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地球環境改善への切り札へ。微生物がイキイキと働く土壌を作る「八百結び農法®」誕生のストーリー

著者: 壌結合同会社

見えないものにこだわる。見えない世界に目をむける。

壌結合同会社は、土壌の土着微生物の活性を通じて土壌の健康循環サイクルの実現を目指す「八百結び(やおむすび)®プロジェクト」に取組んでいます。地域経済圏の畜産農家さまが排出する糞尿や家庭用生ゴミなど、本来廃棄される有機物を独自のバイオスティミュラント(微生物活性資材)と掛け合わせ付加価値の高い土壌健康資材(産土・培養水)を生成し、地域土壌の健康活力(土壌1gあたりの微生物活性総量の見える化=土壌健康活力の見える化)を整える目的に立ち、地域農家さまへの供給を通じて、自然農法、無農薬栽培、減農薬栽培をサポートしています。この「八百結び®プロジェクト」誕生のストーリーについて、壌結合同会社 代表社員 金瀬伸吾に話を聞きました。


劣化した大地を肥沃な土壌へと回復する「リジェネラティブ農法」が地球環境改善への切り札

私たちがこの事業に取り組むきっかけは、70年以上にわたる化学肥料などの蓄積で酸化し劣化した土壌を、肥沃な土壌へと回復する「リジェネラティブ農法」こそが、サスティナブルな農業と地球環境改善の切り札になると考えるからです。「痩せた土壌」、「酸化した土壌」、「砂漠化(干ばつ)」という言葉をよく耳にしますが、その原因について特に日本ではあまり深く認識されていないと感じています。2021年に公開されたドキュメンタリー映画「食の安全を守る人々」では、国内外で農と食の持続可能な未来ビジョンを模索する実践者を取材し、食生産の裏舞台に切り込んでいます。今、「土壌の健康回復=食の安全課題」に取り組まなければ、次世代の子供たちの明るい未来は描けないと強く感じ事業開発に取り組んでいます。


肥沃な土壌とは、腐植性が保たれ、微生物がイキイキと活躍する土壌

私たちの事業は、

①   生物性土壌分析をして、土壌の健康状態を把握(見える化=指標化)する

②   土壌の健康状態に適した手法で、土壌の健康を回復または維持させる

ということが柱になります。


一般的な土壌分析とは主に作物成長に必要な3要素である窒素、リン酸、カリウムを中心とした化学性の成分分析です。しかしながら、「土壌の健康力」の判断は、土着微生物の生息数と活動総数が健康指標になると考えます。それを私たちは、土壌1gあたりに数億単位で生息する細菌数を調べることで把握します。

各地の農地を分析(これまで百カ所以上の農地を分析)しましたが、その土壌健康状態はまさに千差万別でした。土壌1gあたり10億個を超える微生物活性が確認された健康な土壌がある一方で、微生物が検出不可(ほぼ生息していない)という土壌もある、というのが現在の日本農地の現実です。

しかしながら、微生物が検出されない土壌でも、作物は人工的な化学肥料を与えることで(土壌を酸化させながら)半ば強制的に育ち、我々生活者の食卓に届いています。本来、多様で豊富な微生物が活性する土壌では、3大要素はもちろん、それ以外の微量ミネラル成分も含め、微生物たちが土壌内の有機物を分解し、大自然の循環の中で作物たちに供給され成長していくのが地球本来のメカニズムなのです。


実証栽培協力農家様の開拓からはじまった「八百結び農法®」

「八百結び農法®」と名付けた肥沃な土壌を回復させる農法は、20年に渡る先人(2017年に他界)の研究成果を継承し、発展させた方法です。簡単にお伝えすると、それぞれ気候条件や地理環境の異なる土地土地の土着微生物を活性させる画期的な手法です。

私たちはまず、その研究成果が確かなものか確かめるべく、実証栽培に協力いただける農家様探しからはじめました。私たちの母体・背景は農業にゆかりはなく、当初そんな私たちに、大切な生産物の栽培方法実証試験をしていただける農家様はなかなか見つかりませんでした。そのような状況下、はじめて青森県の金賞受賞経歴を持つりんご農家様が一区画のみ微生物活性する培養水の定期散布に取り組んでいただけました。そして、2年目には富山県のお米農家様をはじめとしてご協力をいただける農家様が増えていきました。今でも実証段階から一緒に取組んでいただけました農家様には心より感謝しています。



全国各地の土壌で見事な作物が実り、確信を得た八百結び農法®

土着微生物を活性させる八百結び農法®は、全国各地で場所を選ばず成果を出すことができました。1gあたり数億単位の生息数を誇り、またその種類は現在確認されているだけで数万種(50,000~83,000種)といわれる土壌微生物は、温暖な土地、冷感地、その風土によってその組成バランス(土壌マイクロバイオーム)は全く異なり、各々土地に合ったバランスを保っています。つまり、土着の微生物を活性させることだけを行い、そのバランスを崩すような、有用菌を単に投入するという手法ではないことがポイントだったのです。

はじめてのりんご農家様が元気のなかったりんごの木で試したところ、「通常のりんごの木よりも、実も味も抜群によいりんごが収穫された」と報告を受けたときは本当にうれしく喜びました。

そのときに計測した微生物数は、6.3億個(/g)。これを基準点として、八百結び農法®を継続したところ、翌年の微生物数は、12.1億個(/g)まで高まり、土壌健康力が飛躍的に向上しました。そして、この変化は味にも影響が出るとともに、鈴生りに育った状態でも確認できました。実に、その7割~8割が、究極のりんごと呼ばれる「いぼりりんご」となっていたのです。



土の健康力を「見える化」し、生活者が食を選ぶための“ひとつの指標”としたい

1gあたりに億単位の微生物が生きているという事実は、まさに「見えない世界」の紛れもない事実なのです。しかし、私たちが口にする農作物は、この見えない世界の微生物によって支えられている土壌健康力によって栄養を供給されているのです。「食」という漢字は、「人」に「良」と表されています。その「食」のゆりかごである土壌の健康状態を生活者にお伝えできる術があれば、生活者の方々が本質的に健康な作物を選択する道しるべ(目印)になる、私たちはそう考えています。そして最先端科学では、微生物たちが、よいエクソソームを出していることが分かりはじめているのです。

この指標は、特定の作物に限られることではなく、広く全ての母なる土壌が対象となります。



土壌回復はカーボンニュートラルに直結する。微生物が生きやすい土地は、人にとっても生きやすい

土壌微生物が豊富な土壌では、微生物の棲み処となる炭素成分が多くなってゆきます。つまり土壌の酸化が止まり(土壌が酸化すると、二酸化炭素を放出します)腐植質が回復していくと、土壌内で二酸化炭素を結合貯留することができるようになります。元来「土は、大気中の2倍二酸化炭素を抱きかかえる保持能力がある」と言われています。実は、土は元々炭素の貯蔵庫なのです。しかしながら、化学肥料(世界で約1億4,000万トンの化学肥料が毎年土壌に投入)による土の酸化により、現在では、土中の二酸化炭素が大気中に放出する側に回ってしまっているのです。そして、何よりも微生物たちが生きにくい土壌となってしまっているのです。微生物がイキイキ活性する健康な土壌回復は、健康な農作物を持続的に生み出すのみでなく、大気中の二酸化炭素を抑制するカーボンニュートラルにも直結するのです。私たちは、土壌微生物活性こそが、異常な気候変動を食い止める唯一の希望であると考え、この事業を推進しています。


農薬・化学肥料を大量使用してきた日本の戦後農業。八百結び農法®は、その土地に合った方法で田畑を再生させる最適解

土壌微生物減少の主原因である「農薬と化学肥料の大量使用」は、直近100年に満たない人類史での出来事なのです。現在、世界の土壌に入る化学肥料量は年間1億4000万トン。使用量において、日本は世界の三本指に入っているのはご存知でしょうか?農薬・化学肥料が開発される約100年前は、大自然循環の中で作物は育ち、土着微生物と植物の共生の中で、「食」がもたらされてきたのです。野山では野生動物が多数生息し、その糞尿や死骸から長い歳月をかけ腐植成分が醸成(1立方センチ腐植成分が醸成されるのに約100年という歳月を経ると言われています)され、地下水や河川を伝って、田畑に循環供給されてきました。しかし、日本では戦後の需要拡大に応じて、農作物の大量生産が必要となり、単純に農薬と化学肥料を使用しない農業では供給が間に合わないほどの人口増加と飽食の時代になりました。また、世界では今も人口増加が続いています。しかしながら同様に、毎年、干ばつと砂漠化で日本の国土面積の約3分の1(1200万ヘクタール)が失われ、農業を行っている土地の約52%は土壌劣化が進行しているのです。

消費需要が拡大した今、フードロスを削減しても、戦前に戻った自然農業だけでは成り立たない現実もあります。八百結び農法®が実践する微生物活性は、特別な方法で良質な腐植成分を抽出し田畑に戻す、人の手を介するバイパス(して結ぶ)手術のような方法と捉えていただけるとわかりやすいと思います。長い年月の中で分断された自然循環を、その需要拡大に適応する形で、その土地土地(人々)に合った効率的な形で、田畑に戻す方法の総称が八百結び農法®なのです。


農林水産省が示した「みどりの食料システム戦略」に合致

農林水産省は国としての指針「みどりの食料システム戦略」を発表(2021年5月)しました。その戦略からの重要事項抜粋として、以下3点をあげたいと思います。

1.「耕畜連携」による環境負荷軽減技術の導入(現在から2030年頃まで)

2.バイオスティミュラントを活用した革新的作物保護技術の開発(2040年頃から)

3.土壌微生物機能の完全解明とフル活用による減農薬・堆肥栽培の拡大(2040年頃から)

上記3点のうち下線部分は、八百結び農法®の骨格であり、実践を既に開始しています。私たちの事業開発活動中に発表されたこの指針は、私たちの進んでいる道を後押ししていただける心強いものでした。


「需要」から「供給」をつくる

これまで農作物を生産する農家様へのアプローチを考えてきましたが、戦後長年培った生産方法を180度転換する方法に対し、根本から理解いただき、取り組んでいただくには難しい場面が多くありました。「食」の観点から言えば、最終的に食物を口にし、健康な身体を維持するのは生活者です。生活者の方々にこそ、今の土壌環境の実情、土壌微生物のチカラ、農作物成育の仕組みを知ってもらうことで、「需要」から「供給」をつくる必要があると真摯に考えています。

その実例として、全国からの旅人や地元の方々が連日集まる「鹿児島県初の野菜ソムリエさんがオーナーを務める“マミーズカフェ”」では、健康土壌で育った八百結び®の作物を集め、野菜ソムリエオーナー自らが土壌の本質を伝え、飲食を提供していただく取り組みがはじまりました。


微生物がイキイキ活性化している土を表現した「八百結び®」のロゴマーク

八百結び®のロゴマークでは、「微生物がイキイキ活性化している土」そのものを表現しています。

「土」には、目に見えないほど小さな「有機物」や「鉱物」などの粒子が集まり構成されています。正円形状の粒子を幾重にも重ね、結び合わせる事により、ひとつのシンボルマークとして構築しています。

縦横に繋ぎ合わせる事で柄としても使えるよう、「土が集積し、大地を、地球を形成するイメージ」と重ね合わせています。このシンボルマークの表現するよう、縦横無尽に結び・繋がり・連なり、地球上のありとあらゆる土を活性化してほしいという願いを込めつくられています。



「健康な作物を食べる」ことでカーボンニュートラルにも貢献する!

私たちが農業分野において最も実現したいことは、多くの生活者に健康な「食」を身体に取り入れてもらうこと。そして、その先に実現したいことは健康な土壌を取り戻すことで、カーボンニュートラルに貢献することです。

カーボンニュートラルという言葉では難しく思うことでも、すべては循環の中で行われています。健康な作物を得てもらうことで、その前提となる土壌環境が整備されることになり、その土壌環境改善は実はカーボンニュートラルに貢献することになります。つまり、健康な作物を生活者として食べることは、カーボンニュートラルに貢献していることになるのです。


八百結び®プロジェクトに「共感・共鳴」する仲間を集めたい

「八百結び®プロジェクト」は私たち一法人で成り立つものではありません。

地域に埋もれる家畜糞尿や残渣を供給・処理いただける方、健康な土壌づくりから健康な作物栽培をしていただける方、それをお買い求めいただく生活者の方々、またその連携を取り持つ自治体や流通・小売業の方々のご理解と行動がなければ進んでいくことができません。

少しずつ、共鳴していただける仲間が増えてきておりますが、より一層各地域内での連携を図っていける環境整備をし、間接的にでも「八百結び®プロジェクト」に携わっていただける方々が増え、健康な身体と生活環境を回復・維持継続できるようこれからも努めて参りたいと思っています。


◉ 「八百結び®」の詳細は以下ホームページをご参照ください。

  https://yaomusubi.com/





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