ゆとり教育世代の英語教育改革〜最先端英語教育②学校を作ろう!〜

前話: ゆとり教育世代の英語教育改革〜最先端英語教育①世界一周合宿〜

500年以上変わらない学校

日本に生まれ日本で育った多くの学生は伝統的な受け身の授業を受けている。

典型的なクラスルームは教師が黒板の前に立ち、生徒の集団は教師の話を黙って聞く。居眠りする生徒もいれば、後ろの席でおしゃべりを楽しんでいる生徒もいる。

これは14世紀のBolognaの有名な絵画である。500年以上前からこの学習形態は変わっていない。

知識の伝達は教師が行い、学習者の適性に関わらず同じ授業を受けさせ、同じテストで評価している。

現代の教育形態を以下の絵が上手く描写している。

先生は様々な特徴がある生徒に対して「平等な選考を行うため、皆さんは同じテストを受けてもらいます。それではそこの木に登ってください。」

おそらく金魚は落ちこぼれるであろうこのテストと同じようなことを今の教育は行っている。

偏差値教育はその典型的な例である。多種多様な生徒が集まる学校は、個人の才能を見極め、その才能を活かせる場でなければならない。そして、ただ単に学校教育を不満に思っていても何も変わらない。

そこで考えついたのが「学校を作ろう!プロジェクト」である。

小学生から大学生が協力して理想の学校を作ろう!と僕たちが大学3年の夏に動き出した。

学校を作ろう!プロジェクト


僕は17歳の時に株式会社EUGENIC「通称:密塾(ひそかじゅく)」を起業している。当時は50人以上の卒業生である大学生がいて、理念を共有できる優秀な講師を集めることができた。彼らは皆、信頼できる元塾生である。東京、神奈川、山梨の学生を100名集め「僕らも理想の学校を共に考え、小学生から高校生にも理想の学校を作らせよう!」と15人の講師が動き出した。

プロジェクト会議は合宿の3ヶ月前から始まった。

卒業生の一人がまずは講師が見本を作ろう!という声があがる。彼らは帰国子女でもなければ特別な英語教育を受けたわけでもない。自ら撮影を始め、編集作業を行い、Youtubeにアップし小学生から高校生の塾生に配信し、3日間で学校を作ろう!と呼びかけた。

講師(大学1年の卒業生)のプレゼンテーション

学校を作ろう!といっても小学生や中学生には問題意識を持って課題に取り組まないとフレッシュなアイディアは思い浮かばない。「教育」というトピックで3日間課題解決型の授業を行い、ディスカッション、ミニプレゼンテーションを繰り返して、ようやく「学校を作ろう!プロジェクト」に移行できる。

合宿3日間で行った内容はFlipped Classroom(反転学習)Dyslexia(ディスレクシア)など、小学生から高校生にとっては初めて習うことばかりである。これらの授業を行うだけではない。これらについて深く考える時間を設け、理想の学校を作るためにはどうしたら良いかを学年を超えて議論する。

授業で扱った内容の詳細は別の機会にお話しするとして、プロジェクトの流れをお伝えしたい。

「学校を作ろう!プロジェクト」では理想の学校を作るために欠かせない

●教育理念

●教育方針

●校則

●立地条件

●クラス編成

●選考基準

●理想の生徒像

を生徒が主体となり考えさせる。高校3年生がリーダーとなり、プロジェクトチームを作る。各チームに大学生講師が一人ずつ付き、プロジェクトの進行のファシリテーターとして機能した。

高校3年生のリーダーは事前にリサーチを行い、世界での教育事情を学習し、メンバーにシェアし共感を得たものを理念として採用していく。この時、メンバーの意見を尊重し、全員に発言権を持たせるのがリーダーの役割である。

ここでは高校3年生のリーダーが自己紹介を含め、意気込みを語っている。

プロジェクト会議は深夜まで続く。内容をまとめ、それを英語で発表する。口頭だけの発表だけではなく、パワーポイントを使って説得力のあるプレゼンテーションを行う必要がある。

小学生から大学生が話し合いを進める中で、学者や有権者には想定も新しいアイディアが生まれている。「学校を移動式にして色んな先生から学べるようにする」といった小学生や「学費を日割りにして学校に授業料を生徒自身が支払うことで、授業の貴重さを実感でき、親にも感謝するようになる」という大学生まで意見は多種多様。

ワードを使って資料を配布作成し、パワーポイントで魅力的なプレゼンテーションを作る。

大学生が中心となり、小学生から高校生にパワーポイントの作成法とプレゼンテーションの練習を促す。

プレゼンテーション当日は保護者が観客としてくることもあり、生徒たちは恥ずかしさ半分嬉しさ半分である。そして「理想の学校」に投票するのは保護者である。このような活動に保護者を巻き込むことで生徒の内発的動機を高めることができる。

会場入りするまで生徒はプレゼンテーションの練習を重ね、団結している様子であった。

当日は僕の恩師でもある青山学院大学教授に講演会を依頼し、「学校を作ろう!プロジェクト」の講評を頂いた。高校の時にこの先生の面白い英語の講演会に魅了され青山学院大学に進学を決めたのがきっかけだ。

講演終了後は大学教授と保護者、EUGENIC卒業生が見守る緊張感の中、プレゼンテーションが開始した。保護者に内容を理解して頂くため、司会進行は大学生講師が同時通訳型で行った。さらに生徒のプレゼンテーションにも全て大学生による同時通訳を入れた。

小学生から高校生がチームとなり、自己紹介から学校の教育理念や教育方針など上記で述べた内容を英語で発表していく。

同じユニフォームを着て共感する考えを絞りだし「僕たち私たちはこうゆう学校を作りたい!」という気持ちを観客に伝えていく。

彼女は僕が自宅で塾を始めた時から通う在塾歴の最も長い塾生の1人である。

小学校3年から通い始め、現在は中学2年生。このプレゼンテーションを行ったのは小学校6年生の時であった。彼女は上海とシンガポールに2年ほど滞在歴のある帰国子女である。

入塾当初は日本語が彼女にとって一番難しい言語だったかもしれない。

Communicationを「カムニケーシャン」と訳していたのが印象に残っている。

驚きなのは上海やシンガポールで受けた教育レベルの高さである。英語力や中国語力はもちろんではあるが、ICT教育も進んでいる。

小学校3年生にしてパワーポイントを巧みに操作し、エフェクトや画像を上手に使うことが出来た。

彼女は海外での経験を存分に組み入れた学習形態を提案していた。

彼はCLIL(内容言語統合型学習理論)というヨーロッパの英語教授法を取り上げ、英語で他教科を指導する理想の学校を提案した。イマージョン教育の例を挙げながら、CLILの利点とそれが生み出す日本人の学生像を彼は熱弁した。そんな彼は現在、ドイツのゲッティンゲン大学に在籍している。

そして現在ゲッティンゲン大学に通っている彼が率いるチームが見事優勝。チーム一丸となってメダルとトロフィーを獲得した。


学校の教育に不満がある生徒や未来をこう変えたい!というような夢を描く生徒は日本中にたくさんいる。このような活動を通して、学校を作る側の気持ちになり、学校での物事を客観的に捉えることができれば、将来、人とは違ったアクションを起こせるに違いない。この3日間の準備期間とプレゼンテーションで感じたことを活かし、彼らが世界で活躍することを心から願っている。

著者の嶋津 幸樹さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。