実録 訪問販売会社潜入記 浄水器を売りつけろ! 7 誘惑する奥さんとオカマの同僚編
当然、ノートに書き写した段階で、ある程度は頭に入っている。
ここからシュミレーションで、ノートを見ないで練習を行うことにより、更に暗記するスピードがUP する。
5 日目も終盤を迎えると、たいていの人間は、いい加減ノートがなくても、所長の訪問販売トークをしゃべれるようになる。
そして6 日目の夕方、卒業試験が幹部により、実施される。
幹部が客となり、私が訪問販売トークを繰り広げるのだ。
私は1 回で通過したが、同期の中には、覚えられない人もいて、 その場合、再度1 週間の研修が実施される が、その前に辞めてしまう人も多い。
仮に残ったとしても、1 週間で覚えられない奴は2 週間でも覚えられないので、結局辞めていくのである。
私は卒業試験は1 週間で突破した。
ちなみに同期入社の彼は、親に仕事内容を話したところ
「そんな会社への就職は認めない! 」
とぶち切れられてしまい、 入社試験を待たずして、退社してしまった。
先輩と同行1
新人は研修が終わると、現場を体感するために、2 日間は先輩と同行する。
初日、私が同行したのは、声が枯れている班長であった。
こんなに枯れてて売れるのか?
不安に思ったが、その事実は的中し、同行した1 日目はまったく売れなかった。
この班長、なぜ声が枯れているのかというと、 毎日の朝礼で叫びすぎているせいだと思われる。
根が凄い真面目な人なんだと思う。
毎日、朝の朝礼は常に大声を張り上げている。
でも、それってどうなの?
1 件目
一人暮らしの男性( 20 代後半)
平日の昼間、家で何してるんだ? ニートか?
という男性。
しかし、事前の調査で、無職の家がターゲットにされるはずはほとんどないので、恐らく平日休みの方なのだろう。
それにしても、この一人暮らしの男性なんて絶対売れないだろうな
と新人ながらに思った。
時間の無駄じゃない?
しかし、班長は突入を開始。
果敢に攻め込むその努力というか、無駄な労力は褒めたい。
だから声が枯れてしまったのだろうか。
何事にも全力投球なんだろうね きっと。
で、訪問。
チャイムを鳴らすと、出ない。
出てこない。
3 回程鳴らしても出てこないので、あきらめて車に戻り、他のところに移動するのかと思ったが、 さすが無駄な努力が好きな班長。
事務所に電話をして、事務所から相手の男性宅に電話をかけさせて、 今社員がドアの外にいるから、サンプルを受け取ってほしいと電話をかけさせたのだ。
おい~
どんだけ無駄な努力だよ・・・・
まあどの努力は褒めるけど、 実際のところ、居留守を使うような奴がね、例えドアを開けたとし
ても その後、買うことはほぼないし、仮に買わせることが出来たとしても、普通にドアを開けてくれる奥さん宅に比べてどんだけ長い時間説得しなければいけないか
その労力を考えたら、とっとと次の案件に移動したほうが絶対にいい。
しかし、班長は諦めない。
事務所から電話をかけさせて、何とかドアを空けさせることに成功した。
事務所のおばさんが、
「いまうちの社員がサンプルをお届けに上がっておりますので、受
け取って頂けますでしょうか? 」
と1 本連絡を入れてくれたようだ。
が、ドアは開いたものの、玄関より先には入れてくれない。
狭い玄関で、班長の必死の説明が続く。
しかし、男性の一人暮らしである。
そもそもそんなに水に興味もないし、 飲む水はペットボトルを買う。
炊事も毎日やるわけでもなく、手荒れも気にしない。
班長の約1 時間に及ぶ説得むなしく、浄水器は売れなかった。
唯一、男性の興味を示した、洗剤セットが販売出来たが、このセットは3000 円也
うーん
まあ時給換算すれば3000 円だけど・・・・
どうなの?
班長。
2 件目
古くからある団地の家庭が2 件目の訪問先。
団地の公園横に車を停めて、早速部屋へ訪問。
出迎えてくれたのは、おばあちゃんと娘( 娘は結婚している、50 代くらいの奥様)
班長はノリノリ
いい物件に当たった! と小声で私に言ってきた。
しかし、実際班長の判断は間違いで、おばあちゃんに加え、娘までいるわけで、
2 人が同じ判断を下すとは思えない。
一人は丸め込めても、一人が反論した場合、丸め込めた一人も不信感を抱いてしまい
そうなったら、高額の浄水器なんてまず買わない。
仮にこの浄水器は、2,3 万円なら買うかもしれないが、30 万近くするのだから。
でもノリノリの班長、
枯れた声でお決まりトークを披露していく。
洗剤のところまではよかった。
そう、洗剤のところまでは。
が、浄水器の話になると、おばちゃんが嫌悪感。
そして更に娘までもが嫌悪感。
あからさまに嫌な顔、洗剤の話のときとは違い、明らかに早く帰れムードが漂う。
しかし班長、そのムードを無視して説明を続ける 。
2 時間を過ぎ、2 時間30 分、3 時間、3 時間30 分・・・・・
もういい加減おばちゃんと娘も切れ気味。
それでも帰らない班長、必死の説得が続く。
私は、というと、班長の後ろで正座して待つ。
いい加減足がしびれてきているので、時々足を崩しながら待つ。
いちお、研修中ということになっているわけで、 ノートにメモを取っているふりをしているが、
班長の訪問販売トークで参考になるところはひとつもない。
メモを取るふりをして、絵を描いていた。
だって、長すぎるよ! !
もう、絶対無理だよ、だってもうおばちゃんと娘嫌そうだもん。
班長~ ! !
説明もさっきそれ話たじゃん。
という内容の繰り返し。
全然説得力がない。
もうごり押しに近い。
半ば暴走気味の班長を止めたのは、子供の帰宅だった。
子供の世話をしなければいけないという理由で、娘さんが話を中断。
班長もやっと諦め、退却となったのでした。
車に戻ると班長が一言
「あともう一押しだったんだけどね、惜しかったよ」
惜しくねえ! !
っつーかあんたいつもあんなんで売れるのか? ?
この時点でこの班長はダメだと思った。
班長になっているので、以前はたくさん売っていたのだろうが
新人の前で売りたくて焦っていたのかもしれないけど、あのゴリ押しは不味いでしょ・・・・。
先輩と同行2
2 日目は、班長ではなくて、カマっぽい人に同行することになった。
ちょっと小太りで、本当にカマっぽい。
でも結構売っている人のようだ。
確かに男からすると嫌悪感を抱くが、女性からするとカマっぽいほうが安心感があるのかもしれない。
怪しまれずに、すぐに台所に入れてくれるのかも。
そんなことを考えていたら、1 件目に到着した。
が、1 件目は門前払い。
サンプルを渡すだけで終了となった。
チャイムを鳴らしても、インターホンからしか話をしないし、
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