3年以内に65%が退職する介護業界。1万人の介護職と繋がって分かった「辞める理由」と、チームICT「ケアズ・コネクト」の挑戦
株式会社ブライト・ヴィーのマーケティング部 花澤です。
ブライト・ヴィーは創業9年目、代表取締役CEO飯田友一のフリーランスエンジニア時代の5年を加えると、延べ14年となります。
その14年の間で500を超える介護事業所の皆さんとお会いしてきました。
私たちのミッションは「働き続けたい介護現場の創造」であり、2020年秋から提供を開始したチームICT「ケアズ・コネクト」には、多くの介護事業所と向き合い、辿り着いた介護スタッフ定着へのノウハウが詰め込まれています。
チームICTという言葉は「チームを支えるICT」を形容するフレーズとして私達が考案したものです。
入職後3年以内に退職するスタッフが6割を超えると言われる介護業界で、今、何が起こっているのか?
そして、システムエンジニアの飯田が14年前に「未知」であった介護とどのように向き合い「ケアズ・コネクト」をデザインしたのか、飯田本人の言葉でその背景に迫ります。
14年前に出会った「介護現場」
今から14年前、リーマンショックが発生した2008年。
私は大手IT企業から独立し、フリーランスエンジニアとして初めてのシステム開発案件を探していました。それが全ての始まりです。
【募集】介護事業所向けのコミュニケーション+勤怠システム構築(愛知県)
業界を絞らず開発のお仕事を探す中、最初に目にしたのはこの案件。
「介護・勤怠・コミュニケーション」これらのキーワードは全て未知でしたが、事前打ち合わせで初めて訪れた介護施設での明るく元気な挨拶、スタッフを思いやる事務長の言葉、スタッフの方たちの「変わりたい。力を貸してほしい」といった空気感もあり、気がつけばそこは、エンジニアとしてのモチベーションを育む居心地のよい場所となっていました。
(分からないことばかりだけど、力になりたい!やってみよう!)
このチャレンジは、その後14年続く「介護の皆さんの力になれる仕事をしたい」と考えたブライト・ヴィーのはじめの一歩となったのです。
介護事業所向けのシステムを設計していた当時のホワイトボードメモ(2008年)
完成した最初のICT。喜びと挫折。
介護のことを全く知らない私は、事務長や現場スタッフの方たちのご協力のもと昼夜を問わず打ち合わせやヒアリング、現場視察を行い「介護現場の日常」を自らに叩き込んでいきます。
- 24時間勤務だから顔を合わせないスタッフが大勢いる。
- パソコンを触れないスタッフが40%程度。
- 最低1人は現場を見守る必要があり、チーム揃っての会議は不可能。
- 入退職の頻度が高く、顔を知らないスタッフとのコミュニケーションが日常。
前職の常識は通用しませんでした。
そして約3ヶ月後、ケアズ・コネクトの前身となる「介護事業所向けコミュニケーション+勤怠システム」が完成したのです。
完成したシステムの説明会資料(2009年)
マニュアルを整え説明会を実施した後、実際に使い始めて頂くと「これなら私にもできそう」「わかりやすい」「便利になった!」と、多くの嬉しい声を頂戴しました。
私は「もっと良くして喜んでもらいたい!」と更に改善に熱を入れていきます。
最新技術の導入、高度な機能の追加、トレンドに沿ったオシャレなデザインを次々と組み込む毎日…それは "エンジニア魂" に火がついた瞬間でもありました。
次期バージョンお披露目の日が近づくごとに、みなさんが喜ぶ表情が目に浮かび楽しみで仕方がありませんでした。
そして待ちに待ったお披露目当日、思い描いていた想像とは異なり非常に厳しい現実を突き付けられてしまったのです。
「使い方がわからない」「見づらい」
あげくの果てには「現場の気持ちを無視している。元に戻して」といった声が大半となる始末、導入時とは全く異なる厳しい意見ばかりで私は大きなショックをうけてしまいました。
介護スタッフの気持ちを120%理解する決意
現場の声を蔑ろにし「エンジニアのエゴ」でものづくりを進めてしまったこの出来事は、その後のブライト・ヴィーを形作る大切な学びとなっており、今も気をつけていることです。
「現場以上に現場の気持ちを理解する。ITスキルへ配慮。優しく、温かなシステム」
私は当時このようなメモを記していました。
「これが出来ればきっと介護の力になれるはずだ」と考え、その数年後の2014年2月、株式会社ブライト・ヴィーの設立を決意します。
創業後は、更なる現場見学や夜勤の体験、全国で開催される介護職向け研修参加などを通じ、多くの介護関係のみなさんと交流を重ねました。
そして気がつけば自分自身が介護職の皆さんと同じ目線に近づけている実感も持てるようにもなり、現場の声に即したシステムの改善に加え、オリジナルの介護記録システム、見守りIoTプラットフォーム「ケアデータコネクト」の構築などに取り組みました。
そんな中、ぽつりぽつりとある声が耳に届き始めます。
介護スタッフが辞めていく…
2017年頃、よく知る理事長や事務長から「スタッフが足りない」「どんどんスタッフが辞めていく」「採用できない」という声が聞こえ始めたのです。
時には「ICTでなんとかできない?」なんて相談を頂く機会も数多く。
その当時、介護スタッフの離職について知識の乏しかった私は直感的に(給与の問題かな…それは自分が解決できるテーマじゃないな)と思ってしまいました。
「ICTで解決するのは難しいですね、すみません」と断る日々…今思い返すと、とても恥ずかしい応対です。
しかし、その後も同様の相談は止まりません。
(まただ、何が起こってるんだろう…)
疑問は日々募り、私は介護人材不足の背景を辿り始めました。
3年で65%が退職をする介護現場の現実
介護人材不足について調べていく中で最初に驚いたのは、この「65%」という数字。
仮に65%の方が、異業種へ転職しているなら介護職は減る一方ですが、そうはなっていません。いくつかの介護事業所に辞めた方達の転職先を伺うと、1つの共通点が浮かび上がります。
「少し離れた施設で働いてるみたいだよ」
「3ヶ月くらい休んでから近所の施設で働いてるって噂」
退職はしたものの、近隣の介護事業所へ移籍されている方が圧倒的に多かったのです。
介護スタッフの定着を作りたい私たちは、この転職の流れを断つこと、退職の理由の克服が重要だと考えました。
1万人の介護職と繋がって分かった「スタッフ定着3つのポイント」
① 「辞めない理由」を教えてくれた介護事業所
この資料は厚生労働省から出ていた「介護事業所を辞めた理由」です。
当時、多くの事業所がこのような退職理由で困っていらっしゃる一方、「うちはこの上位3つの理由では辞めないなぁ」という事業所にも出会い、その辞めない理由が共通していたことで、私たちは1つの考え方にたどり着きました。
- 私必ず戻ってくるので席あけておいてくださいね!
- このメンバーで働けて嬉しい
など、チームワークやコミュニケーションの充実が、スタッフの定着に大きく寄与することは明白でした。
スタッフ定着ポイントの残り2つ、
② 尊重の欲求と介護スタッフのモチベーション
③ 次代を担う若い介護スタッフが仕事に求めるもの
に加えて、
- 辞めた人はなぜ近隣の施設へが向かう?
- 辞める前の小さな変化に気づいて支え合う。
- 心理的安全性の重要性
このようなのヒントから、私たちは働き続けたい介護現場をサポートするICT「ケアズ・コネクト」にたどり着いたのです。
もちろんケアズ・コネクトには、フリーランス時代の反省全てがこめられています。
介護スタッフの定着をICTで作る「ケアズ・コネクト」の挑戦
「働き続けたい介護現場に大切なことは何か?」
この課題に正面から向き合い生まれたのは、
介護事業に特化したポータルシステム「ケアズ・コネクト」です。
日常課題を解決するバックオフィス業務(勤怠管理・情報共有・コミュニケーション等)に、
「辞めない介護事業所」から学んだスタッフ定着エッセンスや、
心理的安全性を高める様々な仕組みが融合されています。
私たちは、ケアズ・コネクトを通じて、介護事業所のスタッフ定着と現場課題の解決に寄与すべく、現場の皆様との対話を大切にしていきたいと考えています。
4月1日を夢を語る日に! PR TIMES社企画の #April Dream(エイプリルドリーム) に参加しました!
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参考URL
[ケアズ・コネクト公式サイト]
[介護人材の確保について 平成27年2月23日]
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