信州の職人たちが挑んだ、経木(きょうぎ)の復活プロジェクト。古き良き、経木の文化をもう一度伝えたい…。「信州経木Shiki」の開発秘話を綴りました。
信州伊那谷に拠点を構え、 豊かな暮らしづくりを通して、豊かな森づくりをしていきたいと企業活動を行っている株式会社やまとわは、2020年8月に信州経木Shikiをリリースしました。
◎プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000054412.html
経木(きょうぎ)とは、木を薄く削った日本伝統の包装材です。食べ物を包んだり、料理の下に敷いたりと、暮らしの様々なシーンで使うことができます。木の香りがふわっと漂う、経木に包まれたおにぎりは、一段と美味しそうに思いませんか?
生木を削ってできる、自然素材そのものの経木。手軽に、暮らしの様々なシーンで使うことができる“経木の文化”を、もう一度復活させたいという想いから、この挑戦始まりました。しかし、キャリア20年以上の家具職人の技を持ってしても、一筋縄ではいきませんでした。
今回は、職人たちの熱い想いとひたむきな努力によって生まれた「信州経木shiki」の開発秘話について、職人たちの一喜一憂を間近で見てきた広報担当の榎本が綴っていきたいと思います。(信州経木shiki web:https://shinshukyougi.jp/)
左・家具職人でやまとわの代表である中村さんと、右・経木の生産をしている職人の酒井さん
■経木との出会い
株式会社やまとわがある伊那市は、アカマツが沢山生えている地域です。しかし、松枯れ病の影響により、アカマツが次々に枯れていくという問題が発生しています。感染したアカマツは、材木として使うことが非常に難しくなります。枯れゆく前に、新しい命を吹き込みたい。そう考えていた矢先、やまとわ代表の中村さんは“経木”と出会いました。
水分を含んだ状態で加工するため、削りたての経木は裏が透けて見えるほど美しい
中村さんは、長年“鉋(かんな)”を使って家具を作ってきた家具職人。鉋とは、刃物を使って木を薄く削り、家具などの仕上げをする際に使われる道具のことです。
ー中村さん
「私は、長年地域の木を使ってオーダーメイドの家具を作ってきました。1本1本違いのある地域の木を最大限生かそうと、木を読み、デザイン設計をして、家具を作ってお客様に届ける仕事です。また、手仕事にもこだわりを持って仕事をしてきたので、刃物も扱うことができる。そういう仕事をしてきたからこそ、経木と出会った時にこれは自分がやりたい!と思いました。」
鉋を削って出る‟鉋屑”の薄さを競う大会「削ろう会 信州伊那大会」にて、大鉋を引いている中村さん。
そして、中村さんは、長野市の信州新町で約80年以上に渡って経木を生産し続けている御年94才の山岸公一さんから、経木の生産機械を譲り受けます。
山岸さんの工場へ、見学へ行った時の様子
■悔しくてたまらない日々
経木は、暮らしと森をつなぐ道具です。もう一度、この経木文化を復活させたいという強い想いの下、私たちの挑戦が始まりました。しかし、木を機械にセットして、いざ削ろうとしても、山岸さんのようにきれいな経木が出てきません。
最初は、何故かくるくる巻きの経木が沢山削れました。木を削るたびに、くるんと丸まった経木があちらこちらに転がる始末。どうしたら、ピンと真っすぐできれいな経木が削れるようになるのだろう…?試行錯誤の日々が続きました。
ー中村さん
「山岸さんから譲り受けた機械は、半世紀前に作られた、かなり年季の入ったものでした。説明書も何もないので、まずその構造を理解するところから始めて。機械を全部分解して、長い年月をかけてこびりついた、油汚れなどもキレイに落としました。よし、これで削れるぞ!と思って、木をセットしても、中々思うように削れず。刃の角度や木取りの仕方など、微調整を永遠と繰り返す、試行錯誤の日々の日々が続きました。」
山岸さんから譲り受けた、半世紀前につくられた経木の機械
簡単にできると思っていたけど、実はものすごく難しくて、奥が深かった経木の生産。経木の専任の職人さんがいたら…と考えていた時、中村さんの先輩職人でもある酒井邦芳さんが経木の生産担当として入社しました。
半世紀前に作られた機械を使って、経木の生産をしている酒井さん
酒井さんは、漆芸の本場である輪島で漆塗りを行ってきたキャリア40年のベテラン職人。超一流の伝統工芸の技を持っていた酒井さんと一緒に働きたいと、中村さんが酒井さんに声を掛けたのです。
酒井さんが入ってからというもの、経木のクオリティーが日に日に高まってきました。仕事がスムーズにいくと、「あー、今日は美味しいビールが飲めるぞー!」と満面の笑みで話してくれる素敵な職人さん。
長年悩まされていた、経木が丸まって出てくる問題の解決策を見つけて、大喜びしている酒井さん
しかし、酒井さんの高い技術を持ってしても尚、ふとした瞬間に経木が削れなくなる時もありました。上手く削れなくなると、酒井さんは心の底から悔しそうな表情をします。肩ががっくし落ちているような、そんな後姿を何回も見てきました。
ー酒井さん
「何で上手く削れないのか、その理由が分からなくて、悔しくてたまらなかった。仕事から帰ってきても、経木のことがずーっと頭から離れなくて。この機械(経木を生産する機械)を作った人は、本当に天才だと思う。執念の塊だよ。」
しかし、課題をクリアする毎に、とても嬉しそうな表情で、工場から飛び跳ねながら中村さんに報告をしてくれる酒井さん。それがとても嬉しいんだよね、と中村さんは笑顔で話していました。
■「信州経木Shiki」の誕生
職人さんたちがひたむきに経木と向き合った結果、今年の8月に「信州経木Shiki」をリリースすることができました。素材から生産まで、全て信州伊那谷産の信州経木Shiki。ここで、名前の由来をご紹介させてください。
ー 信州経木Shikiとは
「Shiki」とは、「敷き」であり、「織」であり、「四季」のこと。漢字にするのなら、「紙木(しき)」。
何かを包む風呂敷であり、何かと組み合わせて別のものを作り出す織でもある。そして、豊かな模様のある素材を生み出すのは、四季。
敷く、包む、飾る。木をそのまま使う心地よさを、日々の中に。
■おすすめの使い方
信州経木Shikiの原材料は、信州伊那谷のアカマツ100%。アカマツには、調湿・抗菌作用があると言われています。ここで、経木のおすすめの使い方について2つ、ご紹介させていただきます。
1.包んで使う
おにぎりを適度な湿度を保つ調湿効果のある経木で包めば、まるでおひつに入れていたかのようなごはんを楽しめます。おにぎりの海苔も結露でベタベタしないのも嬉しい点です。
2.保存に使う
おすすめはお肉とお魚。抗菌効果があり、通気性にも優れている経木。包んで保存することで、菌の繁殖を抑えるともに、ドリップを適度に吸い、劣化を防ぎ、味と鮮度を保つことができます。冷蔵はもちろん、冷凍もOK。パンを冷凍する際、経木に包んで冷凍すれば、乾燥を防ぎ、パンの美味しさを保ちます。もちろん、野菜など、他の食材にも。
■プロダクト紹介
大きさ2種類、入り枚数違いで、計4種類のラインナップをご用意しました。
■short・・・・・\480+税
■long ・・・・・\1250+税
■おわりに
決して一筋縄ではいかなかった、経木の生産。しかし、職人さんたちのひたむきな努力によって、商品化までたどり着きました。今も尚、酒井さんは、より品質の高い経木の生産を目指して、試行錯誤を繰り返しています。どんなに使っても身体に、環境にやさしい、循環する自然の製品。信州アカマツのぬくもりを、暮らしの中に取り入れていただけると嬉しいです。
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