「夢」か「安定」か? 〜超就職氷河期に二度内定を捨てた話し PART6 〜

1 / 2 ページ

前話: 「夢」か「安定」か? 〜超就職氷河期に二度内定を捨てた話し PART5〜
次話: 「夢」か「安定」か? 〜超就職氷河期に二度内定を捨てた話し PART7 〜

前回のあらすじ


7月の暑い日、僕はオフィス街のビルの中で待ちに待った瞬間を迎えることができた。

初めて参加したインターンシップには各大学から色んな就活生が集まっていた。


リアルな社会人の話は僕にとって新鮮で、気づくことも学べたこともたくさんあった。


でもそれ以上に、僕と同じく、ついこの前まで就活生だった橘くんの話がとても印象に残った。


「自分の行きたい道に進まないと意味がない。」


橘くんの言葉がそっと僕の胸に響いたのであった。



社会人10年目の軌跡



拍手喝采の中、橘くんの話が終わったあとは社会人3年目、5年目の方の話があった。


大学では聞けない社会人の話しは僕にとって本当に勉強になった。


もちろん社会の厳しい現実の話しもあれば、それを乗り越えた時の達成感など、、、


「これが働くってことか~!」


まだバイトしか経験したことなかった僕は素直に感心していた。


そして最後に「10年目」というベテラン社員の話があった。


どんな分野でも10年という月日は長い。同じ道で10年も頑張れば立派なスペシャリストである。


「これはまた興味深い話が聞けるな!」


僕はワクワクしながら待っていた。そして10年目の杉村さんという方が前の舞台へと上がった。


「就活生のみなさん、こんにちわ!」


優しそうな声と落ち着いた雰囲気に、少し場が和んだ。


「こんにちわ!」


僕らも一斉に返事を返した。


「元気がよいですね!僕もみなさんと同じようにスーツ姿で就活をしていた頃があります。かれこれもう10年も前の話しですが。笑


さて、会社の話や仕事については他の人から説明があったので、僕は自分の体験談を一つお話ししたいと思います。」


10年目のベテラン社員の話ということもあり、それはすごく壮大な内容があるかと思っていたので、体験談というのは少し意外だった。


それでも僕は、あえて体験談を話すことに決めた杉村さんの話により興味が湧いたのだった。


「なぜ体験談を話すことにしたかというと、僕がこの仕事に就いてコンサルという仕事がどんなものか初めて学ぶことができたお話だからです。」


何故だかわからないが、僕はその言葉を聞いた瞬間「これはすごい内容がくるぞ!」と思った。


業界研究本を借りたもののあまりに内容が難しく、結局最初の30ページを読んでやめてしまった。(オイ!笑)


でもコンサルという仕事がどういう職業なのかは知りたかったので、早く杉村さんの体験談を聞きたかった。


「これは僕が社会人3年目の時に体験したお話です。そして僕がこの会社に勤めた中で一番思い出に残っている話でもあります。」そう言って杉村さんは話し始めた。


僕が3年目の時、とある大きな病院のコンサルを担当することになりました。


それまで小さな企業のコンサルしか体験したことがなく、僕にとっては初の大仕事。


もちろん若かりし頃だったので素直に嬉しかった。これでやっと俺も出世できるってね。笑


しかし、その病院のコンサルが僕にとって一番辛かったんです。


初めてその病院に訪れた日、まずは医院長に挨拶しようと僕は受付へ行きました。


するとどうでしょう…


医院長のほうから「部外者なんかと会う暇はない!」と言って会ってくれないではないですか。


コンサルの依頼をしてきたのは病院のほうからだったので、僕は正直戸惑いました。


かと言って契約を結んだ以上帰るわけにはいかないので「少しでも話しをしてくれませんか?」と僕は頼みました。


結局、医院長は会ってくれませんでしたが副医院長だった息子さんが会ってくれたんですね。


「あ~これがよく聞く親子経営の病院か!」と思いながらとりあえず息子さんとお話することになったんです。


息子さんはとても良い方で、コンサルの依頼をしたのも彼のほうでした。


僕は病院の問題点を尋ねると息子さんは即座に答えました。


「医院長である私の父はほんとうに頑固で誰の意見も聞こうとはしません。そのためみんなの不満が募っているばかりか、経営自体も赤字が続いてます。このままだと父が築いてきた病院を閉鎖しないといけない、、、


僕もさすがにそれだけは避けたいのですが、医院長があの性格なんでにっちもさっちもいかないんです。杉村さん、どうにかしてこの病院を再建して頂けないでしょうか?」


「あ~、やっぱりそういうことか」と僕は思いました。確かにあの医院長だと不満が出て当然、かと言ってそれを僕が解決できる自信なんてありませんでした。


ほんとはそんなこと思っちゃダメなんですけどね。笑


大きな初仕事であの医院長と向き合って病院を再建させる、、、なんだかすごく途方もないことのように感じました。


とりあえずその日は息子さんと話しをして、病院の現状を聞いたり、働いてる人たちの話しを聞くことにしました。


すると出てくる出てくる!芋ズル式に問題が出てくるので僕は頭が痛かった。


ただ根本的な問題としてはやっぱり医院長の身勝手さで病院のチームワークが成り立たず、そこから経営悪化や他の問題が生まれていました。


「やっぱりあの医院長と話しをするしかないか。」と病院の帰りに僕はしょんぼり悩んでいました。


そうは言っても期間は半年間しか無かったので、一刻も早く現状を打開しないといけない。


僕はその日から毎日毎日その病院に通うことに決めました。


なかなか医院長は会ってくれませんでしたが、そこで働く病院の人たちとは仲良くなっていきました。


そして病院で働いている人から悩みを聞くと、やっぱり医院長の名前が挙がるんですね。笑


会議で意見を言っても、新しい薬を導入してはどうか?と話しをしてもまったく聞かない。


ほとんど医院長のワンマンのためとうとう誰も意見は言わず、とりあえずみんな「ただ働く」みたいな感じになっていました。


そりゃ経営も悪化しますし、人間関係だって悪くなります。

著者の石本 良幸さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。