卒業後の多様なキャリアパスの実現を目指す。2021年開学の叡啓大学の試み「キャリアメンター制度」の裏側
叡啓大学は、2021年4月に広島市中区に新しく開学した県立大学で、2023年4月に3年目を迎えています。本学は、社会を俯瞰する視野を持ち、他者との協働のもと、文理の枠を越えた知識やスキルを組み合わせて課題の解決を図り、新たな価値を創り出すことのできる人材を育成し、地域から国際社会まで広く貢献することを目的として設置されました。
今回のストーリーでは、「キャリアメンター制度」導入の経緯や今後見据えるビジョンについてお伝えいたします。
叡啓大学の教育理念の中で、実社会で活躍する際に必要となるコンピテンシー(資質・能力)の育成・発揮・向上を図るために、専門知(リベラルアーツ)とそれらを活用する実践知を教育しています。すべての科目で学生参加を促す授業スタイルや、卒業単位の半分を英語授業で修得するプログラムなどが特色です。5つのコンピテンシー(資質・能力)「先見性」「戦略性」「グローバル・コラボレーション力」「実行力」「自己研鑽力」を身につけたと認められるものに学位を授与します。
「人と社会を前向きに変えるリーダー」を。キャリアに向き合う教育プログラム
叡啓大学のキャリアデザインは、授業とキャリア教育がシームレスとなっており、4年間を通じて「社会・企業」とつながり、学生自らが、キャリアに向き合う教育プログラムとなっています。具体的には、教育課程そのものが、将来にわたって自ら学び、自ら仕事を創り出して、社会にイノベーションを起こすことができる「人と社会を前向きに変えるリーダー(チェンジ・メーカー)」を育てる、社会が真に求める教育プログラムです。
例えば、企業等への就職を志向する学生は、入社翌日から新規事業のプロポーザルが提出できる人材になり、起業を志向する学生は、卒業後すぐに新しいビジネスをグローバルとローカルで立ち上げられる人材に育ちます。
ハブステーションとなるキャリアデザインオフィス
叡啓大学は、学生の多様なキャリアデザインをサポートするため、キャリアデザインオフィスをハブステーションとして、コーチング、キャリアメンター、叡啓大学実践教育プラットフォーム協議会、起業家育成コミュニティなどの関係団体とネットワークを構築し、学生の活動を推進しています。
また、専属のキャリアアドバイザーによるキャリア相談を随時受け付け、キャリアに関する図書等の閲覧や学生が職員やキャリアメンターと談話するオープンスペース、企業とのオンライン面談用のプライベートブースを整えています。
キャリアデザインオフィス
「キャリアメンター制度」導入までの道のり
2023年7月、本学は類を見ない試みとして「キャリアメンター制度」を導入しました。「キャリアメンター制度」とは、社会の第一線で活躍する社会人の方々にキャリアメンターとして登録いただき、本学学生が卒業後の多様なキャリアパスの実現に向けて、キャリア設計に関するアドバイスを受けられる制度です。
キャリア・性別・年齢・言語などの異なる、留学生支援や企業支援の一翼も担っていただく方々など30人を超える社会で働く人財にご協力いただいています。
叡啓大学は、1期生が3年生となり就職活動を本格化する2023年度に「キャリアメンター制度」の正式導入を目指すこととし、「キャリアメンター制度」の設計を行いました。
「キャリアメンター制度」は、大学設置認可の段階からあった構想であり、「叡啓大学実践教育プラットフォーム協議会」に所属する方々の中からご協力いただく予定でした。
しかし、それらの組織以外の方でも、叡啓大学を応援くださる企業家や社会活動家などの方々が沢山いらっしゃることを踏まえ、一層の多様性を確保する観点からも、組織にこだわらず、学生に対して協力したいという熱量をもった方に登録いただくことに舵を切りました。
キャリアメンター募集については、叡啓大学実践教育プラットフォーム協議会以外に範囲を広げるために、公募で応募者を募り、選考プロセスを経て登録してもらうことにしました。
※叡啓大学実践教育プラットフォーム協議会とは、学生の主体的な学びの実現とそれを通じた社会の発展に貢献するため、本学の実践的な教育に協力いただく県内外の企業・自治体・国際機関等を構成員としたプラットフォームです。2023年12月現在135の企業等組織にご参加いただいています。
キャリアメンター制度の設計を担当し、大学時代はよくキャリアアドバイザーに相談に行っていた、社会人歴4年目の叡啓大学職員 周藤佑佳は、「キャリアアドバイザーはセイフティーネット。漠然とした不安や何から始めたらよいかを壁打ちで見つけるサポートをしてくれる役割。一般的な大学によくあるキャリアアドバイザーでは、叡啓大学の学生のニーズに対応しきれないため、キャリアメンター制度の導入が必要でした。しかし、そのペルソナを作るのが難しかった。」と語りました。叡啓大学にマッチしたキャリアメンター像(ペルソナ)をさぐるため、メンバーみんなで案を出し合って、進めていきました。
同じくキャリアメンター制度の設計を担当した、職員の友次亜希子はペルソナとは何かという問いから検討しました。募集をした時に同じ属性の人が集まらないように、このプロジェクトに関わる担当者以外からの意見をヒアリングする必要があると考えました。課内のメンバー全員へ叡啓大学にふさわしいキャリアメンターのペルソナ像についてヒアリングを行いました。「地域で活躍した人」「スタートアップをした人」など様々な意見が上がってきました。みんなの意見をまとめると、叡啓大学のキャリアメンター像は「自分でその道を切り開いている人」となりました。ペルソナモデルを検討することで、叡啓大学の学生に必要なキャリアメンター像をイメージすることができました。
試行錯誤を繰り返し、試験運用からいよいよ本格スタートへ。
2023年1月中旬から3月中旬の約2か月間限定で3名の社会人に登録いただき、試験的に「キャリアメンター制度」の運用を開始しました。しかし、制度を利用した学生は3名のみでした。申し込みがなかった理由を検証したところ、学生が進みたいキャリアに近いメンターがいないことと、最高学年である2年生は就職活動が本格化しない中で将来が見えていない学生が多かったことが挙げられました。制度を利用した学生とメンターの方々にはアンケートやヒアリングを実施し、年度末の2023年3月には、来年度の本番運用の設計を確定しました。そして、需要があることを見込んで、多様な社会人を広く募集し、2023年度に本格実施することを決定しました。
2023年5月よりメンターを公募し、選考を重ねた結果34名のキャリアメンターにご登録いただきました。
「キャリアメンター制度」は、早いうちから自分がやりたいキャリア像が明確であり、その分野において社会の第一線で活躍している人から、キャリアデザインの実現に向けて具体的なアドバイスをいただき、キャリアの実現に向けて動き始める本学の学生にマッチした制度となりました。本格運用開始から、3名の学生がキャリアメンター制度を利用しました。2年生のマーティンさんは、「メンターとの面談は、素晴らしかったし、とても見識が深まりました。この経験を通して多くのことを学びました。」と制度について語りました。
キャリアメンターに相談する学生
本学の学生は、日々の学修の中で、社会や企業と関わることが多く、様々なキャリアの選択肢に出会います。一般企業に就職したい学生から、ベンチャー企業で働きたい学生、NGOで働きたい学生、海外でスタートアップしたい学生など、学生が希望する様々なキャリアを実現するための一つの手段として「キャリアメンター制度」を提供しています。「キャリアメンター制度」をはじめとする、叡啓大学キャリアデザインオフィスが提供する様々なサービスを学生が活用し、自分のキャリアを見つけていただきたいです。
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