前回のあらすじ
僕は初めてのインターンシップを経験することができた。
そこでは先輩社員や先輩就活生、そしてコンサルで活躍し続ける人の話し、、、
たった一日の経験でそれまでに無いくらいたくさんのことを学ぶことができた。
おかげで就活について新しい道を開くことができたし、何より間近でそんな人たちに会えたことが嬉しかった。
そしてグループディスカッションでは「プロの経験者」が居てくれたおかけで、ディスカッションの進め方やポイントも学ぶことができたのである。
二度目の挑戦
インターンシップの思い出と言えば「寿司がでた!」ということ、、、いやいや!ちゃうからね!
アカンアカン、食欲に負けそうになってしまった。笑
初めてのインターンを経験した帰り、僕は電車の中で橘くんや杉村さん、そしてグループディスカッションで活躍していた「彼」のことを思い出していた。
あまりに学んだことが多かったのか、僕は電車が揺れるたびに夢の世界へと入っていた。どうやらまだペーぺー就活生にとって、一日がかりのインターンシップはキャパオーバーのようだった。
だが、、、
実はこのインターンシップは2日あったのだ!2回あると言っても日程が違うだけで内容は同じ。
おそらく新しい参加者対象に行われる予定なのだが、僕は就活支援センターの規定で2回受けることになっていたのだ。
「また橘くんや杉村さんの話が聞けるならありがたい!それにグループディスカッションの練習もできるし!」
僕はそう考えながら、2回目のインターンシップを楽しみにしていた。
次元の違う大学生
1週間後、僕は2度目のインターンシップを受けるためにまたオフィス街へと繰り出していた。
2回目と言うこともあり、地図を見ること無く…いんや、バリバリ地図を見ながら何とか目的地にたどり着くことができた。
「けっこう早くついたやん!」早起きが死ぬほど苦手な僕にとっては奇跡のようなことだった。それだけこのインターンシップを楽しみにしていたのであろう。
そして会場の前の方に進むと、そこには見覚えある姿があったのだ。
「・・・・・・・あ!この前のグループディスカッションでリーダーしてくれた人や!」
なんとその人も2回受けにきていたのである。僕はすかさず横に座って挨拶をした。すると彼のほうも覚えてくれていて、笑顔で挨拶してくれた。
「あ!この前は一緒に発表してくれてありがとうございました。え〜っと…」
「石本と言います!そう言えばちゃんとした自己紹介はまだでしたね。笑」
「ははは、確かにそうですね。石本さんですね!わかりました。僕は富田と言います!」
「富田さんは元からコンサル志望なんですか??この前のディスカッションの時も、もう活躍しているコンサルの人みたいだったですよ!」
そういうと彼は照れ笑いしながら自分のいきさつを話してくれた。どうやら富田さんは大阪でも有名な国公立に通っていて、その経歴もすごかった!
2回生の時に株を始めて資金を貯めて、そのお金を元にアメリカに留学!そして向こうでも株でお金を作りながら、アメリカ横断の旅をしていたというではないか!!
僕はあまりの壮大な話しに頭がクラクラしていた。もし僕の友達がそう言ったら、「お前絶対ウソやろ!アホなこと言うでない!」とツッコミをしていたと思うが、富田さんの言葉に嘘を感じることは無かった。
「す、、、すごいですね!むしろそんな才能があるのなら、自分で起業とかもできそうな気がしますが。(汗)」
「いつかは自分で仕事をやってみたいと思います。でもその前にちゃんと会社で働いて経験を積んでみたいんです!」
「この人同じ就活生やんね??」と僕は短時間の間に何百回も自問していた。どっからどう見ても同じ大学3回生に見えない。
それだけ自分がしょーもない大学生活をしてきたのか、はたまた彼のほうが優れた生活をしてきたのか・・・
おそらくどっちも正解だろう。笑
「世の中にはやっぱすげー人もおるねんな!」
まるでドラゴンボールの悟空が強い敵に出会って興奮しているような感じだった。そんな人と一緒にグループディスカッションを出来たのは光栄だった。
「そういえば石本さんはなんでこのインターンシップを受けようと思ったんですか??」
「それ、聞いちゃいますかーーー?」できれば勘弁してほしい質問だった。まさか富田さんのような英雄談を聞いた後に僕の話しをしろと言うのか?
いっそ対抗して「そうですね、アラスカに一人旅した時にコンサルになろうと閃きました!」みたいなことを言ってやろうかと思ったが、僕が言うと100%ネタになる。
僕は自分の持っているボキャブラリーを最大限に発揮して、富田さんにことのいきさつを話した。まあ最大限に発揮したところで事実は何も変わらないのだが…
「なるほど、それでこのインターンに参加されたんですね!確かにコンサルだと人の話しを聞く力も必要ですし、良いじゃないですか。インテリアのほうはインターンとか受けないんですか?」
「ほんとはそっちに興味があったんですが、就活支援センターが紹介してくれた企業の中には無かったんです。まあでもコンサルの仕事も見た時に興味が湧いたんで、ここに参加しようと決めました。」
実際このインターンに参加できたおかげで色んな経験が出来たので文句は一つも無かった。むしろインテリアとはまったく違う業種に参加したからこそ、違う人たちの話しを聞いたり経験できたのでむしろ良かったのである。
小林先生が言っていた「マスコミ系に進みたいならもっと色んな世界に触れることでたくさん学ぶことができる!」と言った言葉は間違っていなかったのだ!(でも僕はマスコミには興味がない!)
僕はいつの間にか富田さんに滝のように質問を浴びせていた。そりゃそうだ、今まで自分の間近でこんな大学生を見たことがない。留学経験のある友達は何人かいたが、株で資金を貯めて留学した人を僕は富田さん以外に知らない。
しかも累計600万円を稼いだというから、もはや僕の目は「ドル」になっていた。
「なんかドラマかアニメで出てきそうな話しですね・・・!」
「ドラマは良くてもアニメは嫌ですね。笑 それに人と同じ道を進んでも面白くないじゃないですか。だったら自分の好きなことしようと思って海外に飛び出したんです。」
「なんてワイルドな人なんだ・・・」見た目は爽やかそうなだが富田さんの中身はかなりワイルド派だった。
いつの間にか会場は就活生で溢れていて、前の壇上では司会進行の人がマイクを握って立っていた。
「今日もできれば富田さんと一緒にグループディスカッションをしたいな!」僕はそんなことを考えていた。
予定通りインターンは始まり、1回目と同じく企業紹介や仕事の話しがされた。その後の橘くんの話しを僕は興味津々に聞いていた。
でも一番楽しみにしていた杉村さんの話しは聞くことが出来なかった。今回は違う社員の人が話しをしていたのだ。(その人の話しも良かったけれど・・・僕はやっぱり杉村さんの話しのほうが良かった。)
流れるように午前の部が終わりお昼休憩へと突入した。また駅近くのマクドを訪れて昼食を取った後、僕は少し早めに会場へと戻った。出来ればまた富田さんと話しがしたいと思ったからだ。
会場に戻ると残念ながらそこには富田さんの姿派は無く、何人かの学生が資料を読んだり話しをしていた。
「あちゃー、まだ富田さんは戻ってなかったか…」
それならいっそ一緒にお昼ご飯を行けば良かったなと少し後悔した。かと言って出会ってまもない人を食事に誘う勇気もない。残念な男だ…
ってちょっと違うストーリーになっているので話しを戻します。笑
とりあえず席に戻った僕は、次のグループディスカッションのことを考えていた。今回もまた富田さんと一緒になれるとは限らない、だったら今度は僕がリーダーをやってみようかと恐れ多いことを考えていた…
やってみますか、リーダー万歳!
案の定、午後のグループディスカッションでは富田さんと同じ班にはなれなかったが、もっと意外な展開が待っていた。
割り当てられた席に移動すると、なんと一緒の班に就活支援センターでも同じ班だった奥村くんがいたのだ!
「え〜!!」というようなリアクションをすると、向こうも同じく「え〜!!!」みたいな顔をしていた。たぶん他の人からすればちょっと怪しく写ったかもしれない…
「あれ?石本さんもこのインターンシップに参加してたんですね!」と奥村くんは驚きながら言った。
「僕もまさかここで知っている人に会えるなんて思わなかったんでビックリしましたよ!」
まさか奥村くんが同じインターンに参加して、しかも同じグループになるなんて夢にも思ってなかったので僕は嬉しかった。まったく知らない人ばかりの中で知り合いに会うと、それは昔の旧友に会う感覚に似ていた。
そう、それは言うならばたった一人でブラジルに行き、そこで幼稚園から一緒の友達に会うような感覚だ!(実際そんなことは体験したこと無いのでわかりませんが…)
周りのメンバーはきょとんとした感じで僕らを見ていた。基本一人で行動する就活で、そんなに知っている人に会うことは無いから珍しいのだ。
奥村くんと同じ班になれたことでかなりリラックスしてディスカッションを始めることができたが…やっぱりあの時間がくると僕の中で天使と悪魔が戦いだす。
50分のディスカッションが始まり、メンバーみんなの自己紹介が終わったあと少しの沈黙があった。
天使「さあ石本!今いくんだ!この前発表できたなら、今日はリーダーにだって慣れるはずだ!」
悪魔「な〜にを調子にのったこと言ってやがる。お前にはまだリーダーは早過ぎる!恥ずかしい醜態をさらしたく無いなら大人しくしておくんだな。」
「とりあえずお前らが大人しくしろ。」と僕は言いたかったが、勝手に心の中でわめき散らす天使と悪魔はどうすることもできなかった。
僕は奥村くんのほうをチラリと見た。彼も何か考えているようで、下を向きながらみけんにシワを寄せていた。
前回のディスカッションで富田さんの進め方を学んだ。最初に問題点を出し合って、それについての解決策を話し合う。今回のディスカッションの内容も前回とほとんど同じだった。
「ここでリーダーをやっておけば、今後の就活も少しは楽になるだろうか…」
僕は悩んでいた。果たして自分が富田さんのようにうまく司会進行をしながら発表できることができるだろうか?と。
心拍数が上がる。そして悩む・・・
少しの沈黙が続いたあと、僕は勇気を振り絞って言った。
「・・・なら僕が司会進行と発表をするので、あともう一人、一緒に発表してくれる人はいませんか?」
そのセリフは完全に富田さんのパクリだったが、僕は見よう見まねで同じことを話した。その言葉を聞いて沈黙が終わったので、グループのみんなは安堵していた。奥村くんだけがきょとんとした顔で僕を見つめていた。
「なら私が一緒に発表します!」と僕の隣に座っていた女の子が言ってくれたので、とりあえず発表する人は決まった。
「ありがとうございます!ならタイムキーパーと書記をしてくれる人はいませんか?」僕がそう聞くと、前に座っていた男性がタイムキーパーを、そして嬉しいことに奥村くんが書記をやってくれることになった。
「・・・とりあえず役回りが決まったけど、本番はここからだ。」僕はドキドキしながら司会を続けていた。おそらく二度三度は話す時に噛んだだろう。しかしそんなことを気にしている余裕は無かった。
救いだったのは前回のディスカッションの時に富田さんの司会っぷりを見ていたことである。そのおかげである程度の時間決めも出来たし、どうやって進めていいかはわかっていた。
もしこれがわからなければ、おそらく僕は「形だけリーダー」で撃沈していたかもしれない…
とりあえず僕は「最初に問題点を出し合いましょう!」と言ってからは順に「解決策→カテゴリーに分ける」という流れを進行した。書記の奥村くんも遅れをとるまい!と必死になってまとめてくれた。
終了5分くらい前になんとか形だけはまとまって、一度だけ発表の練習をすることができた。初のリーダーはどうだったかって?まったく頭に入ってきませんよ。笑
緊張のあまり途中何を話しているのか自分でもわからなかったが、何とか僕らの班も発表できる形まではもっていけた。
「なんで富田さんはあんな余裕しゃくしゃくやったんや!」僕は心の中でぜーぜー言いながら考えていた。場数の違いかそれとも才能か…自分が富田さんのように発表できる日がまだずっと先のような気がしていた。
「終了!」という合図ともにディスカッションは終わり、各グループによる発表の時間がきた。今回僕らは「C」チーム、司会の人がよっぽど意地悪をしない限り僕らの発表は3番目である。
やはり今回もAグループから順の発表で、前に立った就活生たちがたどたどしく発表していた。きれいにまとまっている班もあれば、途中つまづいてしまった班もあったようだ。
そうこうしている間にCグループの番になり、僕と女の子は前に立った。会場にいる人たちの顔を見ながら、「何回立とうとこの場所に慣れることは無いな」と僕は思っていた。
ふと目が合った中村さんが僕のことを覚えててくれたのか、「頑張れ!」と小声で言ってくれたので僕は気合いを入れて話し始めた。
「それではCグループの発表を行いたと思います。」
前回に比べると少し早めに僕らの発表は終わったが、まずまずの出来映えだった。恐怖の質問タイムには意外にも就活生から質問があり、一緒に発表してくれた女の子が答えてくれた。
みんなが拍手をしてくれる中、僕は席に戻って「よう頑張った!!」と脱力しながら思っていた。「毎回毎回こんなにエネルギーを費やすとなると、これはもう大変やな・・・」他のグループの発表を見ながらそんなことを考えていた。
どうやら富田さんはFグループにいたようで、発表のときはやっぱり前に立っていた。相変わらずスラスラと発表していたので、他の就活生とは違った雰囲気があり羨ましかった。
そして全グループの発表が終わり、最後はあの「懇親会」の時間がやってきて、僕はまた楽しい時間を過ごすことができた。たまたま懇親会の席では富田さんと同じ席に慣れたので、ディスカッションや就活について話すことができた。
初のリーダー役も経験できて、当分はこんな大舞台は無いだろうと僕は安堵・・・いや、思っていたのだが、まさかこれ以上の舞台がすぐに来るなんてその時は夢にも思わなかった。
(つづく)


