第7話 アルケミスト【少し不思議な力を持った双子の姉妹が、600ドルとアメリカまでの片道切符だけを持って、"人生をかけた実験の旅"に出たおはなし】
離れる道
携帯から聞こえる声は電波が悪くて少し聞こえにくい。
卒業を目前にしたその頃、けんちゃんと私はアフリカと日本の遠距離恋愛になっていた。
もちろんけんちゃんがアフリカ。
3.11のあと、けんちゃんは福島へボランティアへ行ったり、
自転車ひとつで全国の農家さんを訪ねたり、一緒にいない期間が少し続いていた。
”農業”や’自然’など、けんちゃんの生きたいライフスタイルが着々と見つかっていた。
そしてついに、ずっと夢だったアフリカでの国際協力に関われることになったのだ。期間は2年間。
1年半も一緒にいて、こんなに離れるのは初めてのことだった。
でも、前の私なら不安ばっかりなのに、
”自分の人生”に進むと決めてから、けんちゃんと離れることに、さほど不安はなかった。
私はというと、きちんとした未来はまだ何も決まっていない。
就職をけって”自分の人生”を歩く決断をしてからは、
とにかく”ワクワクすること”だけを選んでいた。
まだ、なっちゃんは仕事してて無理だから、
だから、まずは一人で行ってみる!
まほ、ほんま一人で大丈夫か〜?
けんちゃんの相変わらずの笑い声が聞こえる。
その時は気ずかなかったけど
けんちゃんはアフリカにいるのに、私が電話をかけるとすぐに出てくれた。
けんちゃんが電話をとれない、ということは一度もなかった。
私が寂しい思いをしないようにと、
アフリカでの農作業中も、いつもポケットに携帯を入れてくれていたらしい。
けんちゃんは心底優しかった。
けんちゃんにそう言われても、なんだかいつもうまく返事ができなかった。
私は、アフリカに行きたいんだろうか?
また、この旅も彼に会うという”目的”を決めて出発するんだろうか?
ー何のために旅に出るんだろう。
けんちゃんが帰国する2年後も、ましてや1年後、あと数ヶ月の卒業後でさえ、
どうなっているのか、よく分からなかった。
いつも”2人”のことを考えてくれるけんちゃんと、
自分の新しく始まった人生に精一杯な私は、何か少しズレてきていた。
自分の未来もうまく描けない私が、
どうやって”2人”の未来を描くのかなんて、さっぱり分からない。
けんちゃんが大好きな一方で、2人の未来が少しづつ少しずつ離れていくのを感じていた。
ーでも、まあなんとかなる。いつもなんとかなって一緒にいたんだから。
自分に言い聞かせる。
しかし、私の人生は進んでいく。
1冊の不思議な本が、奇妙な軌跡でその未来まで運んでくれることとなった。
不思議な本
ーま、またきた!!!
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