「自分をケアすると今が変わり、未来が変わる」パンデミックの中で誕生したシングルマザーのケアと学びの場
NPO法人シングルマザーズシスターフッドは、シングルマザーの身体と心のケアを支援する団体です。ひとり親の女性が自分をセルフケアし、自分らしく生きられるようにサポートしています。シングルマザーズシスターフッドは、なぜシングルマザーに特化した支援を行っているのでしょうか。代表理事の吉岡マコが語ります。
前身となる産後ケア団体では出会えなかったシングルマザー
代表理事の吉岡は、1998年から約22年間、認定NPO法人マドレボニータのファウンダー・代表として活動をしていました。マドレボニータは、産後ケアの普及・啓発を行っている団体です。
自身も20代でシングルマザーとなった吉岡には、マドレボニータの活動の中で気になることがありました。それは、シングルマザーの姿を見かけないこと。
「シングルマザーが産後ケア教室に来ることはほとんどありませんでした」。
2011年からは、ひとり親や多胎児、障害がある子どもを持つ親など、社会的に孤立しやすい属性をもつ母親たちが、気軽に産後ケア教室に参加できるように、「マドレ基金」を設立。「産後ケアバトン制度」という受講料補助の仕組みを作りました。
「受講料を無料にしてもなお、ひとり親の参加率は全体の1割程度。シングルマザーの参加率の低さは、経済的な問題だけではないということがわかりました。自分自身のマイノリティ性を意識せざるを得ないということ、ひとり親だということを打ち明けにくいこと等が理由だと思います」。
パンデミックの中、シングルマザー向けの講座を開始し大反響
2020年4月、新型コロナウィルスの感染拡大によるパンデミックの中で、シングルマザー向けのオンライン講座を開始すると、開始直後から大きな反響を呼びました。
「新型コロナウイルスのせいで、産後ケア教室が開催できなくなりました。シングルマザー専用の助成金がプールしてあったこともあり、シングルマザー向けのオンラインプログラムを新たに開発することになりました」。
募集開始1週間で約100件もの申し込みが殺到。最終的に、9カ月間で176回の講座を開催し、参加者数はのべ1216人となりました。シングルマザーのケアに対するニーズの高さが浮き彫りになったできごとでした。
「産後ケアプログラムと、ひとり親向けのセルフケアのプログラムは似ているところもありますが、背景にある困りごとが異なります。シングルマザーには、自分がひとり親だと打ち明けられる環境と、ひとり親同士のつながりが必要だと感じました。自分自身の子育てが終わるタイミングで、マドレボニータの代表を退き、シングルマザーのケアをするための団体を立ち上げました」。
こうして、吉岡は2021年にシングルマザーズシスターフッドを立ち上げました。活動を通して、シングルマザー同士が交流し、仲間に出会える機会を提供することも、重要な目的。 団体名の “シングルマザーズシスターフッド”には、シングルマザー同士が地域を超えて、助け合える関係を築いて欲しい、そのような願いが込められました。
シングルマザーが本来の力を発揮するための3ステップ
シングルマザーズシスターフッドの具体的な活動内容は、「セルフケア」「学び」「貢献」という3ステップに分けて行われます。
セルフケア講座では、ストレッチや深呼吸と瞑想、参加者同士の交流を行います。
「30分という本当に短い時間なので、何かが劇的に変わるわけではありませんが、まずは、今の心や体の状態を良くするステップとして、誰もが気軽に参加できるよう、定期的に無料で開催しています」。
体の状態が整うことで心も落ち着きを取り戻します。力が湧き、「未来をもっと良くしていきたい」、「知識を得たい」「スキルを身につけたい」という人のために、次のステップとして、学びの機会を設けています。
「一時的に体と心が楽になるだけではなく、継続的に何かしらの努力をして、未来を変えていくためのアクションが、学びのステップです。セルフケアと学びのステップを経て、数カ月で劇的に変わる人もいます。知識やスキルを身につけて、仕事で活躍するようになったり、望んでいた職に就けたり、転職できたり。自信をなくし、心身ともに病んでいた方が、元気を取り戻していく姿を様子を、何度も目の当たりにしてきました」。
講座を終え、自信をつけたシングルマザーたちからは「自分も誰かのために何かしたい」という声が届くように。何かを与えてもらう側から、今度は自分の力を発揮し、貢献することができる場も用意しています。新しく入ってきた受講生を、メンターとしてサポートしたり、寄付集めの際のボランティアをしたり。最終ステップの「貢献」です。
「人は、助けてもらうだけでは自分の力をまだ感じられません。私たちはあえて、ここに集まるシングルマザーの人たちを弱者として扱わないよう気をつけています。どんな人にも、本来持っている力があるという信念を持っているからです。何らかの理由でそれができない状態にあるのであれば、発揮できるように私たちがサポートしたいと思っています。元気になって力をつけた人たちは、今度は誰かのために貢献する。この循環が生まれることが、私たちのためにも、社会のためにもなるはず。「貢献」のステージに行ってもなお、セルフケアは必要です。セルフケアの場には常に身を置きつつ、少しずつみんなで成長していく。そのような循環を目指しています」。
2023年5月~10月には、10代~30代のシングルマザーの「はたらく」を応援する集中プログラムとして、第1期「シングルマザーズ デジタル キャンプ」を開催します。オンラインの集合研修と一泊二日のリアル合宿を通して、ライフスキルを学び、生きる力を取り戻すための講座です。2024年秋には、第2期のコースを予定しています。
「シングルマザーは、自分を大切にするということに罪悪感を持っているっていう方が非常に多いです。母になったからには、この子のために生きなければ、という考えが強い。そんな彼女らには、自分をケアするということは、大人として責任ある行動だから、セルフケアはわがままでも贅沢でもないと伝えています。一人の自立した大人として、自分を大切にセルフケアする姿を子どもたちにも見せてほしい。私たちのサポートを、必要としているシングルマザーに届けていきたいです。」
シングルマザーズシスターフッドではこれからも、ひとり親の女性が、本来持つ力を発揮して、活きいきと暮らしていけるような活動を目指していきます。
本講座は、2022年に一般社団法人グラミン日本が休眠預金等活用法に基づく資金分配団体として採択を受けて実施する「シングルマザーのデジタル就労支援」事業の一環です。そのため、対象となる10代~30代のシングルマザーの受講料は全額免除になります。
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