【音のプロに聞いてみた!③】窮屈な空間を音で広く感じさせる方法があるってホント?
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音のプロに聞いてみた!シリーズ概要
40年以上に渡り商業施設や家電の最新の音を手掛けてきた
サウンド・スペース・コンポーザー井出 祐昭氏に
仕事の裏側や、私たちの傍にある音の問題、
今からでもできる音の工夫について聞いてみました。
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今回のテーマは「窮屈な空間を音で広く感じさせる方法があるってホント?」
ただっ広いオフィス、でもなんだか狭く感じる…
決して狭い家ではないのに、思ったより広々と感じない…
ゆったりとした空間にしたいのに、予算がない…
今回はそんな「空間」のお悩みに切り込んで見ました!
そもそも、狭いわけじゃないに窮屈感が出る理由ってなんですか?
ー音響的に言うと、音が近すぎる、ということです。
この場合、音は直接音も反射音も含みます。
逆に、音が出てから直接届くまでの時間や、反射した音が届くまでの時間が長いと広いと感じます。
目をつむっても、空間の広さや狭さを感じたりできるでしょう。
私たちは、視覚のみならず聴覚からも広さ狭さを感じ取ることができるのです。
「狭いわけじゃないのに窮屈感を感じる」というのはそういうことですね。
窮屈な空間を音で広く感じさせる方法があるってホントですか?
ーそう、逆を言えば、狭くても広く感じさせることが出来るのです。
その昔、幕張メッセで大きなイベントをやった際、広い空間なのに、反射のタイミングが悪くて声が聴き取りづらかったことがあります。
そういう時は、後ろの壁をもっと後ろにしたりなどすると良いのですが、物理的にやろうとすると大変な事になりますよね。
それを音響的に壁を後ろに持っていく、具体的に言うとディレイをかけて時間をコントロールするようなことを行いました。
実際の建築空間よりも広くすることができた一例です。
また、100人くらいの狭めの教会を手掛けた時にも、ヨーロッパの教会みたいにもっと広い空間にすることはできないかな?と思い天井を高く感じさせる音響処理を行いました。
ここでは、時間だけではなく残響のコントロールをして、実際よりも10m位天井を高くしてみました。
結果、目を瞑るとドカンと広く感じるようになりましたね。
音の特徴として、時間を自由自在にコントロールして空間をスッキリ感じさせることができます。
特殊なことはここでは言えませんが、「音で広く感じさせる」技術というものは実際にあって、実現可能です。
私たちにも簡単にできる方法はありませんか?
身近なところで言うと、ラジカセやスピーカーの置き方で変えられます。
音が出る方を自分の方に向けると、スピーカーから自分までの距離で完結してしまいますが、ラジカセを壁の方に向けて斜め上にすると、反射する音が加わり、響きが生まれ、広く感じることができるのです。
音が近くの壁に反射して、それがまた斜めに反射して、天井に当たって、逆の壁に当たって…と反射音が何度も壁や天井に当たります。反射した音が遅れて耳に届くことで、空間全体としての「響き」になり、広く感じるという仕組みです。間接照明のみたいなものですね。
角度をつけるだけでできるので、PCのスピーカー、Bluetoothスピーカー等でも出来ます。
少し高度なパターンとしては、近くの置物等も斜めに置くとそれもまた効いてきます。角度がポイントですね!
「広く感じさせる音」もあるのですか?
ー作り方によっては、音そのものが広く感じさせる効果を発揮することがあります。例えば、やまびこや森の中の鳥の鳴き声等、はじめから遠くに響いている音を掛けると、広く感じられる傾向にあります。
中でも高い音の方が響いていることが分かり易いです。低い音は、拡がるには拡がりますが、反射していても分かりづらい特徴があります。
高い音はやや耳障りにはなりますが、直進する特長を持っているため距離感を感じる音になり易いのです。電話の音がどこから鳴ってるのか分かりづらいのは、複数の距離感を持つ特徴によるものです。
どんな空間にもその空間の「響き」を持っています。空間の響きの音色と、スピーカーから出す音の響きの音色、この2つを水のように溶け合わせることがコツです…と言っても少し難しいかもしれませんが、私たちが音のプロデュースをする際は、このような音のノウハウを用いて商業施設を森にしたり、介護施設のお風呂を露天風呂にしたり!音によって見違えるような驚きをを心がけています。
おまけ的なことですが、これもお勧めです。
寝る前に目を閉じて耳を望遠鏡みたいに、近くの音から段々遠くの音を聴いてみると意外と普段聴いていない音が聞こえてきます。あれをやると、狭い所にいても広く感じることができます。しかも、不思議と安心して、入眠できるというメリットもあります。
プロフィール
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井出 祐昭 HIROAKI IDE
サウンド・スペース・コンポーザー Sound Space Composer
有限会社エル・プロデュース代表取締役
井出 音 研究所 所長
ヤマハ株式会社チーフプロデューサーを経て、2001年有限会社エル・プロデュースを設立。最先端技術を駆使し、音楽制作、音響デザイン、音場創成を総合的にプロデュースすることにより様々なエネルギー空間を創り出す「サウンド・スペース・コンポーズ」の新分野を確立。イマジネーションを最大限に喚起する次世代の立体音響システム“ELPHONIC”を開発し、医療・健康分野との関連も深めている。
主な作品として、30周年を迎えるJR新宿・渋谷駅発車ベル、愛知万博、上海万博、浜名湖花博、表参道ヒルズ、グランフロント大阪、東京銀座資生堂ビル、TOYOTA i-REALコンテンツ、TOYOTA Concept-愛i、SHARP AQUOS、立川シネマシティ、世界デザイン博など。
またアメリカ最大のがんセンターMD Anderson Cancer Centerで音楽療法の臨床研究を行う他、科学と音楽の融合に取り組んでいる。最近では、日本ロレアルと共同で髪や肌の健康状態を音で伝える技術を開発。米フロリダ州にて行われた化粧品業界のオリンピックである第29回IFSCC世界大会、PR分野の世界大会であるESOMAR 2017にてグランプリを受賞。
http://elproduce.com/
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