「SINIC(サイニック)理論」について解説する。



SINIC理論とは1970年の国際未来学会で発表された未来予測理論だ。これによると、2025年以降はそれまでの最適化社会から自律社会へと移り変わり、自律分散という概念をベースに自動制御、自動生成、電子制御などの技術がますます進化するとされている。


「これまでは“最適化社会をどう実現するか”を新規事業の軸にしていましたが、今後は“自律社会をどう実現するか”という思考に方向転換する必要が出てきます。みなさんが今持っているものをベースに、どうやって自律社会をつくっていくのか。これをぜひ考えていただきたいのです」


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「十八番」を見つけ、自律した強みへと変えていく。

「イノベーションとは何なのか」。そんな本質について話した後、竹林氏は企業が十八番を発信する一例としてSDGsを挙げた。


「多くの企業が“SDGsの○番と○番をやります”などと宣言していますが、実際に強みを活かし、誰かを笑顔にする施策が実現できている企業は少ないように感じます。それから、SDGsには全部で17の目標がありますが、すごく中途半端ですよね。せっかく18番目が空いているのだからと、僕はここに笑顔を入れてみました。“17の目標を達成することで、みなさんの笑顔を生んでいます”と。これいいでしょう!しかも、日本で18番は“十八番(おはこ)”と言いますよね。自分や企業の得意技でSDGs、そして皆さんの笑顔に貢献しますと発信すれば、それだけで十分ブランディングになります」



そう言って竹林氏は「ゴール」と書かれた部分を「笑顔」のマークに変えて見せる。


「自律社会の反対は他律社会です。他律社会は偏差値が高いか低いか、大企業か小企業かなど、他者がつくったルールで成り立っています。それも大切です。重要なのは、自律と他律を両立させること。ぜひみなさんも、自分の十八番は何か、自分が所属する事業部門や会社の十八番は何かを考えてみてください。十八番が見つかれば企業にとって大きな強みになりますし、働いている人もどんどん自律し、ワクワクしてくるはずです」



他律社会のルールが既に確立しているからこそ、積極的に自律的な強みを見つけ、その両方を大事にする。これから確立されていく自律社会を生き抜くためにも、その姿勢を大事にしていきたいものだ。


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「“軸”を変える」で、既にある価値を新たな価値へと変えていく。

続いて、講演テーマは「“軸”を変える」へ。竹林氏の言う「軸」とは、果たしてどんなものなのだろうか。


まず、北海道にある旭山動物園を例に挙げた。さらに、自身がオムロンで携わったという自動改札機の「軸」を変えた事例について解説。


「1967年、オムロンは世界で初めて自動改札機をつくりました。しかし、時代と共に価値や価格が下がる中で、僕は“自動改札機の新しい事業を考えてくれ”と言われまして。当時、トップに何度もアイデアを持って行きましたが、何を見せてもダメだったんです。それで毎朝どんな事業が出来るか、いろいろな駅を歩きまわっていました。ある時、新宿の駅の中から乗客を眺めていたんです。平日の朝、何百万人もの人が駅の改札から新宿の街へ出て行く様子を見て、“ひょっとすると、駅とは電車に乗る入口ではなく、街への入口なのではないか”と考えたわけです」



「駅への入口」から「街への入口」と軸を変え、どんな価値を提供できるかを考え直す。それだけで、今までとは違うさまざまな切り口のアイデアが竹林氏のもとに集まったという。


そのアイデアの一つが「子どもが改札を通ったら保護者にメールで通知する見守りサービス」だ。関西ではほぼすべての鉄道会社で、また関東圏でも多く鉄道会社で導入されるなど、非常に高い評価を得ていると竹林氏は話す。


しかし、こうした成功事例の背景には必ずと言っていいほどコンフリクションが起きるそうだ。自動改札機の事例で起きたコンフリクションをどう解決したかの体験談についても詳細に語った。



さらに竹林氏は、オムロンのヘルスケアやメディカル領域のビジネス事例について紹介する。


病気になる前の健康領域を「W(ウェルネス)」、病気になってから必要となる医療領域を「M(メディカル)」と分けることでサービスにどのような違いを生み出すかという解説を始め、健康に関するビジネスを生態系に例えて考える方法、女性向け・男性向けサービスの考え方の違いなど、さまざまな話が繰り広げられた。


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新しい価値を生み出すために必要なのは、「起・承・転・結」すべての人財。

「十八番を見つけ、新しい軸を見つけたら、最後は“人”です。新しい価値を生み出すには、やはり“人”が大事です」


竹林氏は、新しい価値を生み出す人財モデルを「起・承・転・結」の4タイプに分類して話す。



「“起”の人は0から1を発想する能力の持ち主です。このタイプは、直近のビジネスにならないことばかりしているため、ややこしい人と思われるかもしれません。ただ、何年後かに新たなビジネスのきっかけを起こしてくれます。そして“起”の人が生み出したアイデアをベースに、“こんな絵を描きましょう”とカタチにしてくれるのが“承”の人です。さらに“転”の人は、具体化されたアイデアから事業計画書を書いてくれたりします。最後、その計画をきっちりとやり遂げてくれるのが“結”の人です」


竹林氏は「どのタイプが良い・悪いではなく、すべてのタイプが必要だ」と話す。さらに、タイプの違う人財を部下に持つ場合、それぞれに適したマネジメントやコミュニケーションが必要になってくると言う。



「“起・承”の人には、コーチングやバリューアップなどプロセスを評価する仕組みが必要です。また、“転・結”の人には、きっちりとした目標を設定してやり切るタイプのマネジメントが適しています。“起・承”と“転・結”の人に同じ査定評価をすると大変なことになりますよ」


「起・承・転・結」。それぞれのタイプが混在するからこそ、社会課題を解決するためのイノベーションを起こすことができる。実際に数々のイノベーションを起こしてきた竹林氏の言葉だからこそ、強い実感が伝わってくる。


さらに、「起・承・転・結」に関する体験談やそれぞれのマネジメントに対する考え方、コミュニケーションの取り方についてより詳しく語った。自分は「起・承・転・結」のどのタイプにあてはまるか。自分が所属するチームのマネジメントは、果たして各タイプに適しているか。本講演を参考に、ぜひ今一度、日々の仕事の在り方を見直すきっかけにしてもらいたい。


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質疑応答を通じて、ビジネスのモードチェンジをさらに確立していく。


講演終了後は株式会社日立ICTビジネスサービス シニアコンサルタントの渡辺 薫(わたなべ かおる)氏がモデレーターに加わり、参加者から寄せられた質問に回答しながら竹林氏との対談を行った。


「自分は“結”タイプです。きちんとサービスが回るようオペレーションの部分を担っていますが、評価されていないと感じてしまいます」「自分が“起・承・転・結”どのタイプかを自覚する必要はありますか?」など、集まった質問は、人財タイプの話題に注目するものが多いように感じられた。また、「そのトーク力はどこで培われたのでしょうか!?」といった竹林氏個人に向けた質問も多く寄せられた。


「起・承・転・結」の特徴がよくわかるユニークな体験談や、竹林氏のキャリアを支えたご家族の言葉など、講演だけでは聞くことができない自由なトークが繰り広げられた。日立グループ側の視点をよく知る渡辺氏だからこそ深掘れる話題も多く、最後まで非常に見応えのある対談となっている。



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株式会社 日立アカデミー

Web:https://www.hitachi-ac.co.jp/

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