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「子どもたち自ら『学びたい』と思える仕掛け作りを」自立学習教材「Selfee」開発秘話

著者: 株式会社日本コスモトピア

日本コスモトピアは、学びで社会を変えるため、1982年に小・中・高校生の学習塾として奈良県で事業を開始しました。「子どもたち一人ひとりにほんとうに価値のある教育とは何か?」を問い、一人ひとりの学習進度、能力、個性に合う学習方法や教材で子どもたちの可能性を伸ばす「自立学習」を約35年前に日本で初めて提唱。自立学習によって「社会を変える」ことを目指しています。


前編では、日本コスモトピアが提供する自立学習教材「Selfee(セルフィー)」(https://juku-lp5.cosmotopia.co.jp/)がなぜ生まれたのか、開発時の苦労などについて、日本コスモトピアの下向峰子氏に話を聞きました。今回の後編では、Selfeeが社会の変化とともにどのように進化したのか、子どもたちの学びを支えるために必要なことなどについてご紹介します。

教材を通してどんな課題を解決すべきか?

当時、教材を作る時は、編集部が企画を立てて、それぞれの企画に応じて、大学の先生などその分野の専門家に問題作成を頼む形が通常。通り一遍というか。どの教材もベースになるものは意外と同じだったんですよ。けれどSelfeeは、当時主流だった教材とは全く違う形でしたから、導入した塾の先生としても、相当チャレンジングだったと思います。Selfeeという教材の理解を進めながら、教材に先生独自のアイディアをプラスして指導を行っていた塾が結構多かったです。Selfeeを導入してくれる塾が増えていくと、色々な要望をいただくようになりました。「社会の教材はないですか?」「高校生向けの教材はないですか?」といったようにです。サービス開始から10年は、完成した教科や機能から順に出荷して・・と、要望を形にする対応に追われていましたね。

約30年続くユーザー会


1996年に先生方からのご要望で、静岡県網代温泉で第1回目のユーザー会を実施しました。その後、先生たちが抱える課題や事例などを共有するユーザー会を毎年開催しています。どんどん変化する社会情勢の中で、学校は何を果たすべきなのか、その中で塾は何を果たすべきか。また、私たちは教材を作っている立場として、どんな課題を解決できるかを考えるきっかけになっています。マルチメディア解説(アニメーション動画での解説機能)を作ったのも、生徒が理解できるまで繰り返し動画解説を見ることができるようにというのが背景にあります。先生が一人の生徒に費やすことのできる時間にはどうしても限りがあるので。


また、塾の場合は、近隣の塾とは、いわゆる競合になるので、横のつながりを作ることが難しい。だからユーザー会は、「これでもいいんだ」「他にこんな考えがあるんだ」といったように、先生にとっても学びの場になっていると大変好評をいただいています。2022年からは、シンポジウムという形になり、先生たちがより刺激やモチベーションを得ることのできる内容になりました。

受け身の学習から、自分で前向きに取り組む学習に

<Selfee 中学数学構成図>


このように、社会情勢や学びの変化とともに、先生と一緒に進化してきたSelfeeは、全国で累計約5000もの塾で導入いただいています。一番の特徴は、生徒一人ひとりの目的や、つまずきやすさに合わせ、スモールステップで徹底的に学びを進められるところです。要点と基本問題や類題が記載されているテキスト、生徒一人ひとりの目的やつまずきやすい点を考慮したオリジナルの問題プリント、何度も見返すことのできる、音声と動画による解説で構成しており、子どもたち自ら「学びたい」「勉強って楽しい」と思えるような仕掛けにしています。


子どもたちって、〇(まる)をもらえる答えを知りたいわけじゃないんですよ。自分で納得して腑に落ちないと。Selfeeでは、基本問題だけでなく、数値を変えた類題を繰り返し解くパターントレーニングをすることで、子どもたちは「分かった」「できた」という経験をすることができます。

Selfeeのテキストで要点解説を読んだ後、何度も何度も解説動画を見て「分かった!!」と声をあげる生徒の姿を見て、感激で震えたと仰っていた先生もいらっしゃいました。生徒がそういった経験をすると、次から次へと学び進めたくなるんです。先生が課すのではなく、生徒自らが、宿題を持って帰りたいと言うようになるということを、あちこちの塾で聞きます。他にも、「自立学習指導に転換したら、5教科の点数が倍になった」「スモールステップ学習が、分かる喜びと学習意欲を増進させる」「受け身の学習から、自分で前向きに取り組む学習に変わった」といった嬉しい声が寄せられました。

<Selfee 中学数学 学習の進め方 / 進度チェック表>


約10年Selfeeを使ってくださっている先生から聞いたお話です。

「子ども一人ひとりに寄り添いたい」と、ご自身でオリジナル教材を作っていたそうなのですが、5教科やるなんてとても時間がないと、自立学習に興味を持ち、selfeeを導入してくださいました。子どもたちが、自分の進度表(カリキュラム)に基づいて自分でプリントを印刷して、自分で問題を解いたり確認していくやり方に驚いていらっしゃいました。


ご自身でもSelfeeを隅から隅まで使い、ユーザー会にも積極的に参加されていました。「子どもに全部任せていいのか」と、最初は葛藤があったそうなのですが、今では、勉強に集中できない子やつまずいているところがある子がいれば声をかけたり、質問に答えるくらいで、あとは生徒たちに任せているそうです。その後、先生が病気を患い入院した際も、生徒たちがSelfeeを使い学びを進めていたそうで、退院後には生徒が回答したプリントが机に山積みになっていたそうです。

そんな子どもたちの姿を見て、「この自立学習の方向で間違っていない」と確信を得たそうです。子どもたちが自立するためには、先生も信じて自立することが必要なんですよね。

必要なのは、生きるためのたくましさ

時代の流れとともに、色々なことが多様化してきて、子どもたちの育つ環境も徐々に変わってきています。自然に親しむ、怪我をしてでもそこを越えていくという時代から、安全な方に安全な方に、という時代に変化したことは、子どもに与える影響が大きいと思っています。


今は、虫を捕まえようと木に登ったり、森の中をかけて、切り株で足を切ってしまったりとか、そんな経験があまりできないんですよね。もちろん取り返しのつかないことになっちゃうのは良くないんだけど、そこのギリギリのところがどこなのか?というのを、子どもたちは経験を通して会得していくんですよね。難しいですが、それがすごく必要だと思います。


一番子どもたちに身につけてほしいものは、"たくましさ”。今の子どもたちは、生きるにあたってのたくましさがなくなってきていると思うんです。もちろん一部の人には当然あるんだけれど。それはやっぱり、物が足りすぎてるとか、手をかけすぎてるとか、「足らず」を知らないことが要因なのかなって。たくましさを持って、自分自身に期待をして、自分なりの目標をしっかり達成するという経験をしてほしい。失敗はないし、失敗しても全然大丈夫だから間違えていいんです。大人たちは、子どもたちが自力でできるための仕掛けだけ用意して、あとはちょっと背中を押してあげるだけでいい。これこそ本当の自立学習だと思うんですよね。


塾の先生や、保護者にも言えることですが、「観察」して「待つ」というのが非常に大事だと思うんです。その子を見ていると、「助けてあげたい」と思うかもしれませんが、それはちょっと待ってほしい。成長や学力向上に関しては、長い目で見てほしいなと思うんですよね。努力し続けても、努力した分だけ、ちょっとずつできるようになるわけでもなくて、急に目覚める瞬間が訪れるので、そこまで信じて待ってあげて欲しいです。みんな子どもの幸せを願っているのは同じですから。

子どもたちの好奇心と、アイディアを引き出す教材に

今後は、「教える側」と「教わる側」という感覚をなくしていけたらいいなと考えています。子どもたちの好奇心と、持っている力、湧いてくるそのアイディアなどを、学習を通して引き出すことができたらいいなと。そのために、Selfeeでもアウトプットができるような内容を用意して、認知能力と非認知能力を鍛えていけるようにしたいです。子どもたちが教材を作ってくれたらなお良いですね、主人公になっていくのが大事。大人を超えている子どもはいっぱいいますからね。ちゃんと1人の人間として、お互いに接することができる、認め合える関係。そのためにお役に立てるような教材作りができれば良いと思います。





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