象牙色のフランス旅行 第3話
Même je suis pauvre!
(俺だって貧乏だ)
翌日、食堂に集まりみんなで朝食。
さすが、フランス。朝食はフランスパンでした(固いっつーの)
この日は団体行動で各学部、決められたコースを回るだけ。ヨーロッパは比較的曇り空が多いというのに、この日は珍しく快晴。いい天気だ。
エッフェル塔を見物、近くの広場ではパーフォーマーの方がいて楽しそうな場所でした。そしてその広場にあるテキヤのオネーチャンは僕を見て爆笑です。
自分の髪の毛を掴んで「カラー?」と。
ええ、もう好きなように笑ってください、指さしてください。珍しいですよ、おかしいですよ。
夜は毎年必ずそこの学生の誰かが行く、というレストランへ。
何でも学校の名前がついた「定食」があるとのこと。同じクラスの仲間とそこへ行って、金がないので僕は安めの食事、連れはその定食を頼みました。
で、テーブルに届けられた料理はみそラーメンという名前がついた「みそそうめん」。とっても不味そう・・・見た目どおり不味かったそうです。しかもソイツ、その日の夜、腹がこわれてました。
翌日からは昨夜のメンバーで、丁度行きたい場所が重なってたんで、行ってみることに。
その場所はモンマルトルの丘。
結構有名で観光地にもなってます(実際は墓地なのかな?よぅわからん)。
大きい教会がありまして、その近くにですね、目的地である「ダリ美術館」があります。
ダリは昔から結構好きでして。
風景画を見て「キレイだなぁ」とかの感覚はなくて、「この絵面白い」とか「このオッサン、ユニークだなぁ」というところに惹かれるんすよね(ダリファンの方、こんな表現ですいません)。
結構長い上り坂になってまして(丘っていうぐらいだからな)、その坂には何人もの「似顔絵描き」がいるんですが、観光客に声をかけて、それぞれ「営業活動」しています。
僕らはそんな彼らには目もくれず坂を上り続け、一先ず坂の上の広場に到着。そこでふと立ち止まって景色を見ていたら、エラくしつこく営業を仕掛けてくる「似顔絵描きのオジサン」がいました。
しつこいのと、「ワタシ、ウタマロ」とか他に観光客から教えてもらったであろう適当な日本語が笑えてきたので、「じゃあ描いてよ」ということに(彼を仮に「ウタマロ」とします)。
立ち止まって描いてもらってると、ふと横目にもう一人、僕を描いてるオジサンが見えます。「勝手に描いてるのかな?まぁ、ほおっておけばいいか」なんて考えてそのままにしておきました。
15分ぐらいして、「ウタマロ」が僕を描きあげました。どれどれ・・・
似てない!!
もんのすごい美少年風?になってるんですよ、目もキラキラしてるし。
ちょっと待てあんたプロだろ?
ご機嫌取りで「カッコよく描けばいい」なんて思ってんじゃないぞ、とちょっとイラっとしてると、
「ウタマロ」は笑顔で「200フランクダサイ」
と。
確かこの時は200フラン=約20,000円だったかな?
おい、ちょっと待て!! それは高くないか?
前日にガイドさんから言われた「日本人はぼったくられるから気をつけて」という言葉が僕の頭の中をよぎります。というか、似顔絵頼んで、全然似てない似顔絵描かれて、何でお金払わなきゃいけない?
「全然似てないじゃん!! カッコよく描けば気前よく金払うと思ったら大間違いだぞ!!」
と僕は文句をつけます。
「ワタシタチビンボー、オカネ、オカネ」
と一歩も引かない「ウタマロ」。
そこへさっき横目に映ったオジサンが近づいてくる。
仲裁してくれるのかな?と思いきや、
「200フランクダサーイ」
・・・ブルータス、お前もか。
こらこら、アンタには似顔絵頼んでないだろが。
しかし、こっちのオジサン(こっちのオッサンを「ブルータス」とします)の絵はデフォルメされてて面白い、ちょっと欲しい。
僕は「アンタには頼んでないやろ!!勝手にアンタが描いただけやん」とその要求を撥ね付けます。
それを受けてブルータスは「オカネナイネ、ビンボービンボー」の一点張り。
くっ・・・「ブルータス」も手ごわい。
「ウタマロ」も「ブルータス」も「ハラエ・ビンボー」の一点張り。埒あかねぇ・・・誰だよこんな日本語教えたの。僕もイライラとしてきて声を荒げます。
まずウタマロへ向かって
「オメーのは全く似てねぇじゃねえか!! そんなもんに200フランも払えるか!!」
んで、次はブルータス
「テメーは勝手に描いただけだろが!! 俺は頼んでねーぞ、何で金払わなアカンのや!!」
(※ほんとにこの勢いでしゃべってます)
それでも一歩も引かないウタマロ&ブルータス。
ウタマロ&ブルータス「ワタシタチトテモビンボーネ」
・・・遂にプチンとキました。
「うるせー!! 俺だって貧乏だ!!
今回の旅行だって5万しかないんだよ!!
学費払うのにこっちも必死なんだ、
アルバイトしまくりでギリギリなんだよ!!」
と、必死です。(※日本語とカタコトの日本語で言い争っていますけどここはフランスです。)
フランスのパリ郊外「モンマルトルの丘」の中心で象牙色の頭の色をした日本人が「俺だって貧乏だ」と叫んでいます。まぁ、向こうからしたら知ったこっちゃないですよね。
言葉は通じてないようですが、感情は言葉の壁を越えたようです、値下げ交渉始まりました。
2枚で400フランに始まり、350・・・300・・・250・・・200・・・金額を提示されるたびに僕は「高い!!」とはねつけます(つか、何であくまで日本語?)
B4サイズぐらいの画用紙に鉛筆で描いただけですからね。更にぼったくり、というイメージがあるのでそんな簡単には首振れません。
しかも、パリでの食費やら土産やら買う金残さないといけないし、全部使ったら日本戻ってから無一文なんで、出来るだけ金残さないといけない。
遂に2枚で50フランまで下がりました。1枚2500円。このぐらいなら払ってもいいか、と思えたので「OK」と頷き、二人に50フラン渡しました。
金を払ってふと我に返ると背後や周りに人の気配がします。
振り返ると僕は絵描き仲間にびっちりと逃げ場なく囲まれてました・・・(怖)
モメてる仲間を助けるべく集まったようですね。
中には僕と同じくらいの身長の人間もいて、僕を睨みつけています。
とりあえずお金を払ったので、事なきを得ましたが、いやまさか仲間が集まってくるとは・・・。
で、それに対し僕の仲間はというと、囲まれてる僕を見て指さして腹抱えて笑ってたようです。ご丁寧に囲まれてる僕を写真にまで収めて。助けろよテメー!!(後日写真見せられた)
そして、金を受け取ったウタマロ&ブルータスは僕に「ケチ」と言い残し去っていきました(だから誰だよ、そんな言葉教えた輩は!!)。
いや、しかし今思うと恥ずかしいことしてましたね。若気の至りとはいえ、反省しております(けど、200フランは高すぎでしょ?)。
日本に帰ってきて、家族に似顔絵を見せたところ、母親は「ウタマロ」が描いたほうが似てると言ってましたけど、「ブルータス」が描いたほうが似てますね、実際。
著者の平田 睦さんに人生相談を申込む
著者の平田 睦さんにメッセージを送る
著者の方だけが読めます