和楽器の衰退を食い止め、「音楽のある充実した生活」を提供したい。和楽器講師養成サービス「湧き水流」と海外の方向けのオンラインレッスンサービス「shamisen-lessons.com」開発の裏側
2023年に創業20周年を迎えた株式会社ナージは、愛知県・名古屋市で大人向け音楽教室を運営する企業です。『共利共生』という理念のもと、お客様や講師の人生の充実化の一助となることを目指して音楽レッスンサービスを展開してきました。
楽器教室の「クラブナージ音楽教室」、ボイストレーニング教室の「オーラボイスボーカルスクール」をはじめとする各サービスを通し、『音楽が傍にある豊かな人生』を提供しています。
そして現在、弊社は「音楽×IT×和」サービスの普及と海外進出に挑んでいます。
和文化の衰退に歯止めをかけ、さらにはITの力を利用して再興させるための取り組みです。
このストーリーでは、和楽器講師養成のオンラインレッスンサービス「湧き水流」と海外の方向けの和楽器オンラインレッスンサービス「shamisen-lessons.com」の開発の裏側をお伝えいたします。
このままでは和楽器の文化が途絶えてしまう。和楽器業界に立ち込める暗雲
日本国内で和文化の衰退を指摘する声が多く上がるようになり、早数年が経ちました。和楽器に関しても同様で、和楽器業界そのものが縮小しているといわれています。
以前、老舗の大手和楽器メーカーが廃業を表明した際には各メディアで大きく報じられ、社会全体に衝撃を与えました。この報道は、近年の和楽器の需要低迷、そして継承者不足による和楽器人口の減少を象徴するものだといえます。
音楽業界に身を置く弊社も「このままでは和楽器の文化が途絶えてしまう」「伝統ある日本の音楽を後世に伝えるために行動しなければいけない」と考えました。
「家元制度」の厳格さが現代の需要と一致しないことが、業界衰退の原因という仮説
こうした状況に歯止めをかけ、和楽器業界を盛り返すために必要な取組みとは何か考えたとき、弊社は業界特有の風習に焦点をあてました。
和楽器業界には「家元制度」という風習があります。「家元」とは、一般的に「ある流派の統括者」を指します。門下生が家元の技芸を継承して免許を取得し、さらにその門下生たちに継承していく…という仕組みで、その流派の技芸の形を保ちながら脈々と受け継いできました。
この制度は、伝統をそのままの形で継承できる点で優れていますが、一方で、師弟や先輩後輩という厳しい縦の人間関係、奏法の規定など、制約のある厳格な世界でもあります。
弊社は、この家元制度の厳格さが現在の需要とは一致しないと考え、和楽器自体に関心があっても、和楽器業界の厳格な世界に踏み込むことはできないという方が、時代の変化とともに増加したことが原因なのではないかと仮説を立てたのです。
現代の需要に応える、家元制度にはない「気軽な」お稽古サービス「湧き水流」
そこで生み出されたのは、和楽器講師養成のオンラインレッスンサービス「湧き水流」です。2022年9月に誕生した当サービスでは家元制度、そして流派の枠を超えて、和楽器の知識や技術を学んでいただきます。
家元制度にはない「気軽さ」をとことん追求した「湧き水流」では、習い事の延長として資格を取得することで、和楽器の講師になることができます。現在は、津軽三味線、三線について、講師資格の取得に向けてのレッスンを受講いただけます。また、尺八についても開講準備中です。
家元制度や流派にこだわらない指導者の輩出が、和楽器の世界へ踏み出せない方の背中を押すと信じ、当サービスによって和楽器業界の門戸を広げることを目指しています。
和文化に関心の高い海外に着目。「shamisen-lessons.com」で講師業として生計を立てられる環境を実現
前述の「湧き水流」で講師を輩出した後に残る課題は「講師業として生計を立てられる環境づくり」です。先に述べた通り『共利共生』を理念とする弊社にとって、「湧き水流」から輩出した講師の人生を充実させることも重要な任務だからです。
しかし、ほんの1年前に生まれた「湧き水流」が国内の潜在層に影響を与え、国内での和楽器への関心が高まる土壌が完成するにはまだ時間が必要です。
そこで弊社は、既に和文化や和楽器への関心が高い海外へ着目しました。和楽器オンラインレッスンサービス「shamisen-lessons.com」は海外の方へ和楽器に触れる機会を提供するだけでなく、「湧き水流」で講師になった方に働く場所を提供する事業でもあるのです。
家元制度と湧き水流の共存への不安。和楽器人口を増やすために、事業推進を決意
開発にあたって、「家元制度との共存は可能なのか」という葛藤がありました。
確かに、家元制度の厳格さは現代日本人の需要に応え得るものではないかもしれません。その反面、歴史ある各流派の技芸が形を保ったまま現代まで続いてきたのは、その厳格さがあったからこそでしょう。そんな家元制度とは正反対の「気軽さ」を追求した「湧き水流」は、和楽器の世界に溶け込めないのではないかという一抹の不安が開発者たちの心をよぎりました。
しかし、和楽器の文化を後世に伝えるために今最も優先すべきことは「和楽器業界参入の敷居を下げ、和楽器人口を増やすこと」なのだと決意を新たにし、この2つの事業を推し進めていくことになりました。
オンラインシステムの開発と言語の壁。サービスの提供開始にたどり着くまでの課題
このような経緯があって開発に取り掛かった「湧き水流」と「shamisen-lessons.com」ですが、サービスの提供開始にたどり着くまで順風満帆とはいきませんでした。
「湧き水流」の特徴の1つはオンラインレッスンであることです。このオンラインレッスンは、弊社独自のオンラインシステムを利用して行われます。
独自のオンラインシステムを利用する理由は、従来のWeb会議システムは「音楽レッスン」を行うには不向きなシステムだからです。
例えば、声以外の音をノイズとして自動で抑制する機能があり、楽器の音、特に声域を超える高音や低音が認識できないことがあります。
また、音声のタイムラグという問題もあります。Web会議システムを利用される方はご経験があるかと思いますが、インターネットを介してやり取りをすると、自分が音を発したタイミングと相手の耳に届くタイミングにズレが生じます。このズレは、「合わせる」ことが重要な音楽のレッスンにおいて致命的です。
これらの問題を一挙に解決するには、オンラインシステムを新たに開発する必要がありました。システム開発には、自社開発と委託開発という選択肢があります。弊社は今回初めて、所属のエンジニアによる自社開発に挑み、音楽レッスンに最適化されたオンラインシステムを作り上げることができました。
続く「shamisen-lessons.com」の開発では、言語の壁をどう乗り越えるかが最大の課題となりました。
異なる言語を母語とする講師と生徒様がストレスなく、スムーズにレッスンを進めるには、講師が少なくとも英語で会話できる必要があります。弊社としても、当初は英会話ができる講師陣を揃えた上でレッスンを開講する予定でした。
しかし、ここで大きな問題が発生しました。英会話が得意な和楽器講師の確保が想定以上に難航したのです。
このままでは、講師は不慣れな英語で初心者の方が理解できるレッスンをしなければなりませんし、和楽器を初めて触るであろう生徒様は講師と意思疎通が十分にとれないままレッスンを受講することになります。このようなレッスンサービスは講師にも生徒様にも大きな負担を強いることになり、弊社の本意ではありません。
そこで、先に述べたオンラインシステムに通訳プログラムを組み込むことにしました。
通訳プログラムを組み込むことで、講師も生徒様もそれぞれの母語でレッスンを行うことができるようになりました。当たり前のことのように思うかもしれませんが、英語の習得レベルに関わらず、和楽器講師の活躍の場が海の向こうにまで一気に広がったことには、大きな意義があるように思います。
世界に誇るべき日本の美しい伝統を維持しつつ、新たな時代で淘汰されないために何をすべきか
弊社にとって音楽のレッスンに対応できる弊社独自のオンラインシステムの開発、そして海外の方と繋がる通訳プログラムの組込は初の試みでした。しかし、先に述べたような試行錯誤を経て、2022年9月には「湧き水流」が、2023年7月には「shamisen-lessons.com」がサービスの提供を開始しました。
現在は「音楽×和」のイベント「狐の嫁入り行列」を開催するなどして、潜在層の発掘に努めています。
こうしてサービスの提供までこぎ着けた2つの和楽器オンラインレッスンサービスですが、「shamisen-lessons.com」には大きな課題が残っています。
それは、海外でのビジネスパートナーの確保です。各国の法律に柔軟に対応したり、和楽器の販売や修理などのアフターフォローを充実させたりするには、現地の知識が豊富な人材の助けが必要です。
世界に誇るべき日本の美しい伝統を維持しつつ、新たな時代で淘汰されないために何をすべきか。
音楽教室の運営会社として、和楽器の衰退を食い止めるために取り組むべきことはまだ多く残されています。弊社は今後も和楽器や音楽文化の更なる発展を目指し、そして1人でも多くの方へ「音楽のある充実した生活」を提供できるよう取り組んでまいります。
【湧き水流公式HP】
【shamisen-lessonns.com公式HP】
【株式会社ナージ採用HP】
https://www.clubnagy-music.com/recruit-enter/
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ