18母さん優位【息子たちに 広升勲(デジタル版)】

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前編: 17二年振り 【息子たちに 広升勲(デジタル版)】
後編: 19養子になっておくんなさいテ【息子たちに 広升勲(デジタル版)】

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この話は、わたくしの父が1980年に自費出版で、自分と兄の二人に書いた本です。

五反田で起業し、36で書いた本を読んで育った、息子が奇しくも36歳に、

五反田にオフィスを構えるfreeeの本を書かせていただくという、偶然に五反田つながり 笑

そして、息子にもまた子供ができて、色々なものを伝えていければいいなと思っています。 息子 健生

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母さん優位

毎日電話で話し、三日に一度デイトした。その都度、父さんは、

「結婚しようよ、早く」とせまったが、母さんは、「好きだけどすぐには結婚できない」と言った。

その理由は二つあった。

一つは、母ちゃんにプロポーズをしている男性が病気で入院した。入院をしているとき「私は結婚します」というのが、その人に悪いということと、もう一つは母さんは民青活動から、共産党活動をしているのだが、父さんが革新的な思想を持っていないので、思想的な問題で亀裂が生じるのではないだろうかという不安があったようである。

「じゃあ、ぼくを好きなのか嫌いなのか」と迫ると、

「好きよ、本当に好きです……けど、すぐには……」とくり返した。

ある時は新宿の喫茶店で、ある時は日比谷の公園で、あるときはホンダシビックの車の中で話をした。

「きみを好きだという人が病気になっているからその人に悪いから結婚できないというけど、結婚は本当に心のそこから愛し合える者同志が結ぼれてこそ幸福なんだよ。真実の生き方をしていればその時はショックでも、いつかわかってもらえるよ」といい。

政治活動のことになると、さもものわかりよいという態度で、

「ぼくは、保守でも革新でも右でも左でもないよ。もしきみが本当に正しい思想だと信じているのならぼくを理解させるよう努力してゆけばよいではないか」といった。

こで一寸政治思想についてふれておこう。父さんが小学校たしか三年頃だと思う。学期の途中で、若い男の先生が突然退めた。風のうわさに「アカだからやめさせられたのだ」という話だった。オールバックの髪が長く青白いやせた、何かしら病的な感じの先生だった。

小学生の父さんに共産主義がどのような主義だかわかるはずもないのだが、それが父さんに対してはじめて出会った政治思想だと思う。その時おばあちゃんは、父さんに、

「ソ連では、子どもが産まれたらすぐ親と子が別れ別れに暮すんだって、共産党の国はコワイネ」といった“お母ちゃんと離れるのはコワイ”その時、そう思った。

先入感というものはおそろしいものだ。今でも共産党の名前をきくとそのことを想い出す。そして今冷静に判断すると、親子が離れて暮すということは保育園のような公共施設が充実しているということであったかもしれない。ともあれ当時はレッドパージといって共産主義の思想を持っている人は公職追放をされた時代である。共産主義は悪者のように思われていた。そんな環境の中で育った父さんは今でも共産主義を深く知った上で正しい判断をしなければと思うたて前と同時に、どこか本能的に拒否している面とがあると思う。

今まで二十歳から三十四歳まで何度か選挙投票に行った。自民党の人、社会、民社、無諸属の人その時によっていろいろな人の名を書いた。しかし共産党と公明党の人を書いたことがない。

母ちゃんは共産党オンリー。母ちゃんはその活動のため、夜おそくまで同志と活動をしていた。

結婚してそれがゆるされるだろうか、思想的に理解してくれるだろうか、不安だったようである。

父さんは母ちゃんを好きだった、しかし、その思想まですぐに好きになることはできなかった。だから「思想は個人の自由だからみとめるよ」といいながら、「とにかく早く結婚しようよ」とせまった。

むつかしい話をしていても別れるときキッスをすればすっかり楽しくなって、じゃまたね。ととても気持よく帰ることができた。



同じ思想でないなら

二月十五日。父さんからプロポーズされ、大きな声で笑っていたのだけど、あっていると楽しいし、父さんの強引な言葉におされ気味、一ヶ月もしたころ母ちゃんも結婚したいと思うようになったの。

父さんは、今すぐにも結婚しようというのだけど、母ちゃんはすぐにはできない、と言ったの。すると、「何故だ、何故だ、ぼくを好きじゃないのか?」と迫るの。

理由は、思想的なことなの。母ちゃんは革新、父さんは保守。この二人が結婚してうまく生活できるだろうか。思想の食い違いがもとで口論がたえないのではないだろうか。夫婦は同じ思想のもとに生き、子供を育てた方がよいのではないだろうか。

父さんにもっと革新の支持思想を持ってもらうまで結婚しない方がよいのではないだろうか。そのことで悩んだの。

みんなの読んで良かった!