駆除エゾシカの高品位レザーライダースジャケットブランド 「Yuku Deer Leather Wears」、命の廃棄という社会課題の解消に取り組む為、北海道へ移住した創業者のストーリー
「駆除鹿の命を纏う」駆除エゾシカを利活用するレザーライダースジャケットブランド 「Yuku Deer Leather Wears」命の廃棄ともいえる社会課題の解消に取り組む為、北海道へ移住した創業者のストーリー
このストーリーでは、私がブランドを立ち上げた経緯と実現したい世界、異業種から参入し、数カ月で商品化を果たせた出会いや、社会問題となっている駆除鹿の利活用の現状についてお話しします。
Your footprints celebrate nature.
Yuku Deer Leather Wearsは、北海道の野生エゾシカの皮を、日本国内のタンナーで植物タンニン鞣しを行い、日本国内で精緻に縫製した高品位なレザーバイカージャケット(ライダースジャケット)を産み出しています。
私達は、人と自然の共生を実現していくブランドです。
Yukuはアイヌ語で鹿を意味します。Yuku Deer Leather Wearsは、北海道で駆除される鹿から国内最高峰の鹿革を産み出し、魅力的なレザージャケットとして製造販売することで、獣害駆除によって命を奪われた鹿の皮の廃棄をゼロにすることを目指しています。
命を使い切らず廃棄する現状に違和感を覚え、鹿革のレザージャケットとして利活用したい思い
命の廃棄をブランドビジネスで止めたい!
2022年、グロービス経営大学院の授業の一環で獣害駆除をビジネスの力で農業従事者とハンターのペインを解決する為の研究をしていました。
研究の前段、事実関係の整理の時に、駆除された害獣の約90%が活用されておらず、その多くは廃棄されている事実を知りました。
人間社会の要請から、獣たちの命を奪うことは共生の為に仕方がないことと思いますが、駆除した命は使い切ることが、奪う側の最低限の責任ではないかと現況に違和感を覚えました。
同時に、16歳からレザージャケットに親しんできた私にとっては、鹿革のレザージャケットは欧米のブランドでは高級な商品の代名詞であったことが頭に浮かび、革としても利用されないことに疑問を感じました。
もし、駆除された鹿の皮を、欧米のラグジュアリーブランドが使用する革と同等かそれ以上の革として開発できれば、適正な出口として駆除鹿の廃棄を低減し、利活用を推し進めることができる可能性があると考えました。
修士課程を終えてもその考えは大きくなるばかりで、2022年末に新卒以来勤めていた広島のテレビ局を早期退職し、駆除されたエゾシカの高品位な革を使い、主たる原材料を含めオールジャパンメイドの高級レザージャケットブランド“Yuku Deer Leather Wears”(ユク ディアレザー ウェアーズ)を立ち上げ、北海道ニセコエリアの蘭越町に移住しました。
原材料の調達ルート構築のため東奔西走
最初に動いたのは原材料の調達ルートの構築でした。
商品開発の前に、自身のバリューチェーンを構築できなければ事業化ができないからです。
ネットの情報を基に、テレビ局の休日を使い東京、兵庫、奈良、そして中国地方を回りタンナー(鞣し業者)や駆除獣専門の所謂ジビエの食肉加工販売業者などを回りました。
人づてに紹介を重ねるうちに、気になっていた革のタンナーへの直接ルートが突如開かれたのです!
同じ志を持ったレザー業界の巨匠との出会いで起業へ
人類は繊維を手に入れるまで、狩猟した動物の毛皮や革を衣服を始め様々な道具に使っていたといわれています。
狩猟した獣から剝がした皮は、そのままでは固くなったり、腐ってしまいます。
自然の偶然や、人類の経験の過程で革を柔らかく安定化させる”鞣し”の方法が生み出されてきたとされています。
様々なルートがあったと言われていますが、そのうちの一つとして、ユーラシア大陸から朝鮮半島を経て山陰を通じて兵庫県に鞣しの技術がもたらされました。
その技術によって、当時から鹿の革を生産し、武士の甲冑や武具などに使用されていたといいます。
特に姫路は、古くは塩と菜種油のみを使った”白鞣し“と呼ばれる古の鞣し方法が盛んな土地で、現代まで日本を代表する皮革生産地となっています。
私は起業を決める前に、その古の鞣しを復活させた記事に触れ、その思いと革本来の白さに心を奪われたことを思い出し、何とかその革を復活させた方の革を使えないかとコンタクトルートを探っていたところ、幸運にも山陰のジビエ工房との打ち合わせの過程でその方をご紹介いただくことができました。
その週末に広島から車を走らせ、その方の工場に伺いました。命の廃棄をレザー消費から変えていきたいこと、ライダースジャケットファンの革への拘り、そして起業への思いをお話しさせていただきました。
起業経験も無く、異業種からの参入で熱意だけの私の話を辛抱強く聞いてくださり、私の志を受け入れて下さいました。
なんと、その日のうちに夢にまで見たベジタブルタンニンレザーを売ってくださり、更にエゾシカのハンターまで紹介してくださったのです!
この方との出会いが、最終的に起業を決めた瞬間でした。
革はそろったものの、洋服づくり未経験で苦戦の日々!
原料の調達ルートが出来ました。
これは私の取って非常に大きな進歩でした。
この時点で、既に3モデルのデザインは固まっていましたが、洋服づくりの経験のない私には縫う力もパターンを作る能力もある筈がありません。
ネットで調べてもレザージャケットを、しかも厚さのある革の”ライダースジャケット“を縫ってくれる工場を見つけることは不可能でした。
たまたま知り合いだった広島にある日本のデザイナーズブランドを長年縫ってきた工場からも、私の求める回答は得られませんでした。
途方に暮れた私は、勇気を出して革ジャン業界の重鎮の一人に直接コンタクトを試みたのです。
そして扉は開かれた。 レザージャケット試作開発をスタート!
その方は、精巧な復刻ジャケットを創り出し、ファッションの世界でリプロダクトの分野を築いた国内ブランドに籍を置き、長らく商品開発の責任を負っていた方でした。
数年前、何かのご縁で革ジャンライフを投稿していた私のSNSプライベートをフォローして頂き、高頻度で「いいね」を押して頂いていた方でした。
ダメもとでご連絡を取ったところ、お打ち合わせのお時間を頂戴することができたのです。
私は広島から関西まで車を走らせ、ライダースジャケット作りの要、縫製会社の選び方、鞣し会社との距離感など、レザージャケットを商品化する為の様々なエッセンスを頂戴することができたのです。
その教えに従い、最もフィーリングの在った縫製会社様との試作品開発をスタートすることが出来ました。
2次元のデザインをパタンナーが3次元に再構築 サンプル第1号が完成!
ライダースジャケットは完成されてから長い時間を経てきたデザインです。
私の感想ですが、全く新しいデザインのレザーライダースジャケットは、ファンには受け入れられていないと考えています。
現代に残っている多くは、先達が作り上げ洗練を重ねたレガシィの様な存在ばかりです。
それらをベースに細部やパターンに工夫を重ね、再構築したものが時代毎に受け入れられていると仮説を立てました。
その流れの中で、デザイン、パターン、革素材、副資材、縫製スキル。全ての要素をまとめ上げた結果が最終製品として世に出ていると捉えています。
特に、パターンは最も重要な要素の一つです。
2次元でイメージしたデザインを3次元に構築しながら、革の特性を鑑みて設計する作業。
第2の幸運は素晴らしいパタンナーと出会えたこと
お取引を決めた縫製会社のパタンナーは、私が長年所有してきたヴィンテージライダースの数値サンプルから導き出したデザインを、何回かの修正を経て、見事に求めるフィット感のジャケットに落とし込んでいってくれました!
こうして待望の最初期サンプル#541(現発売モデルYDL-01のベース)が仕上がったのは、移住引っ越しのひと月前のことでした。
国内最大のエゾシカ駆除エリア且つ、革への理解が豊富な外国人インバウンドを求め北海道NISEKOへ移住
私たちYuku Deer Leather Wearsは、国内の駆除鹿の利活用を高付加価値のレザージャケットによって進めることをビジョンとしています。
その目的に最も適した土地が北海道でした。
鹿の獣害被害では日本で一番大きな都道府県で、令和4年度の野生鳥獣全体による被害額は58億8千7百万円で、昨年度に比べ4億3千7百万円増加しています。
その内エゾシカによる被害は最多で、被害額は48億4千6百万円です。昨年度に比べ3億6千6百万円増加し、被害全体の8割を占めています。
生息する鹿はエゾシカと呼ばれ、本州に比べると大型で、肉や皮も適切に処理すれば大変利用価値が高く、厚さと大きさが必要なレザージャケットには最適な存在でした。
残念ながら、現状では90%が使われていません。ハンターや食肉加工業者の方々に継続的に理解を深めるには、北海道を拠点にすることが最適と考えました。
加えて、ニセコや富良野は世界的にも有名で多くの富裕層を集める世界的なスノーリゾートです。
欧米を中心に中華系の方々も含め、レザー商品に対する経験も深く、ストーリーに裏付けされたエシカルな消費に対しても、適切な価値を見出される方々も少なくないエリアです。
駆除獣の利活用という道の課題解決と、原材料の安定供給と、ブランディング&販売の3方に対して、高頻度で向き合うことができる国内唯一の場所が北海道だったのです。
私たちYuku Deer Leather Wearsは、北海道の大自然から頂いたエゾシカの命に、ライダースジャケットという第2の命を与えるブランドです。
ブランド名に頂いている“Yuku”はアイヌ語で鹿を意味します。
自然と共生し、自然への畏敬の念を持ちつつ、野生の命を余すところなく生活に生かしてきたアイヌの方々の歴史と志に感銘を受け、その言葉をお借りするとともに北海道への移住を決めました。
先ずは1店舗から。委託販売と国内ファッション&レザー業界への認知拡大をスタート!
幸運にも移住先選定の過程で、北海道ニセコの町の隣町、蘭越町で地域おこし協力隊の職を得ることができました。こちらの仕事の空き時間に、先ずはニセコ周辺の外国人コミュニティへの接触を図ることにしました。
移住したのは4月、ニセコは閑散としたオフシーズンです。
勿論、定住している外国人も多くいらっしゃるエリアなので、街唯一のバーに足を運び情報収集を始めたところ、町内在住の20年近く域内でビジネスをしている米国人と知り合うことが出来ました。
私のビジネスやビジョンと共にサンプルを見せたところ非常に気に入って下さり、パートナーとご友人の為に購入を決めてくれたのです!
しかしパートナーはスレンダーな女性です。
いきなり新たなモデル開発に直面です!
時間的には余裕があった為、当時始まったばかりの蘭越町創業補助金にエントリーし第1号の許諾を得ることができました。
既に仮注文を得ていた女性モデルに加え、男性用の2モデル、そのサイズ別設計とレザーのカラー開発などを一気に進めることができました。この補助金は大変助かりました。
この補助金活用事業と並行して、運転資本を得るために小樽の日本政策金融公庫の扉をたたきました。
ニセコという市場の可能性と、商品と革の素晴らしさ、安定したバリューチェーン、ブランドを通して実現したい世界への思いを伝えました。
ご融資の決め手となったのはターゲットセグメントから2着の注文を得ていたことでした。
米国人の彼からはその後も様々な示唆を得るのですが、心の底から感謝しています。
春、夏、秋とニセコ圏内の外資系ホテルにパンフレットの設置をお願いしながら、展示や販売の営業をして回りましたが、良い返答は得られていません。
最初の繁忙期の冬が目の前に迫っています。
ここでも私を助けてくれたのは最初の顧客の米国人でした。
彼は友人のホテル経営者に電話してくれ、何とポップアップ展示の機会を与えてくれたのです。
ニセコ中心地からは少し離れていましたが、落ち着いたホテルコンドミニアムや別荘が集まるエリアで富裕層の往来も盛んなエリアでした。
その朗報と時を同じくして、営業の過程で紹介を頂いた同じエリアのセレクトショップに委託販売の機会を得ることもできました。
遅ればせながら直販サイトも12月に完成し、心ある方々の無償のご厚意に導かれるように、少しずつ売る為の準備が整ってきました。
動き続ければ何らかの結果は得られる。毎日、数ミリでも前に進む。
心に決め、初めての繁忙期を過ごしました。
目標としていた販売数には届きませんでしたが、直販サイトや委託販売先で数着の販売結果を得られ、補助金などの効果も含めて初年度は黒字で終えることが出来ました。
地元北海道新聞が3回もご取材頂き、記事が全国配信されたことも大きかったと思います。顧客は本州にも広がりました。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/969844/
今年4月の時点で、地元紙取材3回、農業業界紙取材1回、道内有数のフリーペーパー1回、ニセコで最も権威のある外国人向け媒体取材1回、関連するSNSなど複数回の露出結果を得ていましたが、圧倒的に知られていないのは否めない状態でした。
2期目の今年は、こうした偶発的な出会いを積極的に求めていく方針です。
今月23日にはレザー業界の祭典、「TLF東京レザーフェア」にも出展し、10月には再び「FaW TOKYO」に出展の予定です。
今、目標としているのは、ニセコ圏内にブランド独自のショールームを構えることです。
SNSや他のメディアでブランドを知った方がお気軽にお立ち寄り頂き、革の手触りや着た瞬間からフィットする着心地、そしてブランドの世界観にリアルに共感して頂ける環境を創って参りたいです。
Your footprints celebrate nature.
Yuku Deer Leather Wears は人と自然の共生を実現していくブランドです。
創業者プロフィール
【代表】森脇 大(もりわき だい) 1970生 MBA 経営学修士
1995年、新卒で株式会社 広島ホームテレビ(テレビ朝日系列)に入社し2022年末に早期退職。
新規事業開発、広告営業、営業企画開発、コンテンツディレクター等を担当し、海外企業とキャラクターブランドIPを創り、世界観と共にライセンスを販売する事業創出等を行ってきました。
プライベートでは16歳から革ジャンに惚れ込み、数々のビンテージやその時代の新作に触れ、歴史や素材、ディティールをファンとして研究してきました。
50歳の時にリスキリングの為入学した経営学修士課程の学びの中で獣害駆除問題に触れ、約90%が廃棄されている現状を知りました。
レザーに対する知見は当時から豊富にあった為、鹿革が武具や甲冑に使われてきた国内の歴史や、高級革製品の素材として使われてきた海外の状況を既に知っていました。その様な背景があるにもかかわらず、現状で利活用が進んでいないことに疑問を持ちました。
何より、人間社会の都合で野生動物の命を奪いながら、そのほとんどを廃棄している状況に大きなショックを覚え、何とかこうした社会課題を解決できないかと考え、高級ライダースブランドの事業化を決意しました。
私はブランドの代表であると同時にデザイナーでもあります。
最も重視しているのは適度なフィット感を伴った心地よい着心地です。
個々の体系にもよるのですが、私がこれまで所有してきた革ジャンの多くは、固く自分の体にフィットするには多くの時間と着用回数を要していました。
自分仕様に育てていく革ジャンの喜びも理解でき、楽しんでもきました。床に自立するほど固い馬革の革ジャンを、寝ても覚めても着ていたのは懐かしい思い出の一つです。
その中で、革ジャン感を大きく変えたジャケットが2着あります。
1着は1970年代の英国製ヴィンテージライダースジャケット、もう1着は国内ブランドが英国ブランドとコラボレーションして製作した鹿革のライダースジャケットです。
前者は、まるでオーダーメイドの様に、なで肩がっちり体系の私にフィットしました。少し長い着丈もすっきりと納まり、特筆すべきは肩の納まりの良さと美しいラインでした。
フロントファスナーを首元まで閉めた所謂“フルジップ”の着方でも肩の浮き上がりは無く、古い英国ライダースジャケット定番の厚く柔らかいシープスキンの特徴も相まってノンストレスな着心地でした。
後者は、私にとって3着目の鹿革(ディアスキン)ジャケットでした。有名な奈良のタンナーから調達した傷など皆無の鹿革は、吸い付くような着心地とこれまで革ジャンでは未経験の革独自の暖かさ、そして本州の初夏でも心地よい通気性の良さを感じたのでした。
前者も、後者もパターンと素材特性が相まって創り出されたフィット感と分析しています。
この経験を基に、フィット感と重さの分散、そして暑くても柔らかく最高のフィット感を生む素材として鹿革の可能性を確信しました。
北海道のエゾ鹿を使って、長い年月使われ続け、”命を纏う1着”としてエシカルな消費を産み出すことができると考えたのです。
そして2022年末にYuku Deer Leather Wearsを立ち上げる為に約28年勤めたテレビ局を辞め、翌2023年、世界に日本のエゾシカ革の素晴らしさを知って頂くために、世界的なスノーリゾート、ニセコエリアの西に位置する北海道蘭越町に移住し、駆除鹿のレザーを使った高付加価値レザージャケットの企画制作販売するブランド、Yuku Deer Leather Wears(ユク・ディアレザー・ウェアーズ)を立ち上げ、事業を開始しました。
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