「夢」か「安定」か? 〜超就職氷河期に二度内定を捨てた話し PART7 〜
前回のあらすじ
僕は杉村さんの話しを聞いて、初めて「コンサル」という仕事に触れた気がした。
いや、働くという以上に何か大切なことを学ぶことができた。
10年もの間、コンサルで活躍し続ける杉村さんの話には、僕含め多くの就活生の心に残ったのである。
そしてインターンシップの後半戦は、僕にとってリベンジマッチとなるグループディスカッションが待ち構えていたのである…
グループディスカッション再び!
一日がかりのインターンシップは、杉村さんの話で午前の部が終わってお昼休憩へと入った。
僕は適当に駅近くのマクドで腹ごしらえしながら、橘くんの話や杉村さんのことを思い出していた。
「あれが働くってことなんか~」
まだ甘ちゃんの僕にとって社会人として「働く」というのは、どういうことなのかさっぱりわからなかった。
「自分もいつかは杉村さんのように好きな仕事で活躍して、就活生の力になれるんかな?」
そんなことを考えながら僕はチーズバーガーを食べていた。
午後の部は、なんとまさかのグループディスカッション!
とは言っても各グループこどに社員さんが一人付き、最初は質疑応答に答えてくれるというものだった。
僕のグループには恰幅の良いコンサル歴12年の人がやってきた。
「おぉ、この人も杉村さんと同じく10年以上も働いている人か!」
中村さんというその方は、いかにも「仕事ができる!」というオーラを醸し出していた。
自信のある声に、わかりやすい説明、さらには就活生の話しを聞き出す能力など、、、
「これぞまさにコンサル人」というイメージがピッタリの人だったのだ。
中村さんもすごい人で、話しを聞いているとどうやらビジネス雑誌にも何度かインタビューされて載ったことがあるらしい。
間近で社会人の人と話しながら、仕事の話しを聞いたり、就活の悩みを聞いてもらえるのは新鮮だった。
他の就活生に負けぬよう、僕も一生懸命に中村さんに質問していた。
「普段はどんな仕事をされているんですか?」
「どんな時にやりがいを感じますか?」
「休日はどんな風に過ごしていますかー??」
「俺はインタビューアか!」と自分でツッコミたくなるほど質問をしていたが、それでも中村さんは笑顔で答えてくれた。
そして30分かの質疑応答タイムは終わり、とうとう宿敵である「グループディスカッション」が始まったのだ!!
ディスカッションのプロ現る!
ディスカッションの内容は「架空の企業をコンサルしよう」というもの。
コンサルという仕事を想定して、ある企業からコンサルの依頼が来る…
その内容が資料に載っていて、僕らはこの企業に対してどんな提案ができるか?というものだった。
「めっちゃおもろそうやないかー!!」、ゲーム感覚にも似たこのディスカッションに僕はとてつもなく興味が湧いた。
制限時間は50分!(けっこう長い!)、最後は各グループの代表2名で発表する。
「とうとうリベンジマッチがきたか、、、」そう思うと僕の頭で天使と悪魔がささやきだした。
天使「そうだ石本!そうそうチャンスなんて訪れてこないんだから、今日はしっかり決めろよ!」
悪魔「げっへっへー、まあまあそう焦ることもなかろう!今回は見送っても大丈夫だろう。」
またも頭の中で天使と悪魔の戦争が勃発して、そっちに意識が取られそうになった。
「では、誰が発表役になりますか?」
前に座っていた就活生の言葉で、僕はふと我に返ることができた。
おそらくディスカッションが初めての人がほとんどだったのだろう。少しの間、沈黙が続いていた。
その中で一人、僕の斜め前に座っていた学生が、
「僕が発表するのであと一人決めましょう。それにタイムキーパーと司会進行役、あと書記の人も決めたほうが良いですね。」と話し始めた。
「こやつ、何者!?」鮮やか過ぎる言葉に僕は目をまん丸くしてその人を見た。
「誰か一緒に発表してくれる人はいませんか?」
その学生の言葉にみんな黙ってうつむいていた。
そりゃそうだ、もし発表するとなると就活生だけじゃなく、会社の人たちもいる。
初めてディスカッションや発表を経験する人が、いきなり100人の前で発表なんてできやしない。
僕も下を向いて悩んでいた。小林先生の指導や練習もしながら、結局今回もできないのか?また情けない思いをしないといけないのか?と…
その時ふと橘くんの話や、杉村さんのことを思い出した。
誰だって悩みながら、つまづきながらも前に進んでいる。最初からうまくいくとなんてほとんど無い。だったら思いっきり失敗しても構わないんじゃないか?
そう思うと少し気持ちが楽になって、僕は震えながらも手を挙げた。
「、、、僕も発表します!」
全員の視線がこっちへ来た。そして最初に立候補した学生が「ありがとうございます!」と言って話しを続けた。
「それでは司会進行も僕がするので、タイムキーパーと書記をやってくれる人はいませんか?」
これが噂に聞くポジショニングである。
就活のグループディスカッションではだいたい司会進行・タイムキーパー・書記と言ったポジションが存在する。
これにより限られた時間でのディスカッションをスムーズに行うのだ!
ちなみにポジションが無かった場合、無惨な結果に終わってしまう場合が多い、、、
「なら私、タイムキーパーします!」と前の女の子が言うと、隣に座っていた男の子が「僕が書記をします」と言ってくれた。
あなたの親御さんの人生を雑誌にしませんか?

著者の石本 良幸さんにメッセージを送る
著者の方だけが読めます