ゆとり教育世代の英語教育改革〜最先端英語教育①世界一周合宿〜

次話: ゆとり教育世代の英語教育改革〜最先端英語教育②学校を作ろう!〜

Project-Based Learning(課題解決型学習:PBL)

全国から海外進学や留学を目指す小学生から高校生を集め、夏と冬にPBL型のキャンプを行ってきた。PBLは1960〜1970年代に北米で実施された医学教育が起源となっている。座学に留まらず、学生が主体となって課題を解決していく学習法の一つである。

大学1年の夏に初開催してから、これまで12回のキャンプを開催してきた。2泊3日のキャンプでは小学生から大学生がチームとなり、プロジェクトを達成することを到達目標として掲げている。

最先端英語学習法として2013年夏に行ったSUMMER CAMP2013の内容を紹介したい。

世界一周


この3日間では世界一周をイメージして世界各地で起きている情勢や問題、各国の文化や歴史、伝統を授業に取り入れ、最終的にはグループごとにプレゼンテーションを行うという内容である。

世界のどの国にも共通する「通貨(Currency)」を最終プレゼンテーションのお題として3日間のサマーキャンプが始まった。

授業①エジプト

この授業の目的は「生徒がピラミットについて英語で1分間説明できるようになる」である。ギザの3大ピラミットが作られた理由やそこに隠された秘密を紐解きながら対話形式に授業を進めていく。

まずはエジプトの基本的な情報を確認することから始める。

Capital(首都)、Population(人口)、Culture(文化)などなどを英語と日本語で確認する。


僕はキャンプ前に実際にエジプトに足を運び、現地の人のインタビュー、生活の様子を映像に収めてきた。エジプトのピラミッドの話を展開する前に、無視できない「貧困の問題」がある。

観光名所には必ずと言って良いほど、ストリートチルドレンが存在し、ギザのピラミット周辺には物乞いをする子供からお土産を売り歩く子供まで様々だ。親にお金を出してもらい当たり前に授業を受けている子供たちにとってもショッキングな映像である。

映像:食べ物を欲しがる子供

この子供は口に手を当て、食べ物が欲しいと僕の妻に言い寄っている。


ここで生徒に大切なことを英語と日本語でディスカッションを促す。

議題:観光客としてこの地を訪れたとき、このようなストリートチルドレンにはどう対応すべきか

時間を設け、グループごとに話合いを始める。この合宿の特徴は能力別クラス編成であること。小学生から高校生までが混合した能力別クラス編成で授業を進行している。そのため、学年ごとに様々な意見が飛び交う。

小学生は「可哀想だからたくさんお金をあげる」という意見に対し高校生が「一人にあげるともらえない子が生まれて格差は余計に広がってしまう」と世代ごとの意見が面白い結論へと導かれる。

グループごとに話し合い、出た意見をまとめ英語で発表する。1文でも2文でも良い。自分たちが思ったことに正解はない。大切なことは小さなことでも英語で自分の意見を述べることにある。


今度はギザのピラミットの前で物売りをする幼い少女と大人の映像である。

この大人は流暢な日本語で「3個千円!3個千円!安いよ!安いよ!」とピラミッドやスフィンクスの置き物を売り歩いている。そしてこの幼い少女も日本語で「いらない?いらない?」と日本人館顧客に尋ね歩いている。

映像:物売りの少女

このようなことは日本では起こり得ない。そしてこのような映像はテレビやネットで見るものとは違い親近感がある。僕が実体験したことを英語と日本語を織り交ぜて話をする。生徒はそれを真剣に聞く。


この貧困問題を導入に政治問題から宗教の問題まで話を広めていく。

授業の最終段階にはピラミッドの秘密に関する英語のドキュメンタリーフィルムを鑑賞する。それに対応したリーディング教材を使い、関連記事の多聴多読を繰り返す。最後にはアメリカの紙幣にピラミッドが書かれている理由などを取り上げ、通貨(Currency)を意識させる。

ここで大切なことは映像を使うということである。ただ単に長文読解を要求するのは無理矢理すぎる上に学習者は読みたいとは思わない。学習者がその内容について英語でどうしても読みたいと思えるまでインプットとディスカッションを繰り返すことが重要である。

映像や長文読解で出てきたセンテンスを箇条書きで提示し、ピラミッドの内容を再確認する。

授業を行った夜、100字でピラミッドについて英作文をするテストが行われ、IELTSで使用される4つの評価基準を活用し、50点満点で採点される。

授業②フィンランド

OECD(経済協力開発機構)が行うPISAの世界学力ランキングで常に上位にランクインする国がある。その国にはテストや宿題、偏差値のようなものがない。その国はフィンランド。フィンランドの教育事情を中心に授業を展開していく。

この授業の到達目標は「フィンランドと日本の教育を比較して改善点を提案する」というものである。

まずはエジプトと同様、フィンランド基本情報を英語と日本語で説明する。

フィンランドを紹介する映像をYoutubeで探し、フィンランド人が英語で話す映像を見せる。ヨーロッパの人がESL(English as a second language)として英語を学んでいることを意識させる。

そして教育の話を始める。彼らは合宿前に事前研修として中国の教育について学習してきた。

中国の教育に関するSTORYS.JPの記事

そのため、世界教育ランキングで中国上海が1位であることや日本の教育の現状は把握している。

合宿の機会を利用してより深く教育について考える機会を作る。まず学力をどのように測っているのか?PISAの学力テストを紹介する映像を授業内で2回見せる。

映像:PISAの紹介ビデオ

もちろん、最初から映像を理解できる生徒はいない。背景知識と動画内で使用される主要な語彙や表現を事前に指導し、映像を内容を事前に分析し、日本語と英語で内容を説明し、難しい語彙やフレーズ、理解しにくい構文や文法を予めリスト化し、最後にまとめて配布する。

事前準備を重ねた上で一斉に視聴し、理解を深める。

この後にフィンランドにはなぜテストや宿題がないのか?学校の先生は修士課程を修了している人を採用する理由とは?なぜ偏差値がなく、競争もないのか?これらの議題をグループごとに議論し、意見を出し合い、ミニプレゼンテーションを行う。


この授業をきっかけに一人の生徒がアクションを起こした。

中学3年の入塾当初の学校の英語の成績が2だった彼は一心不乱に英語を勉強し、僕の母校でもある山梨学院高校英語科に進学、英語検定準2級に合格、そして今はフィンランドに留学している。フィンランドのヴァーサという街の学校を活用して日本の文化を発信する活動をし、現地のメディアや新聞にも取り上げられている。

これはまさに僕の追い求めていた生徒の姿だ。英語を使って、世界に目を向けてアクションを起こす。日本の教育にはこの発想、外向きの思考が足りない。偏差値では測れない学力がある。このような授業を通して世界で光る原石を発掘される。世界で活躍できる人材が日本には埋もれている。

最終プレゼンテーション

このほかにもインド、中国、マレーシア、フィリピン、カナダなどなど世界各国を取り上げ、その国に関連したトピックを取り上げ4技能(読む、書く、聞く、話す)を統合し映像をフル活用した授業を行う。世界の国について学び、世界の面白さを知る。そして最後は通貨を使ったプレゼンテーション。


グループに分かれ、1つの国を選びその国の通貨を分析する。

ディバイスを活用しインターネットを使い情報を集め、通貨の特徴を見つけ出し、グループごとに比較分析を行う。プレゼンテーションの発表内容は①導入②歴史③紙幣④貨幣⑤発見⑥結論

各国の通貨には様々な秘密が隠されている。偽札防止のためどのような工夫がされ、発行枚数が少ない貨幣はどう扱われるのか?紙幣に書かれたイギリスのエリザベス女王はなぜ様々な国の紙幣に描かれているのか?国ごとの特徴が通貨には反映されています。

プレゼンテーションは全て英語で行われる。

評価観点は流暢さ(Fluency)正確さ(Accuracy)内容(Contents)の3つ基準で判断され、観客は生徒と講師で各セクション5点の15点満点でもっとも面白いプレゼンテーションを選び出す。

3日間徹夜で準備し、評価が高く内容が面白いグループは表彰される。魅力的なプレゼンテーションスライドを作ることはもちろん、英語での自己表現力が試される。

以下は3日の合宿をまとめた映像はこちら:EUGENIC SUMMER CAMP 2013映像

次は「学校を作ろう!プロジェクト」についてお話しします。

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