キャンピングカーが災害対策本部に。震災から学んだレジャー以外の有用性
一般社団法人日本RV協会は、国内最大級となるキャンピングカーの祭典「ジャパンキャンピングカーショー2022」を2月10日〜13日に開催しました。
同イベントでは「守る・働く・楽しむ」をテーマに、防災やテレワークなどさまざまな活用シーンの展示エリアを設けて、多様なキャンピングカーライフを来場者に提案しました。昨今注目を集める、レジャーだけではないキャンピングカーの有用性について、日本RV協会会長の荒木賢治が語ります。
十人十色ならぬ「十車十色」のキャンピングカーライフ
――キャンピングカーの用途が多様化しているそうですが、特に多い利用方法は何でしょうか。
アウトドアで使うものと思われがちですが、一番多いのは「観光」での利用です。マナーを守りながらキャンピングカーを観光地の近くに駐車して宿泊することで、移動時間の節約になり、チェックイン・チェックアウトの時間も気にすることなく自分のペースで旅ができます。ペットを連れた旅行も気兼ねなく楽しめるでしょう。
ほかにも、テレワークやワーケーションでの仕事部屋として利用するケースや、感染症による隔離の一環としてキャンピングカーで療養するケースなども見受けられます。まさに十人十色ならぬ「十車十色」の使い方をされていますね。
――キャンピングカーの所有者は、主にどのような方でしょうか。
10年前は60歳以上のオーナーが多かったのですが、今では50代が最も多く、40代〜20代のオーナーも珍しくありません。若い方の購入が増えた背景には、分割払いがしやすいというキャンピングカーの特性があります。
一般的な自動車は、ディーラーで買うと最長7年ローンまでしか組むことができません。キャンピングカーは15年ローン、2022年2月からは最長で20年ローンまで組めるようになりました。1,000万円のキャンピングカーを月々5万円ほどで所有できるようになったのです。
また、キャンピングカーは価値が下がりにくく、5年前に800万円で購入したキャンピングカーを530万円で下取りしてもらったという実例もあります。そうした現状を踏まえれば、キャンピングカーの購入はそれほどハードルが高いものではありません。
防災グッズとしてのキャンピングカー
――「ジャパンキャンピングカーショー2022」では、防災をテーマにしたキャンピングカーの展示エリアを設けたそうですね。キャンピングカーの災害時の活用方法について教えてください。
日本RV協会では、東日本大震災のときに会員企業9社から20台ほどのキャンピングカーを東北に持っていきました。そこではボランティアさんの活動拠点として、また災害対策本部を設置して打ち合わせスペースとしても活用されました。
被災者に貸し出したい気持ちもありましたが、キャンピングカーの台数が圧倒的に足りない。そのため、被災者を支えるボランティアさんの支援としてご活用いただくことが多かったです。
――キャンピングカーを所有している被災者は、どのように活用していたのでしょうか。
自宅がいつ崩れるかわからないためキャンピングカーに避難した方、ペットと一緒にキャンピングカーに避難した方、授乳が必要な小さなお子さまと一緒にキャンピングカーに避難した方がいらっしゃいました。有事でも安心して過ごせるシェルターとして活用していたそうです。
――キャンピングカーがシェルターに適しているといえるポイントはなんでしょうか。
やはり空間が広いことです。熊本地震では、自動車に避難した方がエコノミー症候群になったと報道されていましたが、彼らは足を伸ばせない姿勢で寝ていました。キャンピングカーはフルフラットの就寝スペースを装備していることが条件となっているので、どの車種を選んでも足を伸ばして寝ることができます。
また、キャンピングカーはエンジン用のメインバッテリーと、居住空間用のサブバッテリーの2種類を搭載しています。エンジンをかけたり走行したりすることでサブバッテリーを充電できるため自立して充電でき、バッテリーに溜まった電気を使用することが出来る。被災地で一番大切なのは「通信」です。情報収集をしなくてはいけないのに、携帯電話の充電がないという事態は避けたいですよね。電力を確保できる安心感は、避難時のストレスを軽減してくれます。
国や自治体が取り組み始めた、災害時のキャンピングカー活用
――近年、日本RV協会の会員企業と行政での災害協定が盛んに結ばれていますが、国や自治体がキャンピングカーの活用に積極的になっているのは何故ですか。
東日本大震災や熊本地震などで、キャンピングカーの活躍を目の当たりにしたことが大きかったのではないでしょうか。キャンピングカーの特徴である空間の広さ、就寝スペースが確保できる点を活かし、遠方から数日かけて大量の物資を運んだ事例もあります。
加えて、災害が起きたときに国や自治体の職員は現地に招集されますよね。たとえば大雨が降ったときに、役場に集められるが仮眠する場所はない、でも緊急事態が解除されるまで役場に滞在しなくてはいけない。そんな状況を改善するためにも、国や自治体がキャンピングカーを持つメリットはあります。
――キャンピングカーを災害時に活用するのは、世界的に珍しいことなのでしょうか。
アメリカでは自治体や政府がキャンピングカーを所有しています。それを平時はキャンプ場などに低価格で貸し出して、有事のときには被災地で活用できる仕組みがすでに作られています。例えば、九州北部豪雨の被災地である朝倉市はキャンピングカーを所有して有効に活用しています。有事は対策本部や休憩所として、平時は観光協会がレンタカーとして町の活性化に利用しています。こうした事例を国内にも増やしたいですね。
――今後キャンピングカーは私たちの暮らしにどのような影響を与えるのでしょうか。
キャンピングカーが一番活用されている観光産業では、今後ますますキャンピングカーの需要が高まると予想しています。感染症対策として公共交通機関を使わずに旅ができること、電車やバスが通っていないエリアにも足を伸ばせることが「くるま旅」の強みです。更に宿泊施設の無い場所でも車中泊することができるので行動範囲が広がり自由度が増します。車で旅をするのが当たり前の時代がやってくるはずです。
同時に、今回お話ししたキャンピングカーの有用性をたくさんの方に知っていただき、国や自治体、個人のオーナーさんに防災グッズとしてもキャンピングカーをご活用いただきたいですね。
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