象牙色のフランス旅行 第6話
Une robe rouge
(赤いワンピース)
さて、旅先のパリ郊外で迷子になるという「はぐれデカい男~象牙色編~」を見事成し遂げ、無事にホテルに辿りついた僕は、ベッドに横たわり少し寝ました。
自分で自分を褒めたかったですね、よくぞ無事帰還した、と。
いや、その前に迷子になるべくしてなった無計画と準備のなさを反省すべきではありますが。
さて、そのまま少し眠った僕は夕方過ぎに、同室の友人が帰ってきたため、今日起きたことを伝え、またもや爆笑され(モンマルトルで囲まれた僕を写真撮って更に爆笑してたのと同じ人物)、腹が減ったのでメシでもいこうか、という話になりました。
メシといっても金がない身分。ホテル近くのスーパーに行き、店内にあったマクドナルドで晩飯を軽く済ませ、CDショップがあったので軽く見ることに。
食料品がメインのスーパーでマックとCDショップという変わったつくりのお店でしたね。そこで、当時日本でも少し流行りかけた「ドリームテクノ」と呼ばれるジャンルのコンピを2枚ほどジャケ買いし、レジへ。
レジで会計の際に、モタついてしまい(というか金の単位すらまともに覚えてないからいくら払えばいいのかもよくわかってないだけ)、財布の中を探してたら、レジのおばちゃん「もう、いいよ。行って」(もちろんフランス語)
いやいや、お金まだ全部払ってないよ?いいの?アバウトだなぁ。日本じゃ有り得ないな。
メシも終わり、CDも買って、ホントはCLUBでも行きたかったんすけど、やっぱり慣れない海外の夜は怖いのでおとなしくホテルに戻ることに。
ホテルに戻って自分たちの部屋の前でカードキーを挿し、扉を開け、部屋に入りました。
僕は元々、田舎の人間なんで結構玄関開けっ放しにしたり、鍵かけなかったり、「戸締り」っていう習慣があまりなかったんですよね、当時。
その時も自分らの部屋の扉を勢いよく開けたはいいけど閉めてなくて、ほんの何秒間か開けっ放しになってました。
「コンコン」
扉をノックする音が聞こえて、後ろから
「ハァ~イ」
という女性の声が聞こえます。
その声に反応し振り返ってみると、なんとそこには
真っ赤なワンピースを着た黒人の女性
が立っていました。
パッツパツの赤いワンピですごいスタイル良くて更にミニ、そんな格好したSEXYな女性がドアのヘリに手をかけ、足を交差させ満面笑みでニヤニヤしながらこっちを見てます(伝わるかなぁ・・・)。
一発で
「尋常じゃねぇ」
と感じました。
誰がどうみても怪しいです。
僕らは「はぁ?」という感じで少しの間、思考停止。意味が解らない。
するとその女性は僕らの部屋に入ってこようとするので、ひとまず僕がそれを止めます。
「ちょっ、ちょっと待てって」
と両手で彼女の動きを制し、扉付近で留めます。
その後ろにはオバサンが一人いてこっちを見てます。仲間か?
すると赤い彼女はもう一度僕に向かって「ハァ~イ」と愛想を振りまく。意味がわからん。
とりあえず、「あんた誰?何でここにいるの?」と聞きます(ええ、もちろん日本語で)。通じない。
仕方がないので英語で「What’s your Name?」と聞いてみる。すると赤い彼女は、
「I ‘ am Naomi Campbell(ナオミ・キャンベル)!!」
と言い放つ。それを聞いた瞬間に僕も思わず
「嘘をつくな、嘘を!!」
とツッコミます。だって違うもん、顔が。
それにこんなとこいるわけないじゃん。そんな高いホテルでもないんだし。確かに背は高いしキレイはキレイだからモデルっぽいけど、ねーちゃん それは言いすぎだわ(笑)
僕らが旅行に行ったのが1996年の12月で久保田利伸とのデュエット「LA・LA・LA LOVE SONG」(1996年4月~6月の月9ドラマ「ロングバケーション」の主題歌)はその年の大ヒット曲でした。
ねーちゃん、いくらパッと見、似てるかもしれない、日本人に(その当時)一番有名かもしれない黒人女性だからといってなんぼなんでもわかるぞ、その嘘は!!(笑)
そのねーちゃんの嘘があまりに突拍子もないので笑えてしまい、「わかった、わかった」といいながら彼女に外へ出るように促します。
「ねーちゃん、ナオミ・キャンベルってのはよくわかったから帰ってくれ。」と。
それでも何度も彼女は執拗に「I ‘ am Naomi Campbell」と僕らにうったえかける。それこそこっちが「本当にナオミ・キャンベルじゃないのか?」と信じてあげたくなるようなくらい(信じないけどー)。
ねーちゃん、なかなか帰らない。
う~ん、困ったな。ラチあかねぇ。
本当にナオミ・キャンベルかもしれない・・・(←本当にナオミ・キャンベルだったとしても別にファンじゃねーし、特に用事ないし)。
どうすりゃ引き下がるかなぁ、それにもし本当だったら・・・という思いが一瞬頭をよぎる・・・。
そこで思いついたのが、
サイン描いてもらおう!!
もし、本物だったとしたらサインは貴重な記念になるし、偽者だったらいいネタになる。僕はカバンからメモ帳とボールペンを取り出し、彼女に渡す。「サイン、サイン」と言うと、彼女はサラサラ~ッとペンを走らせ、僕にメモを渡すと帰っていった。
何で帰ったのかわからないし、何しに来たのかもわからないけど、それは汚い字で(もしかしたら読み間違いしてるかもしれないけど)メモにはこう書いてあった。
「Naomi Cancell(ナオミ・キャンセル)」
・・・やっぱり、偽者じゃねーか!!
このときのメモ帳、捨てた記憶はないんで家中ひっくり返せばどっかに眠ってるとは思うんですけど・・・また見つかったらアップします。
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