趣味で生きていかれるのか・第3回・趣味の収支について

前話: 趣味で生きていかれるのか・第2回・サラリーマン編

 今回は大切な「お金」の話です。お金の話は、一筋縄にはいかないので、今回は、その導入部分ですよ。まぁ、気楽にお読みください。そんなこともあるのかなぁ、というくらいに読んでみてくださいね。ああ、ちなみに、この原稿は、北海道の登別温泉で書いています。半分仕事・半分趣味で北海道に来てしまいました。いい湯だったなぁ。


ちょっと、前回の付け足しからはじめましょう


 第2回「サラリーマン編」で、ちょっと書き忘れたことがります。

 「趣味」という言葉ですが、一般的には「仕事=お金を稼ぐ」「趣味=お金を使う」という考え方があります。「趣味」という言葉の定義ですが、「お金を使うこと」としうてしまうと、どうやっても趣味で生きてゆくことができませんよね。

 そこで、「趣味」という定義を「好きでやっていること・やりたいこと」「ライフワークとしてやっていること・やりたいこと」とさせてください。つまり、好きなことをやることで生きていかれるのか、そういうストーリーをお話ししますね。

 ちょっと余談ですが、フリーの人間たちは、請け負った仕事に対して「今回はお仕事として、やらせてもらいますよ」ということがあります。これは、もらったギャラの範囲で当たり前の仕事をするということです。対して「今回は趣味でやりますよ」という場合は、採算を無視して、最高のものを作り上げます、という意味です。つまり、「趣味=最高の生き方」ということなんですよね。

 みなさんも、最高の生き方をした方がいいですよ!


趣味でお金がもらえるの?


 さて、大切なお金の話をしましょう。お金がもらえなければ、たとえ大好きだとしてもやり続けることはできません。お金が大切なんです。

 でも、趣味でお金をもらうのは、確かに大変です。趣味でお金をもらうなんて、できるのでしょうか? その疑問を解くためには、サラリーマンになるための努力を考えてみるのが一番です。

 そこで、みなさん、よく考えてください。いや、思い出してみてください。皆さんが社会人になるまでに、いったいどれだけの勉強をして、それにお金をかけてきたでしょうか?

 そう、皆さんは自動的に社会人になったわけではありません。学校へ通って勉強をして就職したわけです。学生のみなさんは、今、大金をつぎ込んでいるところですね! つまり、これまでの勉強というのは、サラリーマンになるための修行だったわけです。長い修行期間でしたね、お金もかかりましたね。大多数の人と同じ事をしてきたので、とりわけ苦労したとは思わない人もいるかもしれません。でも、冷静に考えると、すごい金額ですよ! この時間と金額、かなり重要です!


サラリーマンになるために修行7年、予算500万円


 さて、サラリーマンになるために費やした時間とお金を計算してみましょう。中学まではサラリーマンもフリーも同じなので、スタート地点は高校入学からにしましょう。高校3年間と大学4年間、7年間もサラリーマンになるための勉強をしてきました。その間の費用は、まぁ、500万円くらいじゃないですか? 僕なんか大馬鹿でしたから、塾や予備校にも通ってしまったので、倍くらいかかっているかもしれません。いえいえ、中学受験を下なんて人は、これも特別な投資ですね。すごいことですよ! そのくらい投資しないと、高い給料をもらえる立派なサラリーマン様にはなれないんです!

 さて、趣味で稼ぐには? そう、同じなんです。お金をもらおうと思うと、そのくらいの修行期間と費用がかかる。いや、かけないといけない! だって、そうじゃないとがんばってサラリーマンになった人たちに失礼じゃないですか!

 ははは、言い換えましょう。たとえばお茶の先生、お習字の先生にインタビューすると、自分で教えられるようになるまでに、だいたい、今述べた費用と時間(5〜7年、500万円)がかかったといいます。お三味線も同じだなぁ。ちょっと特殊ですが、そういう家柄に生まれた子どもは10歳くらいから修行が始まって、高校を卒業するくらいでやっとギャラがもらえるようになります。結局、大学へ行くのと変わらない時間と努力とお金が必要なんですね。

 それにしても不思議ですね。サラリーマンになるための努力(進学)と、趣味でお金をもらうための修業が、ほとんど同じ時間とお金だったんですよ。

 どういうことでしょうか? 要するに、他人にお金を払ってでも欲しくなる物やサービスって、そのくらいの難易度なんですね。換言すれば、自分じゃできないからお金を払って手に入れる、このレベルに達することが、社会で生きてゆく、お金を頂戴するということなんですね。

 ものすごく簡単に言い換えましょう。大学を出るのと同じだけの時間とお金を趣味に費やせば(ただしお金をもらうつもりで)、その趣味でお金をもらうことが出来るようになります(もちろん大卒でホームレスもいるので、例外はありますよ)。


え? そんなにお金も時間もない!


 さてはて、趣味でお客様からお金を頂戴するというスケールがわかってきました。でも、7年間の修行と500万円の予算を持っているか? これが問題です。

 実は、定年を間近に控えた大人の皆さんは、あ、その程度か、と思うかも知れません。前回、お茶の先生に元パイロットやエリートサラリーマンが多いという話をしました。そう、定年が見えてきた50代で修行を初めて、余裕有る懐から月謝を払う。すると定年までに師範になって、お金を稼げるようになるんです! そして年金以上が手に入っちゃう! これが一番簡単な「趣味でいきてゆく」という路線です。やったー!

 でも、若い人には難しいかなぁ。でも、この修行も予算も割賦、つまり分割でもいいんです。いきなり必要な訳じゃない。7年間で500万円というのは、年間で71万円くらい。月額で6万円。ああ、これでも高い! でも、自動車や家賃って、こんなものですよね。

 でも、高い、無理! そう、普通は無理です! でも、よく考えてください。お茶の教室に通って、月額6万円もかかりますか? そう、かからない。ほかの趣味はどうかなぁ? 和太鼓の奏者になるとします。月額6万円もかかりますか? 自動車レーサーになる、ああ、これはもっとかかりますね。

 そう、実は、何になりたいかで予算が全然違うのです。それから、同じ趣味でも誰に習うかで予算が違ってきます。ここが重要です。このあたりは、また、今度お話しします! でもねぇ、僕の趣味を列記してみましょうか? 今では本当のプロになってしまった分野もありますが、いわゆる専門学校などを出ずに、お金をもらえるようになったものです。まだ、お金が取れていない分野もありますよ。

1:写真(広告写真は今でもたくさん撮っています) 2:映像(劇場映画まで製作してしまった・テレビ番組もCMも) 3:釣り(本は出しましたね) 4:文章(これは著作が20近く!) 5:音楽(洋楽系)(これはCMや映画の中で自作の曲を出したりしてますが、演奏家じゃないし、ミュージシャンじゃない、修業が足りていません) 6:端唄・三味線(まだまだこれからです。はじめて2年弱、でもお座敷で唄いますよ、芸者さんもビックリ!) 7:ラジコン(長年お金にならなかったんですが、最近、映像分野と融合しつつあり、経験がお金に変わりつつあります)

 なんで、こんなに趣味があるのか? しかも並行してやっています。それにはコツがあるんですよ。しかも、これだけたくさんやってくると、趣味でお金をもらえるレベルになる短時間コースも分かってしまいました。この辺りは、おいおいね(こればっかり!)。


お金をもらうのは、2種類あるんだ!


 さて、趣味で生きてゆくということで、お金を頂戴しなければならないのですが、実は、そのお金のもらい方は大きく分けて2種類あります。これは重要な考え方ですよ!

 1つ目は、技でお金をもらう(本当は技と芸ってのがあるんですけどね)。つまり、絵描きなら絵を売る、陶芸家なら茶器を売る、音楽家なら入場料や演奏代をもらう、ということです。普通、趣味でお金をもらうとと言う場合、これを思い浮かべるでしょう。ところが、これは非常に難しい。というのは、売るにしても、聴かせるにしても、お店や人を集めることが必要になります。つまり、売る人に求めてもらわないとお客様まで届かない。ここがくせ者で、中間搾取というと言い過ぎですが、かなり大変。だから、皆さんが「趣味で生きてゆく」ことを断念しちゃう。

 さて、もう1つのお金のもらい方も紹介します。それは「教えること」です。実は、趣味で生きている人の多くが「教えること」を生業にしています。ここが重要です。教えることで稼げる、というのは、人間社会の重要な文化だと思います。江戸時代、食えない浪人が寺子屋をひらいて町民の子どもたちを指導していた、すばらしいことです。そして、この「教える」ということは、技や芸でお金をもらうよりも裾野が広くて、面白くて、凄く儲かって、ハッピーなんです! でも、ほとんどの人が、これを目指さない! もったいない!


教えるレベルが、趣味の第1歩・芸を売るのはその上


 さて、趣味で生きてゆくことで、第一に目指すべき事は、そう、教えるレベルになれるかどうか、ということです。教えられるくらい頑張れば、お金がもらえるということでもあります。

 そこで、教えるということのお金について、説明します。というか、趣味でお金を稼ぐ場合の、一例だと思ってお読みください。ここで分かって頂きたいのは、自分がやること(教えること)と収入のバランスです。

 まず、趣味の内容によりますが、端的に言えば月謝をいくらにするかがポイント。そう、月謝がもらえれば、これは定収入。サラリーマン様と同じ身分どころか、経営者だとも言えます。そして、これがけっこう儲かる(まで頑張れ!)。

 もう一度言います。まず、月謝をいくらにするか、それがポイント。そして、ひと月に何回教えるか、も重要です。回数というのは労働条件ですね。ではまず、教える回数は別にして月謝を考えましょう。たとえば月謝が5000円でしたら、100人の生徒がいれば月額50万円の収入です。あ、すごくないですか?

 え? 一度に100人を教えるのは大変? いえいえ、そういうことじゃない。「生徒さんが週に1回、月に4回通う」としたら、一回のお稽古に何人にするといいかなぁ、仮に1授業を10人にしたら、1日10人、5日で50人。つまり、毎日10人教えて、土日はお休み。これで月額25万円。1日に2回の講座にすれば、生徒数100人で月収50万円。

 え? 気付きました? 1日に2時間教えるとして、あれ、ほかの時間は? あれれ、準備に1時間かけても、1日3時間労働で月額50万円ですよ!

 ほら、学校法人がお金持だって、わかっちゃったでしょ! 

 そのくらい、「教える」ということは効率よくお金を稼げるのです。余った時間は、そう、修行します。それで技を磨いて、さらに短時間でお金を稼げるようにします(生徒数を増やす!)。

 実は、僕自身が20代の前半、塾で経営まで触らせてもらえていたので、どうやって生徒を集めて、どうやって教室を維持して、どうやって臨時収入を得て、などなどの実務を知っているから、このような話ができるのです。具体的に教室を開くとなると、場所代をどうするか、生徒募集をどうするか、いろいろなノウハウが必要です。そのあたりは、別途、説明することにします。


でも、教えたくない


 教えるのが嫌だと言う人がいるかもしれませんね。もしくは、教える自信が無いという人もいるかもしれません。この連載の第1回を読み直していただくと、僕が塾講師で磨いた技で、様々な仕事をやってきていることがわかります。そう、他人に何かを教える、伝えるということが、僕が生きて行くことそのものなんです。

 でも、教えるのが下手・苦手だし。

 そんなことを言ってはダメです。サラリーマンでも後輩を指導すますよね。同じことです。教えられないのは、修行が足りない、それだけのことです。

 一方、教師などの教えるプロって何か? それは自分が修行したことではないことを正しく伝える技能です。でも、皆さんは雑多なことを教える人になるわけじゃない。教師を目指す必要はない。好きなことを教えられればいいだけです。趣味を突き詰めて、そこで悩んだことやハードルを乗り越えたこと、それを使えることが「趣味を教えること」なんです。それで収入が得られるのです。


 ということで、次回は、もう少し具体的な話をします。

 でも、なんだか、お金の話をすると夢が薄れる気がするなぁ。黙っていてもお金がもらえるといいなぁ。ええ、できるんです、そんなこと! あはは。



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