輸送台数を減らす、輸送距離を縮める、グループ一体での生産物流最適化でカーボンニュートラルに貢献
「2024年問題」を控え、物流領域の効率化は待ったなし
環境省の報告によれば、2022年度の日本における部門別温室効果ガス排出量のうち、自家用車・営業貨物車などを含めた「運輸部門」からの排出量は全体の18.5%を占め、「産業部門」の34.0%に次ぐ排出量となっています(CO2 の部門別排出量(電気・熱配分後※1)。運輸部門の中でも特に貨物分野における温室効果ガス排出量削減の取り組みは遅れていると言われています。また、ドライバーの時間外労働時間上限規制がスタートするいわゆる「2024年問題」に伴う輸送力の減少と物流コストの上昇というリスクに直面していることも相まって、物流領域の効率化は待ったなしの状況です。
そこで、プライム ライフ テクノロジーズグループを構成する住宅会社のパナソニック ホームズ、トヨタホーム、ミサワホームの3社は2022年9月、「生産物流最適化ワーキンググループ(WG)」を発足させ、生産拠点の最適化、共同輸送、輸送能力の最適化、という3つのテーマで取り組みに着手しています。これらの取り組み内容と副次的に生じるカーボンニュートラルの効果について、3社の生産物流担当者に聞きました。
グループ各社の生産・物流拠点の相互活用の取り組みが加速
「2024年問題」に対して、グループ各社の生産・物流拠点を相互活用し、一体となって対応を図るべく、各社の生産物流担当者が参画するグループ横断組織「生産物流最適化ワーキンググループ(WG)」が発足したのは2022年9月のことです。メンバーは、ミサワホームの物流部門とミサワホームの子会社で輸送業務の運営管理を担当するCSロジスティクス、トヨタホーム、パナソニック ホームズの物流担当部門の4社です。
「まずは、住宅会社3社のそれぞれが保有している物流拠点、トラックの保有台数、いつ、どこに、どのような部材を、どこまで運んでいるのか、といった情報を共有したうえで、何ができるのかを考えていきました」と、WG事務局を務めるミサワホーム 生産統括部 生産統括課 課長の篠原友梨は語ります。
ミサワホーム(株)生産統括部 生産統括課 課長 篠原友梨
WGでの議論の結果、①生産拠点最適化(マーケットから最寄りのプライム ライフ テクノロジーズグループ工場で生産する地産地消の取り組み)、②共同輸送(長距離便において住宅会社3社の資材を相積み輸送)、③輸送能力最適化(各エリアで住宅3社が委託している車両を相互にフル活用化)の3つのテーマについて具体的な実証に取り組んでいくこととなりました。
プライム ライフ テクノロジーズ社 中期経営計画発表資料より抜粋
生産拠点の最適化による地産地消の取り組み
まず、生産拠点の最適化に関する取り組みについて紹介します。パナソニック ホームズの営業エリアは東北から九州までを幅広くカバーしていますが、九州エリア向けの資材の配送については、滋賀県東近江市の湖東工場から福岡県にある九州中継センターまでいったん運び、中継センターで預かった後、施工現場へ輸送しています。特に最もかさばる木製屋根パネルはトレーラーを使って九州中継センターまで運んでいます。
WGでは、この工程を見直して湖東工場では木製屋根パネルを小さなパーツに分けた状態で運び出し、自社の九州中継センターで組み立てを行う方法に変更しました。小型化することで、積載スペースを埋めやすくなり、他部材と混載して運ぶことで積載効率が高まります。それによって年間に使用するトレーラーの台数を70台以上削減できると試算した上で、2023年6月より実運用がスタートしています。
また、パナソニック ホームズの湖東工場で生産していた内壁パネルについてはミサワホームの福岡工場に生産を委託することとし、2023年より準備・試行をしたうえで2024年2月から生産が始まりました。九州エリア内での「地産地消」が実現したことで、湖東工場から九州中継センターまでの輸送を減らし、年間54台分のトラック輸送の削減が見込めます。ミサワホーム福岡工場から九州中継センターへの輸送は、九州に拠点を持つミサワホームの物流子会社CSロジスティクスが担当することにしました。
パナソニック ホームズ(株)物流部 物流企画課 主幹 河嵜祐治
「図面も品番も異なる中でミサワホームに生産をお願いするために、ミサワホームとパナソニック ホームズの製造スタッフがディスカッションを繰り返し、検討から1年ほどで実運用にこぎつけることができました」と、パナソニック ホームズ物流部 物流企画課 主幹の河嵜祐治が言うように、相互のベクトルがしっかり合致していたからこそ、作業を円滑に進めることができました。「生産拠点の最適化によるカーボンニュートラルへの貢献に加えて、パナソニック ホームズ部材を生産することで品質管理の面でも多く学ぶことがあったと立上げメンバーより聞いています」とミサワホームの篠原は副次効果についても言及します。
相積み輸送と海上輸送へのモーダルシフト
次に紹介するのがトヨタホーム、ミサワホームの2社による共同輸送の取り組みです。トヨタホームは春日井事業所、ミサワホームは名古屋工場、と同じ愛知県内に生産拠点を構えています。そこで、長距離輸送となる九州エリアへの輸送については、両社の資材を同じトラックに混載して運ぶことで効率化が図れると考えました。輸送手段については、トレーラーに混載しての海上輸送(フェリー)、大型トラックに混載しての陸送、JR貨物に混載する鉄道輸送の3パターンで検討しました。
国土交通省によると、輸送機関別の温室効果ガス排出量は、海上輸送はトラック輸送の約1/5、鉄道輸送では約1/11程度と試算(※2)しています。「それぞれの手法を使った場合の温室効果ガス排出量、積載率、コスト、ドライバーの拘束時間の減少(船便での輸送中は拘束時間外となる)などについて比較検討し、実際に運用するにあたってのルール作りなどにも着手しているところです」とCSロジスティクス 営業開発部 部長の堤国利は今後の検討課題について言及します。
CSロジスティクス(株)営業開発部 部長 堤国利
また、パナソニック ホームズは、湖東工場から九州エリアへの輸送で利用している海上輸送について新たな選択肢を増やすことで、輸送力の確保と陸送からのモーダルシフトを進めようとしています。現在は、湖東工場から大阪南港~北九州新門司港の海上輸送ルートを使っていますが、新たに敦賀港~博多港ルートについても加えるべく検証を進めているところです。「日本海ルートは瀬戸内海ルートに比べ所要時間は1日多くなってしまうのですが、繁忙期については、陸送より温室効果ガス排出量の少ない海上輸送で複数の選択肢を持っておきたい。異なる輸送航路があることはBCP(事業継続計画)の観点からも重要です」とパナソニック ホームズの河嵜は話します。
グループ内では、ミサワホームが鉄道輸送について経験値が高いことから、その共有によってパナソニック ホームズでも湖東工場~つくば工場(茨城県)間の資材輸送について鉄道輸送の選択肢を増やせないかと検討しました。最終的には実現に至りませんでしたが、グループ間であらゆるノウハウを共有することで、カーボンニュートラルにもつなげる取り組みに発展しています。
3社のトラックを融通し合い輸送能力を最適化
トヨタホームとミサワホームがともに愛知県内に生産拠点を構えていることは先にも触れましたが、パナソニック ホームズの湖東工場も近接エリアに位置しています。そこで、3社それぞれの工場で資材輸送に使っているトラックを、繁閑期に合わせて相互に融通し合えないかという発想が生まれました。「まずは3社の出荷状況を把握するとともに、各社の運送部門・協力会社の保有車両リストを確認し、実際にどこまで融通しあえるのか状況を把握することに努めました」と、今般の共同輸送プロジェクトを推進するトヨタホーム 調達・生産管理部 生産管理室 室長 梶川裕記は語ります。
トヨタホーム(株)調達・生産管理部 生産管理室 室長 梶川裕記
発注書のフォーマットについて3社で統制を図り、またドライバーにとっては通常と異なる会社の資材を運ぶことになるため、荷物引き取り時のルールなどについてマニュアルを作成し、円滑に作業が進むようにしました。
手始めとして、トヨタホームの屋根材をCSロジスティクスで輸送する実証運行も実施。日頃からトヨタホームが取引している運送会社担当者に立ち会ってもらい、屋根材を積み込む際の注意点などについてアドバイスを受けながら作業が行われました。「非常にスムーズに進み、本運用も問題なく行えることを確認することができました」と梶川は手応えを感じています。
共同輸送の取り組み事例
3社のトラックを有効活用することで、残業規制に伴う「運べない」というリスクの回避につながるだけでなく、運送会社にとっては繁閑差の解消で安定的に仕事を確保でき、ドライバーの離脱防止につながるという効果も得られそうです。
「繁忙期に車両が必要になった時には都度、声を掛け合ってトラックを融通したい。また、今後についてはトラックの積載率を高める方策についても考えていきたい」と梶川は展望を語ります。
CSロジスティクスの加茂富見雄は「温室効果ガスの排出量を減らすには、運送車両の台数を減らす、もしくは運行距離を減らす、の二つの方法があります。今回のWGの取り組みにより、前者については共同輸送、後者については生産拠点の最適化(地産地消)を行うことで解決の道筋が見えてきました。物流は現在「2024年問題」やドライバー減少に直面しておりますが、これらの課題を乗り越えていくための方策には、カーボンニュートラルへの取り組みとリンクする部分が少なからずあると感じております。温室効果ガスの排出を抑制するという切り口から「2024年問題」の解決にもつながる発想が生まれることも分かりました。視野を広げて物流問題の解決に寄与していきたいと考えています」と話します。
CSロジスティクス(株) 物流管理部 部長 加茂富見雄
「生産物流最適化WG」では、ミサワホームの篠原が「輸送方法の一つとして連結トラックの研究も進めたい」と語り、パナソニック ホームズの河嵜は「情報共有できる環境が整ったので自動運転、EVトラックの活用についても意見交換をしていきたい」と話します。3社が一体となったカーボンニュートラルの取り組みはさらに進化を遂げていくことになりそうです。
※1)出典:環境省 2022年度2022年度温室効果ガス排出・吸収量(2024年4月発表)全体版
※2)出典:国土交通省 モーダルシフトとは
**************************************
プライム ライフ テクノロジーズグループは、カーボンニュートラル達成に向けて事業で使用する電力の再生可能エネルギー化による「RE100」を目指すなど、あらゆる可能性を探り、取り組みを進めていきます。
*プライム ライフ テクノロジーズグループ社員によるカーボンニュートラル宣言*
ミサワホーム(株)生産統括部 生産統括課 課長 篠原友梨
パナソニック ホームズ(株) 物流部 物流企画課 主幹 河嵜祐治
トヨタホーム(株)調達・生産管理部 生産管理室 室長 梶川裕記
CSロジスティクス(株) 物流管理部 部長 加茂富見雄
CSロジスティクス(株) 営業開発部 部長 堤国利
◎プライム ライフ テクノロジーズ株式会社
▶ホームページはこちら
▶サステナビリティページはこちら
▶カーボンニュートラルの取り組み(インタビュー)はこちら
▶環境コミュニケーションブック ダウンロードページはこちら
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ