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名鉄と日立の「生成AI技術検証」社内文書という“リアルデータ”と生成AIの新結合

著者: 株式会社 日立製作所


話題の生成AIをリアルな実務に活用しようという試みが本格化しています。多くの貴重な知見を得られた名鉄グループ2社と日立による技術検証は、ビジネスの現場における生成AI活用の種々の課題を明らかにしながら、改めて大きな可能性を確認できた実り多きプロジェクトとなりました。まず紹介するのは、企業内部に大量に蓄積されたリアルなデータと生成AIを組み合わせて新たな情報活用を促すユースケースです。

2つの生成AIユースケースで技術検証を実施

先進的なデジタル技術を事業経営や業務に積極的に活用している名鉄グループでは近年、学習データをもとに新たな文章や画像などを生みだす生成AIに関心を寄せるグループ会社が増えていました。各社から多くの問い合わせを受けていたグループ中核企業・名古屋鉄道株式会社(以下、名鉄)は、2023年5月に名鉄グループにおける生成AI活用のルールを定めたガイドラインを策定。さらに生成AIによる管理業務効率化のための技術検証を計画し、ITベンダー数社に検証に関する協力提案を依頼しました。


名鉄グループの情報システム会社である株式会社メイテツコム(以下、メイテツコム)も参画したこの技術検証では、計6つの生成AIユースケースを設定。そのなかからまずは、名鉄による「社内報・社史情報検索」と、メイテツコムによる「ヒヤリハット履歴情報検索」という2つのユースケースの技術検証を実施することが決まりました。


2023年9月、名鉄は提案を依頼した数社から技術検証のパートナーとして日立を選定。日立は生成AIに関する技術者や研究者、さらにセキュリティ、法務、品質保証、知的財産などのスペシャリストを集めた「Generative AIセンター」を中心に、生成AIのさまざまなユースケースに関する知見を豊富に蓄積しており、今回の名鉄グループの技術検証でもその強みが遺憾なく発揮されました。


パートナーの選定について、「生成AIは新しい技術で、その活用に関してはまだ各社手探り状態にあると思います。そうしたなかで、古い紙媒体なども含む大量の社内文書から新たに知識データベースを構築して、日立さんのセキュアなデモ環境下で検証を実施するという技術力や提案の具体性に信頼感を覚えました」と振り返るのは、名鉄の技術検証責任者である西村 慎吾氏です。




名古屋鉄道株式会社

デジタル推進部

グループDX 担当課⾧

西村 慎吾 氏


印刷媒体などの膨大な非構造化データから知識データベースを構築


2023年10月、日立は名鉄グループ2社の技術検証に向けて検証基盤・環境の構築を完了。その翌月から、名鉄のユースケースである「社内報・社史情報検索」の検証が始まりました。このユースケースで取り扱うのは、2000年代以降に発行された名鉄グループ社内報『れいめい』のデータと、程なく創業130周年を迎える名鉄の社史に掲載された膨大な情報です。今回の技術検証では、これらのデータの一部を活用し、社内文書の検索・抽出、そしてユーザーによる問い合わせへの回答文作成を生成AIが実行します。


検証はまず、社内報と社史に掲載されたすべての情報から新たな知識データベースを構築することからスタートしました。印刷物をスキャンした大量のPDFデータなどには、一般的な横書きに加え、日本語特有の縦書き文書も含まれるなど、多種多様な体裁や形式が混在。こうした大量の非構造化データをデータベースに取り込むのは決して容易ではありません。


データサイエンティストとしてプロジェクトに参加した日立の松本 晃は、「文書ごとにレイアウトが異なるので、各文書に合わせて前処理を適用しないと、AIはそれを文章としてうまく認識してくれません。そこでデータサイエンティストは、入力する文章ごとに自然言語処理でその構造を分析・調整し、細心の注意を払いながら知識データベースを作っていく必要がありました」と説明します。





株式会社日立製作所

Data&Design Data Studio 主任技師

松本 晃


“生成AIによるリアルデータ活用”というハードルを越えて 

この検証で日立は、形式の異なる文書を知識データベースに取り込む際に細やかなチューニングを施しました。さらに、ユーザーからの問い合わせに生成AIが高精度で回答できるように、生成AIに与える指示の仕方を工夫するプロンプトエンジニアリングなどの技術支援を提供。その結果、目標としていた一定レベルの回答精度を達成しています。


名鉄の西村氏は、「生成AIはまだこれからの技術であることから、こちらとしても当初から“100%”は求めず、KPIなども設定せずに検証を行いました。ただし、業務効率化や生産性向上に向けてめざしていた6~7割程度の精度は達成できました」と検証の成果を説明します。


一方、プロジェクトを担った日立の片渕 凌也は、「電子データのようにある程度構造化された情報の読み込みに関する知見はあったのですが、お客さま企業が大量に蓄積してきた非構造的なリアルデータを取り扱った今回の検証は、私たちにとってもチャレンジングな試みでした」と本ユースケースの難しさに言及。企業による今後の実務的な生成AI活用に向けた困難と課題を認識したと言います。





株式会社日立製作所

Data&Design Data Studio

片渕 凌也


➡後編につづく:「新たな価値創出のシーズと進化し続ける生成AI」

https://deh.hitachi.co.jp/_ct/17694251?utm_source=prtimesstory&utm_medium=prtimes




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